猛暑日が体に堪える夏は、犬だけでなく、人もなかなか普段通りの生活を送れないことが多いものですよね。
中には、あまりの暑さにイライラが募り、人にきつく当たってしまうなんてこともあったりするのではないでしょうか?
この暑さから来るイライラ…。
実は犬にも暑さによってイライラ度がUPするというのです!
今回は、暑さによって起こる犬の『噛みつき』やすさや環境因子との関連性、防止策についてご紹介します。
<目次>
そもそも犬はなんで『噛む』の?
根本的な問題ではありますが、そもそも犬はなぜ色々なものを『噛み』たがるのでしょうか?
『噛む』という行為は、普通に考えれば痛いことですし、それは犬も変わらないはず…。
ですが、犬にとって『噛む』という行為そのものは、防衛本能であり、また、狩猟本能や興味を掻き立てる習性であり、甘えや遊びから来る『甘噛み』なども、ごく自然な行動としてありふれたものです。
そのため、犬がこの行為自体を【いけない・悪いこと】という認識を持つことはありません。
犬は基本的に、生後21日目以降から生後90日(4か月)頃にかけて、兄弟犬や母犬から犬社会のルール、人との関わりから人間社会のルールといった、いわゆる【社会化期】を迎えることとなります。
そこには、色々なことを子犬に体験させて環境に慣らしたりすることだけでなく、兄弟間での『遊びの中での甘噛み』や母犬からの『噛まれたら痛い』という教育的指導なども含まれるため、そうしていくことで子犬は、『噛む』行為がどんなものなのかを学んでいきます。
けれど、この【社会化期】をしっかりと経ているかどうかは、迎える場所によって大きく異なることがあります。
犬を迎える際、一般的に優良なブリーダーや友人・知人から迎えるということであれば、ある程度親元で成長した子犬を選ぶことは可能でしょう。
しかし、それがペットショップだった場合には、そうした【社会化期】の状況は私たち飼い主の立場からでは把握しきれない部分があるため、慎重に判断する必要があります。
そのため、どんなに可愛いと感じる犬であったとしても、「犬はそもそも噛む生き物だ」ということについて、まずはしっかりと認識しておくよう心掛けましょう。
気温上昇と犬の『噛みつき』の関係性とは?
では、気温上昇と犬の『噛みつき』の関係性を証明した研究結果とは一体どんなものなのか見ていきましょう。
今回、気温上昇と犬の『噛みつき』の関係性を調査研究したのは、アメリカマサチューセッツ州ボストンにあるハーバード大学の研究チームでした。
同研究チームは、2009(平成21)年~2018(平成30)年にかけてアメリカの8つの都市(ヒューストン・シカゴ・ロサンゼルス・ニューヨーク・ボルチモアなど)の公衆衛生局から犬の咬傷事故に関するデータを入手、日中の最高気温や降水量、紫外線量、大気汚染濃度(PM2.5)、オゾン濃度などとの関係性を調べました。
その結果、この期間中に起こった事故件数は6万9525件にも上ったと発表したのです。
そして、犬の咬傷事故が多くなった特徴として、紫外線量で11%、気温で4%、オゾン濃度で3%、それぞれ数値が上昇していたとする研究結果を併せて示したのでした。
また、厚着になる冬場には大気中にオゾン量が増えることから、こちらも咬傷事故が多いということが示唆されたのでした。
▽『犬の咬傷率上昇調査結果内容』
△The risk of being bitten by a dog is higher on hot, sunny, and smoggy days
しかし、その一方で雨天が関係する降水量や休日についての咬傷率は減少傾向にあり、大気汚染濃度(PM2.5)については変化なしという結果になりました。
今回示されたこの研究データでは、犬種や性別、去勢の有無などの影響は分からず、また、犬と飼い主、被害者との関係性についても不明としているため、さらなるデータの蓄積と研究による裏付けが必要だと言われていますが、少なくともこの研究結果によって、犬でも人同様気温上昇の影響でイライラが募り、夏の暑い時期には特に攻撃性が高くなる可能性があることは、とても興味深い結果になったと言えるでしょう。
無視できない環境因子と犬の『噛みつき』の因果関係とは?
