「トイレ以外の場所に尿が垂れている」「ポタポタ尿を垂らしながら歩く」といった行動を愛犬がとることはありませんか?
「トイレトレーニングをしたのになぜ?」と思うかもしれませんが、しつけの問題ではなく病気や年齢などが原因で尿失禁をしているのかもしれません。
今回は「愛犬が尿失禁をする原因や対策」をご紹介いたします。
「尿失禁した犬に飼い主がやってはいけない行動」も合わせて紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
<目次>
「床に尿が数滴垂れている」「ベッドが濡れている」こんな症状は尿失禁かも?!

▼愛犬にこんな症状が現れたら「尿失禁」かもしれません
・床に数滴尿が垂れていることがある
・ベッドを触るとよく濡れている
・歩いているときに尿がポタポタ垂れている
・犬が立ち上がった後に床が濡れている
・陰部をよく舐める、腫れている、汚れている
「尿失禁(おもらし)」は犬が意図せずに尿を漏らしてしまう状態のことをいいます。
尿失禁と聞くと所構わずジャーっと排尿をするイメージがあるかもしれませんが「床に数滴尿が垂れている」「犬が立ち上がった後に床が濡れている」といった行動も尿失禁をしている可能性があります。
また、陰部の汚れや腫れ、犬が何度も陰部を舐めるといった仕草で異変に気づくこともあります。
トイレ以外の場所で尿の形跡を見かけるようになったら、一度尿失禁を疑いましょう。
愛犬が急に尿失禁をするようになった原因は?

では、愛犬が尿失禁をするようになった原因は何なのでしょうか。
考えられる原因は5つあります。
▼愛犬が尿失禁をするようになった原因5つ
愛犬が尿失禁をする原因①「病気にかかっている」
愛犬が尿失禁をする原因②「先天的な異常がある」
愛犬が尿失禁をする原因③「年齢によるもの」
愛犬が尿失禁をする原因④「ストレスや不安など精神的なもの」
愛犬が尿失禁をする原因⑤「ホルモンバランスの崩れ」
愛犬が尿失禁をする原因①「病気にかかっている」
▼尿失禁を引き起こす病気(一例)
・椎間板ヘルニア
・脊髄腫瘍
・クッシング症候群
・腎盂腎炎
・膀胱炎
・糖尿病
尿失禁は色々な病気の症状として現れます。
椎間板ヘルニアは犬によく見られる神経疾患ですが、ヘルニアを起こした場所によっては尿失禁が起こります(逆に尿が出なくなる場合もあります)。
また、膀胱炎にかかると炎症で排尿のコントロールが難しくなるため尿失禁を起こしますし、糖尿病にかかると尿量が増えるので尿失禁を起こしやすくなります。
完治が難しい病気にかかっている可能性もあるので、愛犬が頻繁に尿失禁を繰り返すという場合は、早めに動物病院で検査を受けましょう。
愛犬が尿失禁をする原因②「先天的な異常がある」
比較的年齢が若い犬が尿失禁を繰り返す場合は「異所性尿管」という先天的な病気にかかっているかもしれません。
異所性尿管はメス犬によく見られる先天性の異常で、腎臓から膀胱に繋がるべき尿管が別の所にくっついてしまう病気です。
常に少量ずつ尿がポタポタ垂れる(逆に排尿のポーズをするのに尿が出ない場合もあります)常に陰部が汚れているという場合は、異所性尿管の疑いがあるので早めに動物病院で診察を受けましょう。
愛犬が尿失禁をする原因③「年齢によるもの」
愛犬がまだ子犬の場合、体の機能が未完成のため尿失禁をしているのかもしれません。
尿を膀胱に溜めておくには膀胱周りの筋肉の働きが必要なのですが、子犬はこのコントロールが未熟なため、比較的お漏らしをしやすいです。
また愛犬が高齢の場合も、膀胱周りの筋肉の働きが悪くなるため、尿失禁をしやすくなります。
愛犬が尿失禁をする原因④「ストレスや不安など精神的なもの」
「初めての場所に泊まった」「留守番時間が長かった」「引っ越しをして生活環境が変わった」といったストレスを感じたときにも尿失禁をしてしまうことがあります。
また雷鳴や稲妻、暴風に対して強い恐怖を感じる犬は多く、遭遇すると恐怖から尿失禁してしまう場合があります。
愛犬が尿失禁をする原因⑤「ホルモンバランスの崩れ」
避妊や去勢手術をした経験があるのであれば、ホルモンバランスの崩れで尿失禁をしている可能性があります。
避妊・去勢手術をすると女性ホルモンや男性ホルモンの分泌が少なくなり、排尿を調整する尿道括約筋という筋肉の働きが弱くなります。
そのため、立ち上がったときや眠っているときなど、ちょっとした拍子に尿失禁を起こしやすくなります。
避妊、去勢出術をした直後は症状が現れず、術後数年立ってから症状が現れることもあります。
愛犬が尿失禁を始めたらどうする?ポタポタ垂れ対策は?

