家に帰ってくると愛犬がかけよって来て口をペロペロ。まさに至福の瞬間ですね。
「でもなんで口を舐めるんだろう。。」と不思議に思ったことありませんか?
そんな疑問を動物看護師が調べてみました!
3分程度で読めるのでぜひ読んでみてくださいね。
<この記事を読んでわかること>
■口をなめるわんちゃんの気持ちを知ることができるよ
■口をなめられたら人にもわんちゃんにも良くない理由がわかるよ
■口をなめられたとき対処や防止するための行動がわかるよ
<目次>
なんで愛犬が人の口をなめるの?4つの理由
理由1:服従のサイン
「犬 くち なめる」と検索すると、いろんなサイトで「オオカミの習性だよ。」「服従(まぁ落ち着いてよ)のサインだよ。」と書いてありました。
でもなかなか根拠のようなものが見つからなかったので、一生懸命しらべてみたところ、おもしろい論文を発見!
<オオカミと犬の行動を比較>
オオカミに近い犬種(ハスキーなど)では口をなめる服従行動がみられたが、愛玩動物として歴史が長い犬種(キャバリアキングスパニエルなど)は、口をなめる以外にもほとんどの服従行動がみられなかった。
オオカミに近い犬種の場合、あなたの口をペロペロなめるのは「まぁ、落ち着こうよ。」と言っているのかもしれませんね。
理由2:ごはんちょーだい!!のサイン
オオカミが子供のときにとる行動は、ほとんどのわんちゃんでもみられるそう。(逆に大人オオカミの行動はほとんどの犬にみられないそうです。)
子供のオオカミはお腹がすくとお母さんの口をなめてごはんをおねだりします。わんちゃんが口をなめるのは、「早くごはんちょーだい!」とおねだりしているのかも。
理由3:飼い主さんが喜んだから
個人的にはこれが理由として一番多いんじゃないかな~と思います。
わんちゃんは人と生活するうちに共感性(感情を共有することができる)を持つようになりました。だから犬の先祖と言われているオオカミにはこの共感性はみられないそう。
この共感性は愛犬と飼い主さんが一緒にいる時間が長ければ長いほど高くなります。飼い主さんの口をなめたときに嬉しいという感情が伝わって、わんちゃんがなめているのではないでしょうか。
理由4:おいしそうな匂いがした
ちょっと悲しいけれど・・・単純においしそうな匂いがしたからペロペロしようとした可能性もあります。
わんちゃんは鼻がいいので飼い主さんが気づかない食べ物のにおいに気づいて「おいしそうだね!」となめているのかもしれません。
愛犬に口をなめさせちゃダメ!4つの理由
わんちゃんが嬉しい気持ちを察して口をなめてくれるなら受け入れたいと思うかもしれません。実際に調べてみると、
〇かわいくてそのまま受け入れてるよ
〇愛情を感じるよ~
〇なめられるとうれしい!
という意見が多数・・・
気持ちは十分わかるけれど、下記に挙げる理由からオススメしていません。
①飼い主さんの体が心配
➁わんちゃんの体も心配
➂しつけの面からもよくない
④他の人がマネしたら大変
理由をひとつひとつわかりやすく説明しますね。
①飼い主さんの体が心配
わんちゃんと人が共通してかかる病気があるのをご存じでしょうか?
「動物由来感染症」というもので、厚生労働省からハンドブックが出ています。イラストがとってもかわいくて読みやすいので、詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
>動物由来感染症ハンドブック(全体版) [8,547KB] (2015年3月13日)
動物由来感染症は何種類かありますが、わんちゃんが口をなめることで人に移る病気もあります。最悪の場合、命を落とすことも。
おしりをなめたり、地面のにおいを嗅ぐわんちゃんの口は目に見えない菌でいっぱいです。
飼い主さんが病気になったらわんちゃんにとっても一大事。お互いのために節度をもって接するのもわんちゃんへの愛情です。
わんちゃんのためにも元気でいましょう。口をなめさせないで、わんちゃんを触ったら手を洗いましょうね!