ただ、今回の研究結果はあまりにもザックリし過ぎているということもあって、この咬傷事故データが環境因子と直接的な因果関係はあるのか?と問われれば、その点については難しいところと言わざるを得ません。
そもそも、夏場はただでさえ暑い時期が多く、多くの人は薄着になることで暑さを凌ごうとします。
また、基本的に夏場に薄着になることはごく自然なことなので、例えばその状態から犬に噛まれれば、当然重症化リスクは高まり、重症化すれば事故の報告件数は増えるものでしょう。
けれど一方で、同じく噛まれたとしても厚着の多い冬場の場合では、噛まれ方によっては重症化する場合もあれば、そうでない場合があるのは、何ら不思議なことではありません。
したがって、こうした状況や事情を踏まえた上で再度、環境因子と咬傷事故データに因果関係が生じているかと問われれば、この場合、事故報告件数の直接的な変動要因は、【人の着衣】であって、【犬の攻撃性(噛みやすさ)】とは関係ないとも言えるかもしれません。
しかし、人の場合ではすでに気温上昇によって、攻撃性が高まるとされた研究結果は多数存在しています。
そして、今回示された気温上昇と犬の攻撃性に関する研究データでも、近しいものがあることが事実となっています。
そのため、少なくとも夏の暑い時期は、上記で示されたデータの中で、外気温上昇と紫外線上昇の2つの項目には該当しているため、危険因子として捉えておくことは大切だと言えるでしょう。
犬が『噛みつき』やすくなる暑い日の防止策はある?
それでは、犬が『噛みつき』やすくなる暑い日、どういったことに気を付ければ、咬傷事故に繋がらずに済むのでしょうか?
結論から申し上げれば、『甘噛み』及び『本気噛み』にならないよう、早い内から犬には噛みつくことはいけない事だということを教えることが大切です。
もちろん、一般的に『噛むこと』が習性として備わっている犬が、すぐに『噛まなくなる』ことはなかなか難しいことでしょう。
特に防衛本能や警戒心が強い柴犬やチワワ、ミニチュア・シュナウザーなどの犬種に至っては、相当時間のかかることかもしれません。
しかし、人でさえ夏の暑さは、普通にしていてもその暑さによってストレスやイライラが溜まって、やる気をなくしたり、だるくなったりする程のものです。
犬であってもそういった感情を持ち合わせる生き物だということを念頭に置いて、根気よく愛犬と向き合ってあげてください。
また、普段から噛まない犬であっても、暑さの度合いや紫外線の強さによっては、愛犬の精神面に異変が生じるかもしれません。
夏の暑さは咬傷事故が多くなるリスクだけではなく、夏バテや熱中症の原因となる危険因子もはらんでいます。
そのため、夏場の散歩は出来るだけ早朝や日没以降に行き、日中の熱い時間帯は過ごしやすくした室内で愛犬の体調管理に気を付けることで、熱中症のリスクや咬傷事故のリスク回避を心掛けてあげてください。
まとめ
いかがでしたか?
犬の攻撃性による咬傷事故が、「夏の暑さや紫外線量、オゾン濃度の上昇によって増加するデータが示されるなんて…。」と、ちょっと意外だった方も多いかもしれません。しかし、犬は咄嗟の危険を感じた時には牙を剝いて相手をけん制しようとします。
これは筆者の憶測に過ぎませんが、人があまりの暑さにストレスやイライラ、危険を感じると人に当たりたくなるように、飼い主さんの中で日中散歩に連れて行っている方の愛犬が、夏の暑さを危険視して攻撃性が高くなっているなら、その子はもしかしたら飼い主さんに対して「暑いから散歩は夜にして!」と訴えかけているかもしれません。
夏場はただでさえ暑さで参ってしまうことが多くなる季節です。
そのため普段大人しい愛犬がふとした時、ちょっとした事で何かに牙を剥けたりするようなら、暑さ対策に加え、メンタル面のケアについても心掛けてあげてくださいね。
<参考サイト>
The risk of being bitten by a dog is higher on hot, sunny, and smoggy days|気温の高い日や晴れている日、大気汚染が多い日には犬に噛まれるリスクが高くなる
>https://www.nature.com/articles/s41598-023-35115-6
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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