人が言葉や画像によって相手に情報を伝えあうように、犬もまた犬との挨拶はお尻や尿からの情報で伝え合うことは多くの方がご存知かと思います。
では、犬は人の感情すらもその匂いで嗅ぎ分けられることが証明されているのはご存知ですか?
この記事では、実験で証明された犬の凄さや今後期待される人との関係性についてまとめました。
<目次>
犬の匂いの嗅ぎ分けはその匂いによって強弱がある

犬の嗅覚が優れていることは多くの飼い主さんがご存知の通りですが、通常、犬の匂いの嗅ぎ分けはその匂いによって差が生まれ、そのために、例えば人の何百倍!とか、人の何万倍!とか、目にする情報によってまちまちだったりしますが、基本的には大体人の5,000倍~1億倍ほどの差が生じています。
そのため、全ての物質について感度が同じという訳ではなく、犬は酢酸であれば、人の1億倍で感じ取り、ニンニク臭であれば大体人の2,000倍で感じ取っているとされています。
ただ、これはあくまで一例であり、例えば犬の感情によってそこまで重要なものでないと判断された時には、ほとんど嗅ぎ分けなどされないかもしれません。
犬は視力がそこまで良くないために、状況を視覚に頼るということは出来ませんが、代わりに犬が敏感に感じ取る匂いは、食べ物や他の動物、好きな人、危険物など様々です。
中でも人の感情の変化で感じ取る匂いについて言えば、人の表情こそあまり注目は出来ないものの、感情を読み取る能力にはとても優れているため、飼い主さんがストレスを感じている状態で着たTシャツと、楽しい状況で着ていたTシャツを愛犬に嗅がせた場合では、ストレスが掛かっていた時に着ていたTシャツの方ばかりを嗅いでいたという報告があります。
では、時と場合によって匂いを感じ取る強さに強弱を加えられる犬に行われた実験内容とはどのようなものなのでしょうか?
詳しい内容をご紹介します。
93.75%の精度で人のストレスを嗅ぎ分ける犬の研究結果とは?

今回結果が示された研究では、感情によって発生する人の匂いの変化を犬が嗅ぎ分けられるかどうかを調べるために、イギリスクイーンズ大学ベルファスト校とニューカッスル大学の研究者が、共同で行った心理的ストレスを感じている人の呼気と汗サンプルを使った実験、研究に関して得られた結果に基づいています。
その具体的な方法というのは、まずはタバコを吸わない非喫煙者を対象に53人のボランティアの中から呼気と汗サンプルをその時感じているストレス度合いのメモと共に採取し、その後確実にストレスを与えるために被験者1人につき2人の実験担当者が、9000から17ずつ引いていく暗算を正確に、かつスピーディーにこなすようにプレッシャーをかけた中で再度上記のサンプルを採取、加えて心拍や血液データのサンプルも採取した上で、最終的にストレスを感じやすかった36人のデータを使って本格的な実験が開始されたところから始まります。
実験の第一段階では、参加した4頭の犬にストレスのかかった被験者のサンプルが入った容器とカラ容器2個を嗅ぎ分けさせ、第二段階では、被験者のストレスあり、ストレスなし、カラ容器1個を嗅ぎ分けさせるという、2段階構造でした。
その結果、4頭の犬のストレスサンプル検知正確度は、平均で93.75%という結果が証明されました。
上記の研究に携わったクララ・ウィルソン氏は
この結果は、犬が人のストレスサンプルを否定的な感情状態が反映した結果だと認識しているかどうかはわからない。実際の生活環境では、犬は状況を理解するためにさまざまな合図を使うと思われる。この研究は、ストレス臭が検出可能であるという証拠を示している。
引用元:https://twitter.com/ClaraHBWilson/status/1575202361957445632
と話しています。
犬の嗅ぎ分けは右と左、どっちで嗅ぐかで感情が左右される

