いつもは完食だったのに残すようになった、食べるのに時間がかかるようになった、全然食べてくれないなど、愛犬がご飯を食べてくれないという経験をしたことがある飼い主さんは案外多いと思います。
犬は言葉を話せませんし、飼い主さんとしては食欲は一種の健康のバロメーターですから、食べてくれないと「病気なのでは?」と心配になりますよね。
犬の食欲不振の原因と対策をまとめてみました。
食欲不振の原因
食べることはどんな動物でも生きるための大切な本能ですね。
犬もその本能を強く持っていますが、ときには食欲がなくなることもあります。
食欲不振には原因がありますので、原因別に対処することが食べてくれることにつながります。
高齢になった
犬もシニア以上の高齢になってくるとご飯の食べ方が変わってくることがあります。
あまり量を食べられなくなったり、食事に時間がかかったりするような様子が見られることは珍しくありません。
食欲不振になる原因としては、歯や内臓が弱ってきていることが考えられます。
老犬になると免疫も弱くなってくるので、歯肉炎を発症して固いものが食べられない、消化が悪くなり胸やけするのでたくさん食べられないなどです。
高齢犬になったら以下のような方法で、ご飯を高齢犬が食べやすいものにしてあげましょう。
・シニア用のフードにする(現在はたくさんのシニア用フードが販売されています)
・缶詰やパウチなどのウエットフードを多くする
・ドライフードをふやかして与える
私の愛犬2匹も、14歳なのでシニア用のドライフードを肉や魚のスープでふやかしてあげています。
歯肉炎など口腔内の病気
歯肉炎で痛くて食べられないことが、犬の食欲不振の原因となることもあります。
犬は虫歯にはなりにくいのですが歯肉炎にはなりやすい動物で、シニア以上の子は80%以上が歯肉炎にかかっているとされています。
歯肉炎を放置すると歯が抜ける、炎症がひどくなり皮膚がただれる、菌が血液や内臓に入り込み病気の原因になるなど食欲不振だけでなく、犬の生活に多大な悪影響を及ぼします。
できれば毎日歯磨きをしてあげたいところですが、2日~3日に1回程度でも効果が期待できますから、実施してあげたいですね。
フードを変えた
いつも食べているドッグフードを別なものに変えたことが原因でご飯に口を付けなくなることがあります。
現在では高品質のドッグフードがたくさん発売されていますし、飼い主さんとしては少しでもいいフードを与えたいと思って、違うフードに変えることもあるかもしれません。
しかし、犬によっては自分が知らない食べ物に警戒心を抱く子もいますので、初めて食べるドッグフードを食べないこともあります。
高タンパクで添加物が少ないなどの品質のいいフードの切り替えるのは犬のためにとてもいいことですが、フードを切り替える際はいきなり全部変えるのではなく、今まで食べていたフードに新しいフードを混ぜる形で少しずつ変えていくようにするといいですね。
フードに飽きた
いつも、いつも同じフードだと犬が飽きてしまうことがあります。
犬の味覚は人間ほどは鋭くありませんが、味はちゃんと感じますしおいしいものが好きなので、ずっと同じものばかり食べていると飽きて食べなくなってしまう子がいます。
私は療養食を食べなくてはならなくなったときに、いつものフード以外は食べないと困るので、ときどき基本のフードとは別なフードを足してみたりします。
また、トッピングするなど基本のフードに何かをプラスしてあげることもあります。
フードを置きっぱなしにしている
ドッグフードを置きっぱなしにしていると、犬のご飯への食いつきが悪くなってしまいます。
いつでもフードが置いてある状態なのできちんとご飯を食べなくなってしまうのです。
また置きっぱなしのフードは酸化しますから味も落ちてしまい、おいしくありません。
1日に2回~4回、ご飯の時間に飼い主さんからもらったフードを食べさせるようにしましょう。
フードの置きっぱなしは肥満にもつながりますから、しないようにしましょう。
