皆さんは愛犬に突然噛まれた経験はありますか?
ただ撫でていたらガブッ!遊んでいたらガブッ!など、色んな場面で犬の突発的な行動に驚かれた飼い主さんも少なくないことでしょう。
では、犬はどんな時に飼い主さんに噛みつくのでしょうか?
今回は、犬が噛みつく主なシーンやその理由、ペット先進国イギリスから学ぶ攻撃行動のある犬との向き合い方などをご紹介します。
犬が噛みつく主なシーンとは?
一般的に犬にとって【噛む】という行為そのものは、ごく自然な行動です。
確かにきっかけや原因になるような出来事は、【噛む】ことに大いに関係してくるものではありますが、だからといって飼い主さんのしつけ方が悪いから【噛む】行為がなくならない、という訳では一概に言えません。
では、犬が飼い主さんに向けて牙を剥けてしまう原因となる主なシーンはどういった場合なのか…。
まずは以下で、犬が【噛む】いくつかの主なシーンを確認してみましょう。
噛みつきシーン①:自分の身を守る時
始めに犬が最も噛みつきやすい行動には、自分の身を守る時が考えられます。人もそうですが、犬も自分に危険が及びそうになった場合には、自分の身を自分で守るために、噛むことがあります。
ただ、飼い主さんから見た時、犬が身の危険を感じる行為にはどんな事柄が関係すると思いますか?
例えばですが、「直接的な体罰」や「犬が嫌がる場所を引っ張った」などといった行動は、あくまでも分かりやすいケースです。
けれど、以下のような場合ではどうでしょうか?
▼【犬が自分の身の危険を感じる主なケース】
・足を拭こうとした時
・寝ている時に頭を撫でようとした時
・お風呂に入れようとした時
心当たりがある飼い主さんは、いらっしゃるでしょうか?
このようなケースでは、飼い主さんからしてみたら、犬が身の危険を感じて噛みつこうとしたとは、到底思えないものかもしれません。
しかし、人の常識で物事を見た時にはそう思えない状況でも、犬にとってはこうしたケースは、とてつもない恐怖を感じることがあります。
他にも、体に触れられることに慣れていない保護犬や抱っこが苦手な子、服が苦手な子なども、脅威の対象となり得る場合があるでしょう。
噛みつきシーン②:愛犬が決めたお気に入りを守る時
人の子供でも、同い年くらいの子供と遊んでいる時にお気に入りのおもちゃを取られると怒ってしまうように、犬もまた自分が決めたお気に入りの〔物〕を取られそうになった場合は、それを守ろうと飼い主さんに噛みつくことがあります。
▼【愛犬が決めたお気に入りを守る時の主なケース】
・ご飯を食べる前・最中・食べ終わった後(フード・アグレッシブ)
・お気に入りの物を取られそうになった時(トイ・アグレッシブ)
これらの多くは主に、犬がとても気に入って、「飼い主さんでも触ってほしくない!」と感じた時に噛む行動に転じる、よく見られる行動かと思います。
こういったお気に入りを守る行動については、愛犬側からしてみたら「奪われる!」危機感から、ついには飼い主さんを噛んでしまいます。
噛みつきシーン③:犬同士の交流があった時
筆者も経験がありますが、現在一般家庭で飼養されている犬の飼い主さんの中には、「うちの子大人しいから大丈夫」と、愛犬同士の交流を率先して作ってくれようとする方がいます。
ただ、そうであったとしても、その好意が必ずしもその通りになるとは限らないのが、犬同士の世界というものです。
▼【犬同士の交流で愛犬が攻撃に転じやすい主なケース】
・怖がったり自信過剰だったりした場合
・不安や葛藤が見られた場合
・お気に入りの物を取られた場合
・攻撃性を強められた犬種と出会った場合
・ドッグランなどの場で集団から囲まれた場合
以上のような5つのケースは、犬同士の交流で愛犬が攻撃に転じやすく、それを止めようと飼い主さんが手を出せば、容易に噛まれてしまう事柄の数々です。
人の行動でも絶対がないように、犬の行動もまた絶対という行動はないため、散歩中、例えどんなに「うちの犬は大人しくて噛まない」と言われた犬であっても、油断することのないように心掛けることが大切です。
▼【合わせて読みたい!こちらの記事もオススメです】
子犬が甘噛みする理由は?噛み癖に繋がる原因や噛む時の対処法・注意点について
>https://www.inutome.jp/c/column_9-271-43367.html
犬が噛みつく理由には大きく分けて二通りある
一般的に、犬が飼い主さんを噛んでしまう理由は様々だと言われています。そして、その噛み癖を直すには、噛む理由に合った対処方法が大切とも。
ただ、犬が噛まずにはいられなくなってしまう理由には大きく分けて二通りのパターンが存在するため、まずはそれを確認しましょう。
キッカケがあって噛む
キッカケがあって噛む場合には、例えば多くの飼い主さんが良く悩まれることの多いインターフォンの音や遊んでいる最中の興奮の高まりなどが挙げられます。
これらキッカケは、理由が一つだけというケースはあまりなく、郵便配達の人が来た時のインターフォンの音と友人などの来客が訪れた時や、遊んでいる最中の興奮度の高まりと犬同士の順位争いなど、いくつかの項目が複雑に絡んでいる場合が多くあります。