人のストレス臭まで検知してしまう程優れている犬の嗅覚。
しかし、実は犬が匂いを嗅ぎ分ける時、左の鼻の穴で匂いを嗅ぐか、右の鼻の穴で匂いを嗅ぐかによって犬の感情にも変化が生じています。
クララ・ウィルソン氏が語った「犬が人のストレスサンプルを否定的な感情状態が反映した結果だと認識しているかどうかはわからない」というのは、分かりやすく言えば犬自身の感じる感情指標は別物、という意味なのではないかと考えることが出来ます。
どういうことかと言うと、犬は基本的に、ネガティブな感情は右の鼻で感じ取り、ポジティブな感情は左の鼻で感じ取ると言われています。
そのため、犬はまず右の鼻の穴で匂いを嗅ぎ分け、その場所や物に異常がないか、苦手でないかといった、安全確認を行います。(ネガティブ感情)
その後、匂いを嗅いだその場所や物、慣れ親しんだ状況の場合には、徐々に左の鼻の穴で嗅ぐようになります。(ポジティブ感情)
しかし、対照的に、多くの犬にとって苦手な場所となりやすい動物病院の獣医さんの匂いを犬に嗅がせたある実験では、その犬は終始右の鼻の穴で嗅ぎ続けた(ネガティブ感情)結果があったのだとか。
こういった感情は、犬自身が感じる感情の指標を表していると捉えることが出来、上記の実験とは確かに無関係なので、“一緒くたにしない“ウィルソン氏の考えも頷けます。
ただ、こうした犬の感情に関する実験は上記以外にもあるようで、すでに行われている実験では、ホラー映画と楽しい映画を見た時の人の汗を犬に嗅がせた結果、怖い映画を見た人の汗を嗅いだ犬ではストレス行動が見られ、飼い主さんに安心を求める行動が増え、心拍数も上昇したというものでした。
一方で、楽しい映画を見た人の汗を嗅いだ犬では、見知らぬ人に対しても積極的に関わるという行動の違いが見られ、喜びの感情を嗅ぎ取った犬では機嫌が良くなったという結果が示されています。
このように、犬は人の感情を嗅ぎ分けることを得意とし、犬自身もまた、どちらの鼻で匂いを嗅ぐかによって、その感情がネガティブ感情なのか、ポジティブ感情なのかといった違いを窺い知ることが出来ます。
今後期待されている犬と人との関係性とは?

では、この人の『ストレス度合い』を犬が嗅ぎ分けることで今後期待されている犬と人との関係性とは一体何なのでしょうか?
結論から申し上げれば、人の体臭を嗅ぎ分けることで『ストレス度合い』を検知できた今回の研究結果で期待される犬と人との関係性は、“不安や心的外傷後ストレス障害(PTSD)を軽減するために訓練を受ける介助犬に役立つ”というもののようです。
確かに、犬の嗅覚がもたらす凄さは、すでに多く知られている『ガン探知犬』に留まらず、危険物や災害、警察犬などにも活用されています。
現在は視覚的な手掛かりだけで介助犬としての訓練をしている犬も、自分たちが得意とする嗅覚でなんらかの異変や違いを感じ取り、いち早く対応して人から褒められるなら、それに越したことはないかもしれません。
ただ、どんなに犬が匂いで人の『ストレス度合い』を嗅ぎ分けられる能力を備えているからと言っても、その能力に甘んじて人の方が不安や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の改善を試みずにいれば、犬も飼い主さん同様ストレスを抱えて問題行動を見せるかもしれません。
不安や心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関しては、焦らずゆっくりというのが基本ではありますが、そうでないにしても、私たち人も犬同様、良いパートナー関係が継続できるような努力は心掛けてあげたいものです。
まとめ

今回は、犬の凄まじい嗅覚能力によって嗅ぎ分け可能な人のストレス実験結果についてご紹介しましたが、いかがでしたか?
現代の日本は、【ストレス社会】と言われて久しいですが、そのストレスをいつも癒してくれる存在が犬や猫なのは珍しくありません。
しかし、だからこそ私たち飼い主も、愛犬にとって頼れる存在として、常日頃から私たちを支えてくれる愛犬に平穏な毎日を送らせてあげたいものですね。
<参考書籍>
気持ちを知ればもっと好きになる! 犬の教科書
<参考サイト>
Dogs can discriminate between human baseline and psychological stress condition odours|犬は人間のベースラインと心理的ストレス状態の匂いを識別できる
>https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0274143

また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。

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