➁わんちゃんの体も心配
人の口をなめるのはわんちゃんにとってもよくありません。
理由は2つ。
■人からわんちゃんに菌が移っちゃうから
■薬が効かない菌を交換するから
人からわんちゃんに菌が移っちゃうから
歯の病気でよく知られている歯周病。この歯周病の原因菌が人から犬、犬から人にうつる可能性があるという研究結果が報告されています。
また、新型コロナウイルスは人から犬に感染することがわかりました。
わんちゃんの健康のためにも過度な接触はひかえましょうね。
<オススメの記事>
>【動物看護師が解説】愛犬のために知っておきたい!軽く見てはいけない犬の歯周病
★日本臨床獣医学フォーラムより新型コロナウィルスの情報が出ています。わんちゃんが感染した場合の注意点もあるので一読ください。
>JBVPからのお知らせ香港の犬からの新型コロナウイルス検出に関する追加情報(2020/03/05更新)
薬が効かない菌を交換するから
わんちゃんと人がもっている菌は異なりますが、共通の菌もいます。
獣医業界で問題になっているのが薬に対して耐性を持ってしまった菌
この耐性を持った菌を人から犬、犬から人に移してしまうと、いざという時に薬が効かなくて困ったことになってしまいます。過度な接触はひかえましょうね。
➂しつけの面からもよくない
わんちゃんが「なめられる=嬉しいんだ」と覚えてしまうと、他の方にも同じことをする可能性があります。
わんちゃんは好意でなめようとしてピョンと飛びついたつもりでも、相手が驚いて転んだり、ケガをしてしまうことがあるので注意が必要です。
④他の飼い主さんが真似したら大変
個人的に一番心配な理由です。
ペロペロなめられているのを他の人が見て「こういう接し方をしていいんだ」と思ってしまうこと
普段わんちゃんに接している方なら多少耐性があるかもしれませんが、普段わんちゃんに触れない方、お子様やお年を召した方が真似したら大変です。
私たちの体にたくさん菌はいますが、人と犬ではもともともっている菌が異なります。
ある口腔医学の教授の報告によると
動物に一度なめられると、人体には馴染みのない細菌が数百万も付着しうる。そして、その菌は数時間経っても人の皮膚から検出されるという。人の皮膚細菌叢を研究する科学者たちは、皮膚の一部がイヌの細菌で覆われている人が何人かいたのに驚かされた。
引用元:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/c/102600060/?P=2
とあります。
今はテレビや動画などで間違った接し方を目にする機会も多いです。他の方が真似しないように正しい知識を持ちましょう。(こっそりするのもダメですよ。)
愛犬に口をなめられるのを防ぐ「正しい」行動
わんちゃんはあくまで好意でしているので、無理やり止めると「なんでや・・・」とショックを受けます。わんちゃんを傷つけない方法は「できない状況」をつくること。
わんちゃんが興奮して顔や口をなめようとしてきたら
■すぐに触らずに興奮が落ち着くのを待つ
■舐めようとしたらすかさず「おすわり」
そのあとたくさんほめてあげれば、わんちゃんもご機嫌です。
注意が必要なのは「しつこく」舐める場合
すごい勢いで飼い主さんの口をなめる、人に会うとひたすらなめるというわんちゃんがいますね。「やめて~」といってもなかなかやめてくれない。
しつこくなめる場合には「心の病気」になっている可能性があります。
強い不安や恐怖感を感じると、自分を落ち着けるために人をなめ続けます。しかし、「なめる→やめる→また不安になる」のループにおちいり、やめることができなくなってしまいます。
<こんな場合は注意してね!>
■止めてもしつこくなめる
■なめる時間が長い
■一日に何度も何度もなめる
■なめる頻度が増えてきた
■激しくなめるようになった
しつこくなめられたらどうする?
