あなたの愛犬は他の犬のことが好きですか?
「いろんな犬と穏やかに接してほしい」「フレンドリー育ってほしい」と願う飼い主さんの思いとは裏腹に、他の犬を見ると怖がったり吠えかかったりする犬は少なくありません。
では、愛犬が犬を苦手になってしまうきっかけは一体何だったのでしょうか。
今回は「犬が犬嫌いになる原因」や「愛犬を犬嫌いにさせないために大切なこと」をご紹介します。
「すでに愛犬が犬嫌いになっている場合の対処法」も合わせてご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
<目次>
「犬なのに犬嫌いになることはある?」その原因は?

犬が犬のことを苦手になるきっかけはなんなのでしょうか。
考えられる原因を3つご紹介します。
▼犬が犬嫌いになるきっかけ3つ
・社会化期に他の犬と触れ合う機会が少なかった
・怖い思い、嫌な思いをした
・怖がりの気質を持っている
・社会化期に他の犬と触れ合う機会が少なかった
生後3~12週間までの時期を社会化期といいます。
この時期は子犬が他の犬との関わり方を学ぶ大切な時期で、母犬や兄弟犬など多くの犬と接することで、順応性や相手の行動を予測する力を養っていきます。
しかし、この時期に他の犬と触れ合う機会が少ないと、相手の行動が予測できずに怯えたり、相手の行動が受け入れられず攻撃するなど、他の犬と接するのが苦手な犬になることがあります。
・怖い思い、嫌な思いをした
「嫌がっているのにしつこく匂いを嗅がれた」「自分より大きい犬に追い回された」「近寄ったら大声で吠えられた」など1度でも嫌な経験をしてしまうと、他の犬との接触を嫌がるようになることがあります。
また最初は特定の犬だけを怖がっていても、時間が立つごとに不安や恐怖の対象が広がって一般化してしまい、似た特徴を持つ犬も怖がるようになることもあります(首輪をしている大きな黒い犬に噛まれた→色が黒い犬を怖がる、首輪をしている犬を怖がるなど)。
・怖がりの気質を持っている
「不安を感じやすい」「警戒心が強い」「衝動性の高さ」といった気質は親から遺伝することがわかっています。
不安気質が強い犬同士の交配を避けられればよいのですが、日本のブリーディングでは気質まで考慮しない場合が多く、子犬が親犬の気質を受け継いでいる可能性があります。
また妊娠期の母犬に強いストレスがかかったり、母犬が育子行動を十分に取らないとストレス耐性の低い子犬に育つことも知られています。
子犬が生まれてくる環境がもたらす影響は大きいので、親犬がどんな環境で育っているのかまで知っておいた良いでしょう。
「見落とし注意」犬が嫌いな犬に対して取る行動・仕草は?

では、愛犬が他の犬が苦手かどうかはどうやって確かめたらよいのでしょうか。
犬嫌いの犬が見せる行動や仕草を紹介するので、愛犬からのサインを見落とさないようにしましょう。
▼愛犬がこんな行動や仕草をしたら犬嫌いかもしれません
・他の犬に向かって吠える、唸る
・他の犬を見て動かない
・顔を背ける
・他の犬から逃げる、反対方向に行く
・飼い主の後ろに隠れる、抱っこをせがむ
・地面の匂いを嗅ぐ
・体をかく、あくびをする
他の犬に吠えたり唸ったりするのは「それ以上近づかないで」という威嚇のサインです。
吠えを無視して近づけば唸り声はより大きくなり、次は攻撃行動を取る可能性が高いです。
逆に他の犬を見て動かない、顔を背けるという行動は「嫌だけど相手との衝突は避けたい」というときに見せる行動です。
愛犬が大人しくしているからと他の犬と接触させようとすると、我慢できずに攻撃行動に移ったりより犬嫌いが悪化する可能性があります。
地面の匂いを嗅ぐ、あくびをするといった行動も不安な気持ちや葛藤を抱えているときによく犬が見せる行動です。
こういったサインを見落してしまうと愛犬の犬嫌いがより悪化してしまうので、注意しましょう。
愛犬を「犬嫌い」にさせないために大切なこと5つ

