人の場合、『寝る子は育つ』なんてよく言われたものですが、犬は人以上に良く寝ていることが多い動物ですよね。
特に幼犬やシニア犬ともなると、「あれ?まだ寝てる?」と思わず様子が気になってしまう程、長時間寝ている子は珍しくないと思います。
ただ、そんな犬たちにも、犬種別で睡眠時間が異なることをご存知ですか?
今回の記事は、そんな犬種別で見る睡眠時間の違いや寿命との関係性、質の高い環境作りについてまとめました。
犬も『寝る子はよく育つ』?
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私たち人にとって睡眠とは、一日の疲れを癒す最も貴重な時間で、特に子供にとっては十分な睡眠がしっかりと取れていれば、『寝る子は育つ』の言葉通り、成長ホルモンの活性化や分泌の促進で、心身の安定に繋がることが分かっていますよね。
▽『人の子供における年齢別推奨睡眠時間』
▽『良い睡眠が人の子供に与える心身の影響』
では、その法則は犬にも通用するものなのでしょうか?
結論から申し上げれば、答えは『YES』です。
犬や猫といった動物の睡眠は、一般的にはそのほとんどが熟睡と覚醒を頻繁に繰り返している【ノンレム睡眠】で、熟睡できていたとしても、その時間帯は大体僅か30分~40分程とされています。
これは犬の習性によるもので、今でこそ犬は人の生活習慣に合わせて「朝は起きて、夜は寝る」という決まった行動を取ることが多くなりましたが、野生時代は常に外敵から身を守るために、浅く短く寝る習性があったため、犬の睡眠は基本的に脳を休ませる【ノンレム睡眠】ではなく、体を休ませる『レム睡眠』でした。
▽『ノンレム睡眠とレム睡眠の違い』
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▲左画像:ノンレム睡眠|右画像:レム睡眠
しかし、このような睡眠すらも犬自身が適切に取れていないような場合、それらは睡眠中、脳から分泌される『成長ホルモン』の分泌を阻害し、十分な心身の成長に繋がらなくなる可能性があります。
そのため、このような物質の生産が何らかの理由で阻害されてしまうと、それは成長不良だけではなく、うつ病などの心身の不調にも影響してしまうため、特に初めて子犬を迎えるような飼い主さんの場合には構ってあげたくなる気持ちをぐっと堪えて、静かに見守ってあげるよう心掛けましょう。
犬種によって異なる睡眠時間とは?
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犬の睡眠平均時間は、全犬種の成犬で大体12時間~15時間程度とされています。そこに幼犬やシニア犬を含めた場合には、16時間~19時間と、随分睡眠時間に幅が生じる結果となっています。
では、犬種別では何か睡眠時間に違いは生じているのでしょうか?
あくまでも目安ではありますが、以下でそれぞれ違いを確認してみましょう。
▼【犬種別の適正平均睡眠時間】
チワワ:10時間程度
柴犬:10時間程度
トイ・プードル:14時間程度
ポメラニアン:12~13時間程度
フレンチ・ブルドッグ:12~15時間程度
ミニチュア・ダックスフンド:11~15時間程度
ゴールデン・レトリバー:18~20時間程度
シベリアン・ハスキー:12時間程度
一般的に、水猟犬や狩猟犬として活躍していたトイ・プードルやミニチュア・ダックスフンド、大型犬であり、こちらも使役犬として活躍していたゴールデン・レトリバーは、活動的な犬種ともあって、平均した適正睡眠時間は、比較的多いようです。
一方で、元は作業犬として活躍していた柴犬やシベリアン・ハスキーは、長時間でも活動できる体力を持ち合わせていることもあってか、やや睡眠時間は短めとなっています。
また、チワワやポメラニアンについては、基本的にそれほど運動量を必要としませんが、性格が活発的な傾向にあるため、その場合にはチワワでも12時間以上睡眠時間を要する子が居るようです。
そして、同じ愛玩犬でも睡眠時間を多く取るフレンチ・ブルドッグは、活発的な性格をしつつも些細なことに動じない大らかな一面を持ち合わせていることもあって、比較的睡眠時間は長めというのが、一般的なようです。
睡眠時間は寿命と関係する?しない?