おやつが多すぎる
一般的におやつは嗜好性が高く、主食となるドッグフードよりも味付けが濃いことが多いです。
そのため、おやつを好む子が多いですが、おやつをたくさん食べるとドッグフードに魅力を感じなくなってしまい、食べなくなってしまうことがあります。
よくあるのが、
ご飯を食べない → おやつなら食べるからと、おやつをあげる → ご飯を食べないとおやつをもらえると学習
というパターンです。
また、おやつをたくさん食べることで満腹になってしまい、ドッグフードを食べなくなることがあります。
総合栄養のドッグフードはその名のとおり、犬に必要な栄養素がすべて入っているものですが、おやつはそうではありません。
おやつが多すぎることは健康には良くないことなので、ドッグフードを食べさせるようにすることが大切ですね。
運動不足
犬は毎日運動することが必要です。
犬の運動不足は、破壊行動や攻撃的になるなどとても害が大きいのですが、それ以外にも食欲不振も招きます。
適度な運動をして、ストレスを発散するとともにちゃんとお腹を減らしてご飯を食べることが食欲増進につながります。
便秘
便秘がひどくなると、消化器官全体が不調になり食欲が低下します。
これは人間でも同じですね。
愛犬の便の回数、状態などのチェックしてあげましょう。
犬は通常、1日2回程度、ウンチをします。
子犬ですともっと回数は多いです。
ウンチの回数が少ない、ウンチがころころで固く量も少ないという様子が見られれば便秘の疑いがあります。
犬の腸内環境を整えるサプリも発売されていますから、気になるような点があれば使用してみるのもいいでしょう。
また、繊維が多く含まれた療養食もあるので獣医に相談してみましょう。
便秘は水分摂取が足りていないことも原因になることがあるので、フードをふやかしてあげるなど水分を摂れるようにするといいですね。
夏バテ
犬も夏バテします。犬は元々、暑さには強くない動物です。
季節の変わり目の急激な温度変化が体調不良を招くこともありますし、夏バテになることもあります。
急に暑くなった、連日暑さが続くなどして、食欲がなくなったときは夏バテかもしれません。
子犬や老犬は特に気を付けてあげる必要がありますし、食欲不振が続くときは早目に獣医を受診しましょう。
たかが夏バテと侮ってはいけませんね。
ストレス
犬の食欲不振は何かしらのストレスのせいかもしれません。
生活環境が変わった、ケージで過ごす拘束時間が長い、運動が足りない、飼い主さんとのスキンシップが足りない、規則正しい生活が送れないなどがストレスになっている可能性もあります。
犬は規則正しい生活が好きです。
犬の規則正しい生活とは、散歩に行く、ご飯をもらう、昼寝する、おやつをもらうなどの生活のサイクルが毎日ちゃんと繰り返されることです。
それが崩されることはストレスになります。
また、繊細なワンちゃんだと飼い主さんが旅行や出張で留守だとご飯を食べなくなったりもします。
犬は人間と深い関係を築く、感受性の強い心を持った動物なのでストレスは食欲に影響するのです。
元気なのに食欲がないのは?
「元気なのに食欲がない」ときに考えられるのは、先にあげた「フードを変えた」、「フードに飽きた」という原因が考えられます。
また、夏バテまでいかなくてもすごく暑い日は犬も食欲がなくなることがあります。
いつもお世話をしてくれる飼い主さんが不在であるなども原因となることがあるでしょう。
元気なのに食欲がない場合は、病気ではなく一時的な原因である可能性が高いですので、様子を見ながら食欲を増進させる工夫をしてみてください。
ただし1食くらい食べなくてもすぐに命に危険があるわけではありませんが、特に夏場などは水分を摂らせるようにしなくてはいけません。
犬用の牛乳や、ヤギミルク、魚やお肉のスープなど犬が喜んで飲んでくれるものをすすめて、水分が不足しないようにしてあげましょう。
食欲がなく寝てばかりのときは?
