みなさんの愛犬は、雷や花火を怖がることはありませんか?我が家の先代ゴールデン・レトリーバーは気の毒なほど怖がって、毎年夏は心配の連続でした。
突然の雷鳴や近所の公園での花火の音などは事前に避けることが難しく、夏はお留守番をさせるのが心配という方もいるのではないでしょうか?
愛犬の心の平安を守り、迷子や交通事故などの事態を防ぐために、雷、花火対策について考えてみましょう。
雷、花火を怖がるわんちゃんたち
すべてのわんちゃんが雷や花火を怖がるわけではありませんし、成長や老化にともない、恐怖心が強まったり弱まったりすることもあります。子犬の頃は平気だったのに、成犬になってから恐怖症が発症するということはめずらしくありません。
飛び上がるほどの大きな音や振動でトラウマになったというわんちゃんもいれば、思い当たることはないのに気づいたら怖がるようになっていたというケースもあります。また、シニアになったら聴覚が衰えたためでしょうか、怖がらなくなったという話もよく聞きます。
我が家の先代ゴールデン・レトリーバーは、子犬の頃から雷や花火の音がするたびに対策をしていたつもりですが、4歳の夏に恐怖症になってしまいました。最初はちょっとソワソワする程度だったのが徐々に悪化し、激しいパンティング(ハアハアと浅く速い呼吸)、よだれ、震えなどが現れるように…。部屋にひとりでいた時に壁紙をビリビリにしてしまったこともあるし、なぜかお風呂場に逃げ込んでしまうこともありました。その怖がりようは見ていて本当にかわいそうで、10歳になって心臓病を患ったあとはさらに心配でたまりませんでした。
雷、花火恐怖症の何より恐ろしいところは、パニックを起こしたわんちゃんが迷子になったり交通事故に遭ったりすることです。毎年のようにそういった事故を耳にしますし、実際近所でも花火大会の日に脱走して車に轢かれ、最悪の結果になってしまったこともありました。
我を忘れたわんちゃんは、想像以上の力でリードをちぎったり扉やフェンスを破壊したりします。まさに火事場の馬鹿力ですね。雷、花火恐怖症のわんちゃんにとって、そのくらい恐ろしく命の危険を感じる思いをしているということです。
愛犬が雷、花火を怖がる前に対策を!
雷や花火に対して恐怖心を抱く前から対策を行うことは非常に重要です。我が家の先代愛犬のように対策をしていても恐怖症になってしまうことはありますが、それでも何もしていなければもっとひどくなっていたかもしれません。
理想は、恐怖心が芽生える生後2ヶ月頃までに雷や花火に慣らしてしまうことです。犬の生態に詳しく良心的なブリーダーであれば、飼い主さんに引き渡すまでに物音に対する社会化をしてくれます。そしておうちに迎えた後は、CDやテレビの録画などを子犬が気にしない程度の音量から頻繁に聞かせるようにします。雷と花火の音だけではなく、太鼓や猟銃の音など似たような音にも慣らしておくと良いでしょう(我が家の愛犬はいずれも怖がります)。
子犬の成長に合わせて、上記の対策だけではなく、服従訓練など基本トレーニングをすることも大切です。ある程度トレーニングの入ったわんちゃんは飼い主さんに集中する癖がついていますので、不安や恐怖を感じた時も比較的落ち着いていられます。
我が家の今の愛犬はブリーダー宅で大きな花火の音を聞いて育ったものの、生後半年くらいから少し怖がるようになってしまいました。しかし、音が聞こえている時にスワレやフセなどの復習をしたりクリッカートレーニングを行ったりすると、そちらに集中して恐怖心が和らぐようです。これを繰り返す内に、徐々に雷や花火をやり過ごせるようになってきました。
▲実際に夜中に雷が鳴った時のトレーニング風景。恐怖心を抑えて集中しているためか、やたらテンションが高い!
もうひとつ重要な対応として、飼い主さんが過剰に反応しないということが挙げられます。怖がる愛犬を見るとつい「怖いね」「大丈夫だよ」となだめてあげたくなるものですが、これは逆効果!怖がる行動に対して優しく声をかけたり撫でたりすると、「やっぱり怖いんだ!」とわんちゃんの恐怖心を肯定してしまいかねません。かといって叱るのもNGですし、音が聞こえた時に「また怖がるだろうな…」と不安になるのも避けたいところ。
わんちゃんは飼い主さんの感情の機微に敏感に反応しますので、雷や花火を特別扱いせず、極力平常心を保って接することが愛犬の安心につながります。
愛犬が雷、花火を怖がるようになってしまったら
子犬の頃から正しく対策をしていたとしても、雷、花火恐怖症を発症してしまうことはあり得ます。また、保護犬を迎えた場合など、すでに雷や花火への恐怖心が根付いていることもありますよね。愛犬に怖がる様子が見られたら、以下3つの点に注意して対応しましょう。
脱走対策を万全にする
何よりもまず、脱走させないことが重要です。雷や花火の時は極力家の外に出さないようにしましょう。
ケージの中に入っていても、パニックになったわんちゃんは思わぬ力を発揮してすり抜けたり破壊したりして脱走します。ドアや網戸を破ったり、リードを引きちぎったりしても敷地内からは出られない対策を考えておきましょう。もちろん、迷子札とマイクロチップの装着もお忘れなく!
トレーニングを継続する
怖がるようになる前の対策を、すでに恐怖心を持ってしまったわんちゃんにも継続しましょう。
実際の雷、花火の音とCDなどの音を区別し、偽物には反応しない場合もありますが、何もやらないよりは効果的です。また、振動や破裂音が苦手な場合が多いため、キャリーバッグを転がす、丸めた新聞紙で固い地面を叩く、布団干しの音を聞かせるといった手段も使えます。愛犬が怖いと感じない程度の距離やボリュームから始めるようにしてくださいね。同時にスワレやフセ、マテ、コイなどを練習し、物音がしていてもコマンドに従える精神状態をめざしましょう。
ストレス緩和アイテムを使用する
恐怖心を和らげるためのグッズを活用することもおすすめです。
わんちゃんの体に伸縮性のある布を巻き付ける「ボディラップ」は、テリントン・Tタッチのテクニックを応用したものです。わんちゃんの体に布を巻いて適度な圧力をかけると、恐怖心や興奮などを鎮め、安心感をもたらす作用があると考えられています。この考え方をもとに作られた「サンダーシャツ」という服なら、手軽に着せることができますよ。
また、ホメオパシーやフラワーレメディなども、雷、花火恐怖症に効果を発揮することがあります。これらは医学的根拠が伴っていないとされるため、病気の治療に使用するのは慎重になるべきですが、恐怖症に対しては試してみる価値があると思います。必ず専門家の指導を仰ぐようにしましょう。
愛犬が安心できる毎日を
愛犬にはいつも心穏やかに過ごしてほしいもの。専門家を頼るなら、獣医師よりも犬の行動学に精通したドッグトレーナーに相談することをおすすめします。恐怖症にならないために、また、少しでも和らげるために、私たち飼い主ができることを考えてみませんか?
長年犬と旅をしてきたノウハウが誰かのお役に立てればうれしく思います。
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