おもちゃを与えるとすぐに喜んで遊んでくれる愛犬、そんな愛犬だと、つい、次から次に買い与えたくなってしまいますよね。
それこそ、色も形も今は多種多様なので、「どうせなら色鮮やかな色!」と思う飼い主さんも多いかもしれません。
しかし、その犬のおもちゃ選びは、選ぶ色によっては、犬に正しく識別されていないかも…。
今回は、犬の色覚の基本やおもちゃを使用する際の場所の注意点などをご紹介します。おもちゃを選ぶ際にはぜひとも参考になさってみてくださいね!
人の眼の構造と犬の眼の構造に違いはある?

犬のおもちゃ選びで重要になってくる色を知る前に、まずはそもそも人の眼の構造と犬の眼の構造についての違いを見ておきましょう。
人の眼の構造と犬の眼の構造は、基本的にはこれといった違いはないと言われています。
以下のような構造・仕組みとなっていて、人と犬の眼の違いという違いと言えば、第三のまぶたと言われる瞬膜と輝盤(きばん)と呼ばれる光の反射板であるタペタムの有無の違いくらいです。
▽『基本的な人の眼の構造と犬の眼の構造』
引用元:楽しい解剖学 ぼくとチョビの体のちがい 第2版
ただ、人の眼の場合には、色を感知する働きを持つ錐状体の数が犬より多いと言われています。
一方、犬の眼の場合では、その錐状体が人よりも少ないために、色の識別が限定されていると言われているのです。けれど、犬はその代わり光を感知する働きを持つ桿状体の数が人よりも優れており、その数はおおよそ95%以上が割合を占めているとも言われているため、例え暗闇でもわずかな光を感じ取って、空間を把握しているとされています。
犬のおもちゃ選びのヒントとなる人とは違う犬の色覚

では、具体的に錐状体の少ない犬の眼は、どのような景色を普段感じ取っているのでしょうか?
一般的に私たち人の場合では、色彩豊かな景色を赤・緑・青の3原色でその世界を見ていると言われています。
しかし犬の場合では、その景色のほとんどは白黒で、「色に関する識別は行なえていないのでは?」と言われてきました。
けれどこの推察は、今となっては一昔前の考え方です。
現在における犬の色覚については、1989(平成元)年時点で犬の網膜には黄色と青色に感受性のある2種類の錐体が存在することが発見されており、犬はその2種類の様々な組み合わせによって色を識別していることが分かっています。
また、その後2017(平成29)年にイタリアのバリ大学の教授らが発表した研究では、犬の色覚テストの実験を受けたオーストラリアン・シェパード3匹、ブリタニースパニエル1匹、ワイマラナー1匹、ラブラドール・レトリバー1匹、ミックス10匹の計16匹の結果で、以下の画像の【RG-Cat-6】による色識別が犬にとってとても苦労したことが分かったと報告されました。
この結果は、人にも起こることがある色覚障害と似たような状態を表しており、犬からすると赤や緑は基本的にハッキリとした識別をすることが出来ないと言うことを示した結果となっています。
ただ犬の場合は似ているというだけで、全く赤や緑という色を識別できない訳ではありません。
▽『人と犬で見る赤色や緑色の景色の違い』
犬の場合には、上記の画像のように手前の赤やピンク、そして緑が全体的に白色からグレーっぽい色で見えているとされています。
そのため、犬のおもちゃを選ぶ際には犬が識別しやすい色の選定を意識してあげることが大切です。
犬にオススメのおもちゃの色って結局どれ?

それでは、結局のところ犬にとっておもちゃを選ぶ時の基準となる色は、どの色が良いのでしょうか?
まずは、犬が見ているであろう色覚の想定図を確認しておきましょう。
▽『犬が普段見ている色の想定図』
あくまでも想定図ではありますが、この犬の色覚を踏まえた上で、続いてはオススメのおもちゃの色を見ていきましょう。
青色

犬にとって最も識別しやすく、また、私たち人が見ている色彩とさほど違いのない色が青色です。
青色のおもちゃの場合、先に述べた青色の感受性を示す錐状体が働くため、愛犬が色に対して混乱することは基本的にないと言って良いでしょう。
また、水色などの薄い青色やネイビーブルーであっても犬にとっては識別しやすい色合いとなるため、オススメです。
ただし、紫については赤ほどグレーに見える訳ではないものの赤色が視認できない結果、グレーっぽい青色に見える場合があるため、注意しましょう。
黄色