食欲がないばかりでなく、寝てばかりいるときは体調不良が疑われます。
運動が十分であれば、犬はおうちでは休んでいることが多いですし、老犬になれば眠っている時間が長くなります。
それは異常なことではありませんが、散歩にも行きたがらない、好きな遊びに誘ってものってこないなどいつもと違う様子が見られるときは、具合が悪い可能性が高いです。
犬は人間の言葉が話せませんし、具合が悪いときは黙って耐えようとします。
食欲不振のほかに嘔吐や下痢などの症状がないかもよく観察して、早目に獣医を受診しましょう。
病気が疑われる食欲不振
食欲不振の原因が病気であった場合は、早急に治療を受ける必要があります。
病気でご飯が食べられないとなると、体力を消耗し病気に打ち勝てなくなってしまいます。
下痢や嘔吐、発熱、元気の衰退などの症状がみられるときは要注意です。
<食欲不振で疑われる病気>
・歯周病・・・口臭がひどい、歯ぐきが赤くなって腫れているなどの症状がみられる。
・口腔内腫瘍・・・口の中に腫瘍ができている。
・子宮蓄膿症・・・避妊手術をしていない雌犬が発症する可能性がある。
・がん
・胃腸炎
・ケンネルコフ(気管支炎)
このほかにも食欲不振を招く病気はたくさんありますので、油断せずに愛犬の様子を観察するとともに、気になることがあるときはちゅうちょせずに獣医を受診しましょう。
病院を受診する場合、獣医師に伝えること
獣医を受診する際は、「食欲がない」ということだけでなくその前後の様子や気になることも伝えましょう。
・最後に食事をしたのはいつか
・何を食べたか
・ご飯を食べなくなったことで思い当たる理由
・食欲がなくなる前に何をしていたか
・下痢や嘔吐などの症状(嘔吐したものを持っていく。)
・いつも食べるものではないものを食べてしまったときは(拾い食いなど)、その内容と量(できれば実物を持っていく。)
犬は自分で説明できませんから、飼い主が思い当たることをすべて獣医師に話すようにしましょう。
思いがけない原因が隠れているかもしれません。
何日なら食べなくても大丈夫?
食べなくても大丈夫な期間は、犬の成長度合いによって異なります。
3カ月以内の子犬の場合は1食でも食べないのは危険です。
子犬は低血糖になりやすく、脱水症状も起こしてしまいます。
子犬は食事を1日に数回を摂らなくてはなりません。
1食でも食べなかったら病院へ行きましょう。
成犬であれば数日食べなくてもすぐに死に至るということはありませんが、やはり1日以上食べないということは犬の体を維持するうえで良いことではありませんね。
健康状態に問題がなく、「ドッグフードに飽きた。」などの理由であれば1日食べなければお腹がすきますから次の日には食べる子がほとんどです。
食べない理由は様々ですから病気であるとは限りませんが、2日目になっても食べなければ動物病院を受診したほうがいいでしょう。
病気であれば早期発見が大切ですし、病気でないことが分かれば安心できますから、あとは食欲を出させる工夫をしてみればいいですね。
食欲を出させるためには?
愛犬が食べてくれないのはとても心配になりますし、やはり食べることで体を維持できるので、ご飯を食べてくれることは大切ですね。
愛犬がなかなかドッグフードを食べてくれないということは珍しいことではありません。
ワンちゃんに食欲を出させるための工夫をご紹介します。
匂いをたたせる
犬の嗅覚はとても鋭く、おいしそうな匂いには敏感に反応しますね。
反対に鼻が詰まっているなど匂いをかぐことができないと、目の前にあるご飯も食べられないこともあります。
「ご飯がいいにおい」であると犬の食欲が出ます。
ドライフードはお湯などでふやかしてあげるとにおいが立ちます。
犬が好きな肉や魚のスープでふやかすと、なお食欲は増すでしょう。
缶詰やパウチなどは電子レンジで温かくするだけで、かなり強いにおいがするようになります。
トッピングをする
愛犬がドッグフードに飽きている場合は、トッピングをすることで食べてくれることもあります。
ドッグフードはそれだけで必要な栄養が満たされているので、絶対トッピングが必要なわけではありませんが、犬もおいしいものが好きなので、犬が好むものを少しトッピングしてあげると喜んでくれます。
犬に与えてもいい肉や魚、野菜類、果物、チーズ、ヨーグルトなどであればトッピングとして使うことができます。
果物や野菜の中には犬に中毒を起こさせるものがあるので、与える際は犬が食べてもいいものかどうかを確認してから与えてください。
ドッグフードを変えてみる
ドッグフードは気を付けないと沢山穀類が入っていたり、添加物が入っていたりします。
最近は肉類の含有量が材料のなかで一番多いものや、グレインフリー(穀物不使用)のフードも多く見かけるようになりました。
犬は雑食もしますが基本的には肉食ですから、肉が多く含まれているフードを好む傾向があります。
犬の食が進まないときは、グレインフリーのフードにしてみるなど、フードを変えてみてもいいですね。
