小型犬は「散歩に行かなくてもいい」とか「運動量は少なくて大丈夫」などとよく聞きます。
「体が小さい=運動量が少なめ」と思われているのだと思いますが、散歩に行かなかったりあまり運動しないでいるとどうなるか、動物看護師が解説します。
<この記事を読んでわかること>
■体の大きさと運動量は関係ない
■飼い主さんが愛犬のニーズ(欲求)を満たせているか
■散歩=歩くだけではない
犬の体の大きさと運動量は比例しない
ひとくくりに小型犬といってもいろんな種類・体格・年齢の子がいますね。例えば、ダックスフンドやジャックラッセルテリアは元々狩猟犬なので体は小さくてもたくさんの運動、散歩が必要です。
またある本には、「6時間歩き続けるチワワ」もいれば「30分歩いただけで息があがるシェパード」もいると書いてありました。
小型犬だから、この犬種だから、「運動量は少なくていい」「散歩に行かなくていい」と思いこまないようにすることが大切。わんちゃんによって体力も違うので、愛犬にあったベストな散歩量・運動量を探してあげましょう!
愛犬の散歩に行かないとどうなる?
この図はイギリスの「Natural Animal Centre」が定めたわんちゃんの「欲求階層」です。
引用元:愛犬との絆を深める 散歩でマスターする犬のしつけ術
下にいくにつれ重要度は高くなり、上に行くにつれ重要度は低くなります。ですが、重要度が低いから軽視していいというわけではなく、すべての欲求が必要で満たされていることが重要です。
散歩は、この欲求の「➄運動 ⑥探索活動 ➆縄張活動」すべてを満たしてくれます。
わんちゃんは本来、一日の大半を「匂いを嗅ぐ」「獲物を追いかける」「縄張を点検する」などについやし、常に動き回っている生き物です。
それが刺激のない室内に一日中いたらどうなるか?
欲求が満たされず、その余ったエネルギーを何かで発散させようとします。つまり、問題行動とよばれる、吠える・かみつく・暴れるなどにつながる可能性があるのです。
わんちゃんの「問題行動」の大半が、
■飼い主さんとの「きずな」不足
■わんちゃんの欲求が解消されていない
ことに原因があると多くの専門家が指摘しています。(先天性の病気・病気の痛みで問題行動がでる場合もあります。)
★こちらの記事もおすすめです
>愛犬と遊ぶと「絆(きずな)」が深まるって知ってた?【動物看護師が解説】
愛犬の散歩時間はどう決める?
愛犬の要求を満たす散歩時間はどうやって決めればいいでしょうか?
答えは、「愛犬のしぐさ」の中にあります。
①散歩時間をいったん30分と設定。
②中間地点の15分で愛犬の疲れ具合を確認しましょう!
③愛犬が元気で、歩きたがっているならプラス10分、疲れているなら予定通り30分にしましょう!
お家に帰ってきたとき、軽く「ハッハッ」と呼吸しているくらいなら調度いい距離です。激しく「ハッハッハッ」と呼吸している場合は、疲れすぎなので少し距離を短くしましょう。
しっかりと歩いて筋肉をつけることは関節疾患予防やシニア期の寝たきり予防にもつながります。
愛犬がもっと散歩に行きたがるようなら、回数と距離を見直してみましょう。(犬の習性にあわせて朝方と夕方に行くのがオススメ!)また、時間と回数だけでなく「散歩の質」も高めることも重要です。
愛犬の満足度もアップ!「散歩=歩く」だけではない
わんちゃんは群れで生きる生き物です。だから仲間と一緒になにかをするのが大好き。散歩は飼い主さんとのコミュニケーションの時間にしましょう。
ただ歩くだけではなく、散歩の途中に遊びやランニングを取り入れると全身運動もすることができます。
あくまで一例ですが、時間や回数だけでなく内容も考えてあげると、愛犬にぴったりな運動量を確保できるだけでなく、満足度もアップします。
私たちが遊園地に行くと楽しいと感じるのは「次は何があるかな?」「何に乗ろうかな?」といろんなイベントが起こってワクワクするから!
わんちゃんも同じです。散歩の途中に遊びや運動などのイベントをはさむと「次は何があるのかな?」とわんちゃんはワクワクします。そして、楽しいことをいっぱいしてくれる、自分のニーズ(欲求)を満たしてくれる飼い主さんのことが大好きになります。
散歩はただの運動ではなく、愛犬とコミュニケーションを深めることができる大切な時間なんですね。
わんちゃんと人では時間の進み方が違います。人にとって「1日散歩に行っていない」でも、わんちゃんにとっては「3日も散歩に行っていない」になってしまいます。
しかし、「台風・体調が悪い日・病気」など、行ってあげたいけど難しい・・・ということもありますね。
散歩に行けなかった日は、欲求が発散できていないと思って、家の中で長めに遊んであげるなど調整してあげてくださいね!
<参考文献>
人と犬のより良き関係に関する生理学的研究 相互コミュニケーションにおけるオキシトシンの役割
愛犬との絆を深める散歩でマスターする犬のしつけ術/著者:田中雅織
ドッグ・トレーナーに必要な「犬に信頼される」テクニック/著者: ヴィベケ・S・リーセ / 著者・写真: 藤田 りか子
犬はあなたをこう見ている 最新の動物行動学でわかる犬の心理/ジョン ブラッドショー (著), 西田 美緒子 (翻訳)
飼い主と愛犬の「健康管理」に関する実態調査(2019年9月) ロイヤルカナン ジャポン合同会社
動物看護のための動物行動学/著者:森裕司 武内ゆかり/監修:日本小動物獣医師会 動物看護師委員会
<画像元>
無料写真素材 写真AC
かわいいフリー素材集イラストや
Pixabay
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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