絶対にしないでほしいことが「怒ること」。
不安や恐怖感から「なめる」という行為をしているのであれば、怒ってしまうと状況が悪化する可能性があります。もし原因がわかるのであれば、それを取り除いてどんな反応になるか見守ってあげましょう。
たとえば・・・お留守番が長いことが原因だと思う場合は、このような対策が考えられます。(あくまで一例です)
■一匹でいる時間を少なくする
■ペットシッターさんを雇う
■留守番をさせるための訓練をする
■人がいるときと同じ環境にする(テレビやラジオをつけておく)
原因がわからない、どうすればいいかわからないという場合は専門家に一度相談しましょう。
■行動診療・動物行動学・動物心理学に詳しい獣医師さん
■動物行動学・動物心理学に詳しいドッグトレーナーさん
★行動診療科の獣医師さんいる病院
>ベックジャパン動物病院グループ
大事なことをおさらい
■愛犬が口をなめる理由は4つ
①服従のサイン
➁ごはんがほしい
➂飼い主さんが喜んでくれるから
④おいしそうなニオイがした
■愛犬に口をなめさせちゃダメな理由は4つ
①飼い主さんが病気になる可能性があるから
➁わんちゃんにもうつる病気があるから
➂しつけの面でもよくないから
④免疫が弱い人がまねしたら大変
■口をなめようとしたら違う指示を出してほめる
■しつこくなめる場合は注意して(動物病院に相談)
<参考文献>
これだけは知っておきたい人獣共通感染症 ヒトと動物がよりよい関係を築くために
神山 恒夫 (著)
動物看護のための動物行動学
著者/森裕司 武内ゆかり
監修/日本小動物獣医師会 動物看護師委員会
ペットとのキスはどれほど危険なのか?なめられると多数の細菌が付着、死に至ることも
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/c/102600060/?P=2
犬は人間に共感する能力を持っている ―飼い主の短時間の情動変化にも呼応することを麻布大グループが心拍解析で解明
https://scienceportal.jst.go.jp/clip/20190910_01.html
ヒトとイヌを絆ぐ 行動からみた2者の関係
https://www.jstage.jst.go.jp/article/janip/advpub/0/advpub_62.1.7/_pdf
人獣共通感染症としての犬歯周病に関する研究
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-23658256/23658256seika.pdf
パナソニック 歯周病は「感染」する
https://panasonic.jp/teeth/doctor/episode01.html
ワンちゃんに顔を舐めさせるのはイケナイこと?!【しつけ・行動・マナー】
http://www.petjpr.com/column/news-bin/Detail.cgi?rgst=00000431&CatgM=1
One Health の視点からみた動物および 環境由来耐性菌の現状
http://www.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/06606/066060715.pdf
香港の犬からの新型コロナウイルス 検出に関する追加情報【JBVPからのお知らせ】
http://www.jbvp.org/
「ペットの犬に低レベルの新型コロナウイルス感染が見られた」とする香港政府の発表について
http://nichiju.lin.gr.jp/covid-19/covid-19_file3.pdf
<画像元>
無料写真素材 写真AC
Pixabay
かわいいフリー素材集 いらすとや
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
最新記事 by 伊藤さん (全て見る)
- 「愛犬と食べたい秋・冬が旬の果物」与えてOKな果物とNGな果物知ってる? - 2024年11月12日
- 「長生きする犬の共通点は?」長生きさせるための飼育環境や年齢別の注意点を解説 - 2024年11月4日
- 「犬の歯が欠けやすいオヤツ・オモチャ5選」選ぶときのポイントや歯が欠けたときの対応も解説 - 2024年10月29日
- 「犬の睡眠が足りないとどうなる?」犬の睡眠不足がまねく病気や睡眠不足のサインを解説 - 2024年10月22日
- 「習慣化で病気をまねくおそれも」犬の皮膚や毛、耳によくないNG習慣 - 2024年10月18日