犬が識別しやすい色彩の二つ目としてオススメなのが、黄色です。
黄色のおもちゃの場合、上記同様感受性を示す錐状体が働くため、愛犬のおもちゃには最適となります。
他にも、レモンイエローのような薄い色やカナリア色といった色合いでも、犬の眼にとってはしっかりと識別が可能な色合いとなるため、オススメな色と言えるでしょう。
白色(背景色による)

青色や黄色ほどではないものの、ある程度犬の眼で識別しやすい色として、白色という選択肢も挙げられます。
ただ、白色で愛犬が喜びそうなおもちゃのイメージとなると、骨型の物か白を基調としたぬいぐるみ、または白を基調としたロープなど、おもちゃ自体の種類が限られてしまうため、実際に手に取ったり購入したりする機会は少ないかもしれません。
また、例えば背景色が白に近いクリーム色であったり、アイボリー系の色であったりすると、色が同化してしまうため、犬の視覚には、何もないように見えてしまうかもしれません。
そういった場合には、バイカラー(1つのアイテムに2つ配色のあるもの)で、青×白といった組み合わせや黄×白といった組み合わせのおもちゃを選択してあげると良いでしょう。
黒色

明暗がしっかりと認識できる黒色のおもちゃも、犬の眼にとっては識別しやすい色合いとなるため、オススメです。
ただし、こちらも白色同様遊べるおもちゃの種類というと、コング(おやつを入れる知育トイ)やボール、またはタイヤ型のおもちゃなど種類が限られてしまう傾向にあるため、こちらもバイカラーといった色の組み合わせがされているおもちゃで、愛犬の喜びそうなおもちゃを選択してあげると良いでしょう。
犬とおもちゃで遊ぶ時の場所の注意点

それでは、ここからは犬とおもちゃで遊ぶ時の場所について、その注意点を見ていきましょう。
犬とおもちゃで遊ぶ際、ほとんどの飼い主さんは家の中が多いと思います。そのため、例えおもちゃの色が赤色や緑色で愛犬にはグレーっぽく見えていたとしても、さほど問題にはならないことでしょう。
しかし、これが例えば家の中でもフローリングの上に敷いてあるカーペットや絨毯がグレーや緑っぽい系統の色合いだった場合には、犬が判別しづらい単色のおもちゃは避けるように注意しましょう。
また、屋外におもちゃを持って愛犬と遊んであげる際にも、例えばその場所が芝生のような広場だった場合には、赤ではくすんだ黄色っぽいグレーに、緑やオレンジでは芝生と同化したような色合いに愛犬からは見えてしまうため、注意しましょう。
そのような場所で遊ぶ際には、色が同化しないような青色を選ぶのが効果的です。

また、砂場などベージュや薄茶色のような色味がある場所では、黄色のおもちゃを選ぶと良いでしょう。
黄色は、犬にとっても識別しやすい色でありつつも、砂場などの背景とも同化しづらい色味をしているため、愛犬がおもちゃで遊んでいても途中でそのおもちゃを見失ったり、判別しづらかったりすることはありません。
愛犬とおもちゃで遊ぶ際には、遊ぶ場所でもおもちゃの色に気を付けるよう意識しましょう。
まとめ

いかがでしたか?
犬にとって視覚という感覚器は、嗅覚や聴覚と比べるとだいぶその比率は少なく、数値にすると大体15%前後しか頼っていないようです。
そのため、視力についても0.2~0.3程度の視力しか持ち合わせていないと言われるくらい、ぼんやりとしか景色を感じられないと言われています。しかし、犬は動体視力に関してはとても長けているため、大して見えずとも色と動くものの識別がハッキリと出来れば、その対象を追いかけて捉えることも、遊んで楽しむことも可能です。
犬の性格の違いによっては、おもちゃに全く興味を示さない子も居るかもしれませんが、少なくともおもちゃが大好きで、飼い主さんと遊ぶ時には必ずおもちゃを持ってくるような愛犬だった場合には、出来る限り愛犬が識別しやすい色味のおもちゃを心掛けてあげてくださいね。
<参考書籍>
楽しい解剖学 ぼくとチョビの体のちがい
観察する目が変わる 動物学入門
<参考サイト>
[No.720] 犬の感覚, 特に色覚の話をしてみよう。|自由が丘 清澤眼科
>https://jiyugaoka-kiyosawa-eyeclinic.com/wadai/4794/
Are dogs red–green colour blind?|犬は赤緑色盲?
>https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rsos.170869

また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。

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