では、愛犬が尿失禁をし始めたら飼い主さんはどう対応すればよいのでしょうか。
考えられる対策を一覧にまとめました。
▼愛犬が尿失禁を始めたときの対策
・動物病院に行く
・愛犬のストレスを減らす
・陰部周りの毛を短くカットする
・トイレシートを増やす、敷き詰める
・カーペットなどの床材を洗いやすい物に変える
・オムツを着用する
・動物病院に行く
最初にご紹介したように尿失禁を引き起こす原因は様々で、病気が原因の場合もあります。
様子を見ているうちに重症化する恐れもあるので、早めに動物病院で検査を受けましょう。
・愛犬のストレスを減らす
「引っ越し」「留守番時間が増えた」など愛犬のライフスタイルの変化がストレスとなり、尿失禁を引き起こしている可能性があります。
ストレスの原因がわかっている場合はできる限り取り除き「愛犬と接する時間を増やす」「留守番のときは散歩と遊びをしっかり済ませる」などストレス緩和に努めましょう。
・陰部周りの毛を短くカットする
尿失禁を繰り返すと陰部周りの毛が汚れがちです。
汚れをそのままにしておくと、かぶれやかゆみを引き起こす可能性があるので、陰部周りの毛は短くカットして清潔にしておきましょう。
・トイレシートを増やす、敷き詰める
尿失禁が始まると困るのが尿のポタポタ垂れ対策ですね。
垂れやすい位置がわかっているのであればトイレシーツを敷く範囲を広げたり、部屋にペットシーツを敷き詰めましょう。
・カーペットなどの床材を洗いやすい物に変える
床に敷く床材は洗いやすいなどメンテナンスしやすいものに変えましょう。
尿失禁の頻度が高いと尿を拭き取ったりカーペットを外して洗うだけでも重労働です。
「撥水加工がされていて汚れがつきにくい」「洗濯機で洗える」など飼い主さんの精神的負担が少ない素材を選びましょう。
・オムツを着用する
犬用のオムツを着用するのもひとつの手です。
ただ、オムツを付け慣れていないと愛犬が嫌がって破いてしまったり、着用時間が長いと蒸れて皮膚炎を起こすおそれもあります。
愛犬の性格やライフスタイルを考えて着用を決めるとよいでしょう。
「愛犬の尿失禁が始まった」飼い主がやってはいけない行動3つ

では、愛犬が尿失禁を始めたときに飼い主がやってはいけない行動はなんでしょうか。
やってはいけない行動を3つご紹介します。
▼愛犬が尿失禁したときに飼い主がやってはいけない行動3つ
飼い主がやってはいけない行動①「愛犬を叱る」
飼い主がやってはいけない行動②「尿もれが少量だからと様子をみる」
飼い主がやってはいけない行動③「頻繁にお風呂にいれる」
飼い主がやってはいけない行動①「愛犬を叱る」
2023年に「お漏らしをするようになった」という理由で飼い犬に暴行を加えた男性が書類送検されるという痛ましい事件が発生しています。
▼お漏らしした老犬に暴行疑い 飼い主の男性を書類送検 神奈川新聞社
>https://www.kanaloco.jp/news/social/case/article-1007867.html
尿失禁の原因を色々と紹介しましたが、どの原因であっても犬はわざとお漏らしをしているわけではありません。
尿の後処理で飼い主さんの負担が増えるので苛立つ気持ちもわかりますが、愛犬を叱ってしまうと「尿をすると叱られる」と間違った学習をする可能性があり、別の病気にかかったり症状が重くなる可能性があります。
排尿のコントロールができないのは犬にとっても辛いことです。
尿失禁をしても決して叱らず愛犬に寄り添ってあげてください。
飼い主がやってはいけない行動②「尿もれが少量だからと様子をみる」
尿失禁の量が少ないといったん様子をみたくなるかもしれません。
しかし腎臓病や腫瘍、椎間板ヘルニアが原因の場合、早期発見早期治療がその後の犬の生活を大きく左右します。
愛犬の尿失禁に気づいたらすぐに動物病院にいきましょう。
飼い主がやってはいけない行動③「頻繁にお風呂にいれる」
尿失禁をすると陰部が汚れやすくなるので、頻繁にお風呂に入れたくなりますね。
しかし、陰部は皮膚が柔らかいので頻繁に洗うと皮膚を痛めて炎症を起こすおそれがあります。
陰部の汚れは濡れタオルやウェットティッシュ(ペット用)で優しく拭き取り、石鹸を使う場合は泡で出てくるタイプを選びましょう。

一口に尿失禁といってもその原因は病気やストレスなど様々です。
「愛犬がトイレを忘れた」「わざとやっている」というわけではないので、愛犬の尿失禁に気づいたら叱らずに早めに動物病院に相談しましょう。
<参考書籍>
小動物獣医看護学 小動物看護の基本と実践ガイド
D.R.レイン B.ク-パ- 西田利穂 (著)
<画像元>
canva

・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。

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