みなさんは首輪とハーネスどちら派ですか?
頭が抜ける心配があるからハーネス派、愛犬をコントロールしやすいから首輪派など、いろんな理由があると思います。
では、愛犬にとってはどちらの方がいいのでしょうか。
<目次>
愛犬は首輪とハーネスどっちがストレスになる?
イギリスのハートプリー大学で、首輪とハーネスどちらがわんちゃんにとってストレスになるのかを確かめる実験をしました。
普段から首輪で散歩をしているわんちゃん15頭、ハーネスで散歩をしているわんちゃん15頭、計30頭の散歩のときの様子を観察。その後、首輪とハーネスを交換して慣らしてもらい、様子に違いが見られるかを観察しました。
その結果、首輪もハーネスもストレスサインに差は見られなかったそう。わんちゃんにとっては首輪もハーネスもストレスの程度は変わらないということですね。
首輪で愛犬の首がしまることの弊害
愛犬のストレスに差がないのであれば、どちらをつけてもいいのでしょうか?
首輪をつけて愛犬がグイグイ引っ張ると、必然的に首がしまります。首には気管や食道、甲状腺、視神経などわんちゃんにとって敏感で大事な器官がたくさん集まっています。
ある論文では、首がしまることにより、眼圧に影響があることを報告しています。眼圧が高い状態が続くと、「緑内障」という病気にかかるリスクが高くなります。
また、首に負担がかかり、「気管虚脱」という呼吸がしにくくなる病気をまねく可能性を示唆する獣医師さんもいます。
グイグイ引っ張ったり他のわんちゃんを見ると飛びかかろうとする子は、首の負担を減らすためにハーネスに切り替えることをオススメします。
愛犬に引っ張り癖があるからハーネスを選ぶ?
「うちの子、引っ張るからハーネスにしているの」ということをよく聞きます。確かに、ハーネスにしていると首に負担はかかりませんし、わんちゃんの体に優しいように感じます。
しかし、問題は「引っ張り癖」があること。ずっと引っ張っている状態では、リラックスすることができませんし、疲労もたまります。
また、前に進む事ばかりに集中していると、飼い主さんの指示が見えにくく、コントロールすることが難しくなります。(ちゃんと合図で横や後ろに付けるなら犬が前にいてもOK)
引っ張り癖があるから負担が少ないハーネスにするのではなく、「引っ張らなくてもお散歩にいけるよ」とトレーニングしてあげることが大切です。
愛犬の引っ張り癖が与える影響
グイグイ引っ張りながら歩くと、正しいフォームで歩けません。正しいフォームで歩けないと、だんだん体のバランスが悪くなります。
例えば、わんちゃんが引っ張ると前に重心がかかってしまい、前足ばかりを使って後足をあまり使わなくなります。後足の筋肉が弱ってくると、腰が下がって腰や背中に負担がかかります。その結果、腰や背中を痛めてしまうことがあります。
高齢犬のケアサービスを行っているペットケアサービスレッツの代表三浦さんは、「ボディバランスが整っていることが大切、足腰の丈夫さが寝たきり予防につながる」と語っています。
また、引っ張り癖は子犬の関節の成長に悪影響を与えるという報告もあります。
腰や背中の痛みから問題行動へ
スウェーデンの犬の行動心理士ハルグレン氏は約400頭の犬を対象に問題行動と痛みの関係性を調査しました。
その結果、半数以上のわんちゃんに背中や腰に問題を抱えていることがわかりました。
そして背中に痛みがあるわんちゃんと痛みがないわんちゃんの問題行動を比べてみたところ、痛みがでているわんちゃんの方が問題行動がある割合が高くなりました。背中に痛みがなく問題行動があるわんちゃんはたったの3割です。
痛みによって攻撃性や怖がりが引き起こされている可能性があり、多くのわんちゃんが背中に問題を抱えているという結果は驚きですね。
なんとなくハーネスの方がわんちゃんの体にいいというイメージがありますが、どちらもストレス差はないことがわかりました。
どっちにしようか迷ったときは、首輪でもハーネスでも「引っ張らせないことが大事」ということも、一緒に思い出してくれると嬉しいです。
<参考文献>
・Effects of the Application of Neck Pressure by a Collar or Harness on Intraocular Pressure in Dogs
・Ultrasonographic evaluation of tracheal collapse in dogs
・The behavioral effects of walking on a collar and harness in domestic dogs (Canis familiaris)
・HBM製小型ロードセルを活用したハートプリー大学の研究が、散歩時のストレスから犬を解放する
・ドッグ・トレーナーに必要な「犬に信頼される」テクニック/著者: ヴィベケ・S・リーセ , 著者・写真: 藤田 りか子
・犬の科学 ほんとうの性格・行動・歴史を知る/スティーブン ブディアンスキー (著), Stephen Budiansky (原著), 渡植 貞一郎 (翻訳)
・イヌの動物行動学: 行動、進化、認知/アダム ミクロシ (著), ´Ad´am Mikl´osi (原著), 藪田 慎司 (翻訳), 森 貴久 (翻訳), 川島 美生 (翻訳), 中田 みどり (翻訳)
・犬の行動学/エーベルハルト トルムラー (著), 渡辺 格 (翻訳)
・愛犬との絆を深める散歩でマスターする犬のしつけ術/著者:田中雅織
・犬もよろこぶシニア犬生活 心や体の変化にあわせた老犬とのコミュニケーションがわかる/愛犬の友編集部 (編集)佐々木 彩子 (監修)
・7歳からのシニア犬とのしあわせな暮らし方/伊藤 みのり (監修), 内田 恵子 三浦 裕子
・イヌの老いじたく 「7歳」からの最適な飼い方を伝授/臼杵 新 (著)
<画像元>
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Unsplash
Pixabay
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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