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人の場合、質の良い睡眠と適切な睡眠時間(おおよそ6時間~8時間)を確保することが出来れば、死亡リスクの減少が明確化されています。
しかし犬の場合、現段階では睡眠時間と寿命の直接的な因果関係は、残念ながら証明されていないと言われています。これは、あくまでも犬の寿命はその個体差や遺伝、生活環境などによって決まる傾向が強いとされているためです。
直接的な因果関係はないにしても適切に睡眠時間が確保できていた場合は、その良い影響は心身に様々な効果をもたらします。
例えば、先程上記で幼犬やシニア犬では睡眠時間が多い傾向にあることをお伝えしましたが、この睡眠時間は極端に長い時間でなければ、成長促進や体力の回復などに役立ちます。一方で、こうした十分な睡眠時間の確保が取れていない場合には、先にも述べた通り成長促進の阻害やストレス、体調不良などを及ぼしてしまうため、結果的に免疫力の低下などが伴って寿命にも影響してくる可能性が十分に考えられるのです。
人でも睡眠不足に陥れば、集中力の低下や免疫力の低下、また、イライラといった精神的な面にも影響を及ぼします。
その結果として、人の場合では厚生労働省から『健康づくりのための睡眠ガイド2023(案)』というようなガイドラインが策定されていますが、犬の場合でもこのようなガイドラインがないというだけで、睡眠不足が犬に与える悪影響には、人とほとんど変わらない部分があると言っても過言ではありません。
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大切なのは、その子自身にあった睡眠環境や睡眠時間、また、個体差で変わる質の良さをどれだけ飼い主さん自身が上げてあげることが出来るかです。
次章では、こうした睡眠の質の良さに着目した環境作りのコツをご紹介します。
犬の睡眠の質の良さを上げる環境作りのコツ
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それでは、犬の睡眠の質を上げる環境作りのコツをご紹介します。
基本的に幼犬、成犬、シニア犬と年齢を分けた場合には、その子に合った適切な睡眠時間の確保は大前提としますが、環境作りをする上で共通して大切となってくる項目としては、大きく4つの項目が挙げられます。
それぞれ詳しい内容を見てみましょう。
睡眠の質を上げる環境作り①:温度管理と湿度管理に気を付ける
犬の夏場の最適な温度管理は、シングルコートで約23℃~26℃、ダブルコートで約20℃~25℃と言われています。
また、冬場の最適な温度管理は、シングルコートで約20℃~25℃、ダブルコートで19℃~23℃とされており、湿度については、一年を通して大体40%~60%が最適な湿度管理だと言われています。
犬の睡眠の質を上げるためには、このような温度管理、湿度管理が人と同じように欠かせず、これらのバランスをしっかりと維持することによって、睡眠の質を上げることが出来ます。
睡眠の質を上げる環境作り②:薄暗く狭い落ち着ける場所の確保
犬は元々静かで薄暗く狭い落ち着いた場所を好む習性がある動物です。
そのため、クレートやゲージなどに抵抗を示さない愛犬の場合には、そこにふかふかのペットベッドなどを用意すると良いでしょう。一方、クレートやゲージではなく室内フリーで愛犬が過ごしている場合には、飼い主さんが普段寝る寝室や落ち着けるような場所の一角に、同じくふかふかのペットベッドを置いて、出来れば飼い主さんとベッドは分けると睡眠の質を高めることが可能です。
睡眠の質を上げる環境作り③:寝床とトイレは別にして離しておく
犬は基本的に綺麗好きな動物で、寝床とトイレが近くに置いてある場合、熟睡する事は出来ません。
可能であれば愛犬をご家庭に迎え入れた段階から、寝床とトイレは離して設置するのが最善ですが、なかなかすぐには難しいようなら、愛犬のトイレトレーニングが完了した段階で、出来る限り離れた場所に寝床とトイレの場所を確保して、快適に眠れるようなレイアウトに変更してあげましょう。
睡眠の質を上げる環境作り④:適度な運動をさせる
犬の睡眠の質を上げるためには、愛犬との適度な運動を心掛けることも大切です。
例え世界最小と謳われるチワワであっても、全く散歩を必要としない訳ではありません。必ず犬には適度の運動が必要となるため、天候などでどうしても散歩が難しい場合を除いては、最低でも一日一回、散歩をしてあげるよう心掛けましょう。
そうすることによって、適度な疲労と適度なストレス発散が出来、夜寝る時に睡眠の質を高めることが可能です。
まとめ
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今回は、犬種によって違いが出る睡眠時間や睡眠と寿命の関係性、また、睡眠の質を高める環境作りについて解説しました。
愛犬の睡眠環境は、多くの場合私たち人の生活環境に影響される部分がたくさんあるため、すぐに今までのスタイルを変えるというのは、飼い主さんも愛犬も難しいかもしれません。
しかし、犬の睡眠は人の睡眠と同様、重要な役割を果たします。
愛犬の睡眠環境の改善で、少しでも長く元気に生活できるような環境を作ってみてあげてくださいね。
<参考書籍>
360°ビジュアル犬種大図鑑 世界の最新人気犬種のスタンダードがひと目でわかる
観察する目が変わる 動物学入門
<参考サイト>
健康づくりのための睡眠ガイド 2023 (案)|厚生労働省
>https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
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また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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