突発的に噛む
突発的に噛むとは、例えば愛犬自身の体に痛みがある場合や病気によって発作が起きてしまった場合、愛犬自身が本当は違った相手に威嚇していたところへ飼い主さんが仲裁に入った場合などがそれに該当します。
ただし、こうした突発的に飼い主さんを噛んでしまった場合は、一時的なショックや痛みなどが理由として挙げられるため、常習化して噛みついてくる心配はまずありません。
この場合にはまず、愛犬の状況や状態を見極め、何か異変を感じるような時には動物病院を受診しましょう。
ペット先進国イギリスは犬の攻撃行動に理解的
2010(平成22)年と少し古いデータにはなりますが、ペット先進国として知られるイギリスでは、犬の人に対する攻撃行動調査で、日本人とイギリス人の考え方の比較を取ったデータが存在します。
この調査では、まずイギリス人と日本人の対象者を以下の通りに選出、調査の対象としました。
▽【イギリス側の対象者】 |
▽【日本側の対象者】 |
・リンカーン大学の犬飼養スタッフ ・犬のトレーニングクラスの飼い主 ・公園で散歩している飼い主 計11名 |
・札幌の動物病院 ・北海道学部獣医学部動物病院 ・ドッグカフェ等にいた飼い主 計53名 |
そしてこれら調査では、インタビュー形式で、事前に準備した質問内容に対する自由な回答、目的に添った答えの導き、必要に応じた質問の追加、うち4人の対象者には書く質問などを用意して、新たな結果が生まれないと判断した時点でインタビューを打ち切る基準を設けました。
ちなみにインタビュー時間は一人当たり15分~30分でした。
質問は大きく2つの項目を設け、以下のような質問で回答を得た形となっています。
▼【調査に対する質問内容】
①飼い主の犬の飼い方
・飼い主はどのようにして犬を選択したか
・飼い主にとって犬の存在はどういうものか
②犬の人に対する攻撃行動への認識
・飼い主はどのように理解しているか
・飼い主はどのように防御すればよいと考えているか
さて、この結果で得られた内容では、まず①に対する考えによる違いとして、日本人飼い主はペットショップからの迎え入れが多く、尚且つ見た目の可愛さで選ぶ傾向が強かったのに対し、イギリス人飼い主は、シェルターもしくはブリーダーからの迎え入れが多く、見かけよりも気質や行動で選ぶ傾向が強いことが分かりました。
次に②に対する違いですが、こちらも日本人飼い主は、「子供のような存在」と回答しているのに対し、イギリス人飼い主は「家族の一員」といった違いが見られる結果となりました。
さらに、噛む行動に対する質問では、日本人飼い主は犬が人を噛む責任はすべて飼い主の責任、しつけが十分でないからと答え、またそういった噛む行動を防御する方法は、社会化期のトレーニングや力ずくでどうにかすると答えた人が多かったようです。
一方、イギリス人飼い主は、犬が人を噛む理由は状況によるとし、防御する方法も、多くの人が「なぜそれが起こったかを把握する事」の大切さを指摘したとのことでした。
ペット先進国イギリスから学ぶ噛む犬との向き合い方とは?
さて、これまで犬が飼い主さんを噛んでしまう主なシーンや理由、イギリスの調査結果による違いなどをご紹介してきましたが、いかがでしたか?
基本的に日本人は犬を、ある種の擬人化した存在として接している部分がありますが、イギリス人は犬を犬として接する姿勢が窺えた結果となっていたかと思います。
この結果は、どちらが正しくてどちらが正しくないという訳ではないですが、「犬を理解する」といった観点から物事を見た時には、やはりイギリス人の考え方を参考にすることは、とても大切なことかもしれません。
どんなに可愛く、大人しい賢い犬であっても、犬自身が危機的状況を感じたり、陥ったりしてしまった時には、どういった行動を起こすか分からないものです。
筆者も一飼い主という立場上、愛犬を溺愛し、度々擬人化してしまう傾向が強いため、どこかでしっかりと線引きを行う必要性があるのを自覚しています。
ただ、そうは言ってもやっぱり可愛いものは可愛いと思ってしまうのが、飼い主の性(さが)でしょう。
そのため少なくとも、例えばそれが自分はおろか、相手も傷つける要因になりかねない【噛む】という行為であるなら、その点だけでも【犬=噛む動物】という認識は心得ておくと、安心かもしれませんね。
<参考書籍>
犬のしつけ きちんとブック かみグセ解消
<参考サイト>
犬の人に対する攻撃行動をいかにマネージメントしていくか~日本人、英国人飼い主の考え方の比較調査~
>https://www.jpc.or.jp/animal/wp-content/uploads/2014/12/2010-1-05kikuchi.pdf
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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