では、愛犬を犬嫌いにさせないために飼い主さんができることはなんでしょうか。
大切なことを5つご紹介します。
愛犬を犬嫌いにさせないために大切なこと5つ
- ①「パピークラスに参加する」
- ②「飼い主さんが身構え過ぎない」
- ③「良い経験を増やしていく」
- ④「相性が悪い相手と接したら飼い主さんがフォロー」
- ⑤「気が合う犬は1匹でもOK」
① 「パピークラスに参加する」
子犬を家に迎えたらパピークラスに参加してみましょう。
大事な社会化の時期に色んな犬や人と触れ合うことができます。
また、パピークラスにはドッグトレーナーさんが参加している場合が多いので、接し方やしつけのコツを習うこともできます。
② 「飼い主さんが身構え過ぎない」
愛犬は飼い主さんの様子をよく観察しています。
飼い主さんが「仲良くさせないと」「ちゃんとしないと」と身構えると、その緊張が犬にも伝わって犬も緊張したり不安になりやすいです。
最初はうまくいかなくても何度か会ううちに打ち解けてリラックスした関係が築けることもあるので、身構え過ぎないようにしましょう。
③ 「良い経験を増やしていく」
愛犬が犬に対して良い感情を持つ機会を増やしていきましょう。
例えば「挨拶させるのは相性が良さそうな犬だけ」「犬と挨拶したらオヤツを与える」など犬と会ったら良いことがあったと学習させます。
犬同士を雰囲気が悪くなったり上手くいかなかったときは、すぐに飼い主さんが間に入って仕切り直してあげましょう。
「他の犬に対する悪い印象をできるだけ減らす」「犬に会うといいことが起きる」ということを繰り返していると、他の犬に対してポジティブな印象を持つことができます。
④ 「相性が悪い相手と接したら飼い主さんがフォロー」
たくさんの犬と触れ合わせていると嫌な思い(近寄ったら急に吠えられたなど)をすることもあります。
そういった場合は、すぐに飼い主さんがフォローに入ってください。
嫌なことがあってもすぐに飼い主さんが声をかけて、大好きな物(オヤツやおもちゃ)を与えれば「怖かったけどオヤツもらえたからいいか」と嫌な印象を上書きすることができます。
愛犬が怖がっていたり相性が悪そうな犬は無理に触れ合わせずに、距離をとってOKです。
⑤ 「気が合う犬は1匹でもOK」
「どんな犬とでも仲良くできるのが良い」と思うかもしれませんが、気が合う犬は1匹でもいれば十分です。
人にも相性があるように犬同士にも相性があります。
活発に動くのが大好きな犬もいればのんびり過ごすのが好きな犬もいます。
たくさんの犬と仲良くできることだけが正解ではないので、無理をせずに愛犬が心地よく過ごせる子と交流させましょう。
「すでに愛犬が犬嫌いに」克服できるの?

では、愛犬がすでに犬嫌いになってしまったら、どうしたらよいのでしょうか。
大切なポイントを4つまとめました。
▼愛犬が犬嫌いの場合の対処法4つ
・それ以上悪化させないことが大切
・「仲良く遊ぶ」だけが正解ではない
・飼い主さんとの関係が良好であればOK
・専門家(ドッグトレーナーなど)に相談する
それ以上悪化させないことが大切
これまで他の犬と多く接して経験を積ませましょうとお話してきましたが、すでに愛犬が犬嫌いな場合、克服することよりも悪化させないことが大切です。
犬が苦手なのに無理に交流させようとすれば、飼い主さんにもネガティブな感情を抱きかねません。
愛犬から犬が苦手というサインが見られたら、無理に他の犬と接触させずに距離を取ったり避けて悪い印象を持つ機会を少なくしていきましょう。
「仲良く遊ぶ」だけが正解ではない
犬同士のコミュニケーションは仲良く遊ぶだけではありません。
「他の犬とすれ違っても平常心でいられる」「吠えないでいられる」「同じ空間にいられる」ことも立派なコミュニケーションです。
色んな犬に近寄って挨拶して回る犬に育てる必要はなく、他の犬と会っても平常心が保てる犬であれば十分です。
飼い主さんとの関係が良好であればOK
「犬友達がいないと寂しいよね」というのは人間の感覚で犬はさほど気にしていません。
むしろ人生の大半を一緒に過ごす飼い主さんと信頼関係が築けていることの方が重要です。
不安に思ったり気にする必要はないので、愛犬とたくさんお出かけしたり遊んで愛犬の気持ちを満たしてあげてください。
専門家(ドッグトレーナーなど)に相談する
他の犬と接することができないことで日常に支障が出ている場合は、ドッグトレーナーや行動療法の獣医師など専門家に相談しましょう。
苦手なものに慣らすトレーニングは愛犬に合った適切なトレーニングプランと根気が必要です。
飼い主さんだけで改善するのは難しいので、プロの手を借りましょう。

愛犬が犬嫌いの場合、大切なのは愛犬の気持ちに寄り添ってあげることです。
愛犬の気持ちを無視すれば、飼い主さんとの関係に亀裂が入ってしまうこともあるので、無理に交友関係を広げずに愛犬らしさを優先してあげてくださいね。
<参考書籍>
動物の精神科医が教える犬の咬みグセ解決塾 奥田 順之 (著)
こころのワクチン 村田 香織 (著)
ドッグ・トレーナーに必要な「子犬レッスン」テクニック
ヴィベケ リーセ (著)藤田 りか子 (編集)
<画像元>
canva

・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。

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