消化吸収を促進するサプリメント
ペット用のサプリメントもたくさん販売されていて、消化吸収を促進するサプリメントもあります。
栄養素を効率的に吸収できたり、酵素を補って消化を助けるものなどがありますので、胃腸が弱い子や老犬などは特に効果が期待できますね。
腸内環境を整える
便秘や軟便、下痢は食欲不振につながりますので腸内環境を整えてあげるような食生活にしましょう。
お腹の弱い子や老犬は腸内環境の状態が崩れやすいので、愛犬のウンチの様子はよく観察してあげたいですね。
犬の良いウンチは人間の良いウンチと同じで、バナナ上のウンチが良い状態のウンチです。
お腹の弱い子用の療養食やサプリメントが販売されていますし、食物繊維を多くする、ビフィズス菌などを増やすようにする、水分摂取に心がける、などおうちで工夫することもできます。
・プレーンヨーグルトをあげる。(プレーンヨーグルト)
・繊維質の多いサツマイモやキャベツなどといった野菜をトッピングしていあげる。(野菜だけだと食べない子でも肉や魚のスープと一緒に煮ると食べてくれる子が多いで。)
・ウエットフードを増やす。
・ドライフードをふやかしてあげる。
手作り食を取り入れる
ドッグフードは好きではなく、人間の食べ物が好きなワンちゃんは意外と多いです。
人間の食べ物は味付けが濃いので、その濃い味が気にいるときもあるでしょうが、私の経験ではやはりドッグフードという加工されたものより、肉そのもの、魚そのもののほうが好きです。
お肉を食べるときのテンションはドッグフードを食べるときとは違いますね。
たとえグレインフリーのフードをあげていても、肉のほうがいいのです。
手作りのご飯を犬に与える際には、栄養が十分であるかどうかなど難しい面もありますし、いい顔をしない獣医師も多いです。
しかし、飼い主さんの手作りご飯で食欲を回復したという例は少なくありません。
手作りご飯オンリーだと手間もかかるし栄養管理も大変なので、ドッグフードと組み合わせて、週に何度かを手作りご飯にすると犬が飽きずにおいしくご飯を食べることができます。
犬もご飯を食べないときがある
人間も暑さのせいや、嫌なことがあったストレスや体調が悪いなどの理由でご飯を食べる気になれないときがありますね。犬も同じです。
病気が原因ではない場合、毎日、ちゃんとご飯を食べられるという安心感がある子は食欲不振を発症しやすい傾向があるように思います。
私は保護活動をしているので、これまで何度も遺棄された子たちを保護してきました。
捨てるような飼い主なので犬は大切に扱われたことがなく、ごはんもあげたりあげなかったりする、不規則に与える、量が十分ではないなど適切な給餌をされてこなかったことが多いです。
すると犬は食にどん欲になり、この機会を逃したら次にいつ食べられるか分からないので、目の前にあるもの全てを少しでも早く胃に流し込もうとします。
ですから保護当初の、食事はものすごい勢いでガツガツと完食します。
私の愛犬のうち2匹は元保護犬です。
虐待のために人間不信で譲渡が難しく、結局うちの子になったのですが、この子たちも最初は超早食いで食にどん欲でした。
しかし現在は、ちゃんと毎日ご飯を食べられることが理解できているので、ゆっくり食べられるようになりましたし、ときには残したりすることもあります。
次もちゃんとご飯を食べられるという安心感があると、ちょっと好みに合わないなどの理由でもご飯を残すようになるようです。
元保護犬の飼い主としては、安心してくれしているのだなとも思いますが、やはりご飯は食べてほしいので、残さない工夫をしています。
我が家の工夫
私の愛犬も実は4匹中3匹が、あまりドッグフードが好きではありません。
ドライフードだけだと確実に食べませんし、ウエットフードもあまり好きではないことが多いです。
デビフの缶詰は好きなのですが、それ以外はイマイチの食いつきです。
老犬でもあり水分も摂らせたいため、ドライフードには肉や魚と野菜のスープをかけて、つゆだくご飯にしてあげます。
肉、魚、野菜のバリエーションを変えて作るので、味も変わりますし愛犬たちは毎日喜んで完食してくれます。
ウンチも快便です。
スープと言っても一口大にして煮るだけで味付けもしませんから、すごく簡単なので毎日続けられます。
どうしてもスープを作る余裕がないときはヤギミルクをかけてあげています。
まとめ
食欲は犬の元気のバロメーターですからご飯を食べてくれないと心配ですが、犬も安心して暮らしていると「おいしくない」という理由でご飯を残したりします。
特に夏は犬も食欲が減退する季節です。
病気でないときは、1食くらい抜いてもお腹がすけばまた食べるようになるのですが、病気が原因であるときは、放置することは危険なので獣医を受診しましょう。
特に子犬や老犬は気を付けてあげたいですね。
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