かつては番犬として外で飼養されることの多かった犬も、現在の飼養状況は室内飼養がほとんどとなりました。
しかし、現在も犬を外で飼養している飼い主さんは比較的多く存在します。
ただ、本当にそのままで愛犬は大丈夫なのでしょうか?
この記事では、犬の外飼いによって影響する寿命や世界のペット先進国の法律から見た今後日本が見習いたい接し方についてまとめました。
現在の犬の飼養状況、飼養場所の実態とは?
今となっては多くの方が犬のお世話は室内飼養で行う傾向が当たり前という意識が強いと思いますが、2022(令和4)年にペットフード協会が行った『全国犬猫実態調査』による調査では、犬の飼養頭数は全国で約705万匹、内屋外でのみ飼養される犬の割合は5.5%という結果が報告されています。
この結果は、約39万匹については未だ屋外飼養がされている試算です。
ただ、同時に過去5年のデータを参照してみると、2020(令和2)年、未曽有のコロナ過で一旦屋外飼養が増えたデータを除けば、2021(令和3)年の8.9%から2022(令和4)年の5.5%というデータは、大幅に屋外飼養が減少していることが分かります。
とはいえ、屋外飼養で愛犬のお世話をしている飼い主さんの数を考えると、動物保護の観点からでは日本が完全に室内飼養になるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。
犬を外で飼うと寿命が縮むの?
昔と比べて年々ドッグフードの質の向上や室内飼養による環境の変化、動物医療の技術の進歩によって、『アニコム家庭どうぶつ白書2019』の調査によれば犬の寿命は2017(平成29)年の時点で平均14歳にまで伸びる結果となりました。
しかし、2022(令和4)年にペットフード協会が実施した『全国犬猫飼育実態調査』では、猫のデータではあるものの、外に出る猫と外に出ない猫とでは、寿命が約1.8%も違っていることが分かっています。
猫の基本飼養環境は、犬以上に室内飼養が基本と考える飼い主さんは多く居らっしゃると思うので、そこから愛猫が自由に屋外、屋内を行ったり来たり出来る状態が作り上げられていることは、よくあると思います。
しかし、そうした時に気を付けたいのが猫の道路への飛び出しや野良猫との交流で移ってしまうFelv(猫白血病ウイルス感染症)やFiv(猫免疫不全ウイルス:別名猫エイズ)、ノミ・マダニの感染です。
このデータはあくまで猫が外に出た場合の寿命と出なかった場合の寿命数値のため、一概にもそれが影響しているとは断言出来ませんが、すくなくとも猫であってもこれだけの差が生まれてしまいます。
そう思うと屋外飼養、室内飼養の観点から、超小型犬や小型犬よりも、中型犬や大型犬の方が日本の住宅事情上仕方ない点があるとはいえ、屋外飼養を余儀なくしている、またはそっちの方が良いとなってしまっている現状は、必然的に寿命が縮まる可能性が十分にあり得ると言わざるを得ない気がしてしまいます。
犬の屋外飼養で考えられる主なデメリット
では、犬を迎えた時からその生涯を終えるまで屋外飼養でお世話していた場合、考えられる主なデメリットとは一体どんなものがあるのでしょうか?考えられるデメリットの例をいくつかご紹介します。
脱走や事故・連れ去りの危険性
犬を屋外飼養でお世話している場合、繋がれている首輪やハーネスから脱走してしまう危険性があります。
特に意外かもしれませんが、日本犬唯一の柴犬は、意外にも首輪がスポッと抜けやすく、ハーネスであってもお尻を上げて後ろに下がろうとする通称【拒否柴】という行為をされると、場合によってはそのまま脱走し、最悪事故にあってしまう可能性があります。
また、屋外飼養だと外見が可愛らしいことで連れ去り事件に巻き込まれてしまう危険性も否めないでしょう。
ノミやダニ、蚊による感染症
犬を飼養していると、毎日の掃除は欠かせません。
そのため、その掃除の頻度を考えて、屋外飼養なら手間がないと思う飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、実際のところ屋外飼養でわんこをお世話していると、ノミやダニ、蚊といった犬にとっては厄介な感染症を持った虫に狙われやすくなります。
中でも蚊が媒介するフィラリア症は、最悪死亡してしまう大変危険な感染症で、感染してしまった場合の治療費は相当な額になる可能性があります。
熱中症や夏バテによる体調不良
昔の日本の夏は、朝晩は涼しく、日中は暑いけれど暑すぎることがない夏という感じだったので、犬を屋外飼養していても、注意が必要なのは変わりませんが、今の夏ほど熱中症リスクは高くなかったと思います。
しかし、現代の夏の暑さは異常なほどで、今や地球温暖化ではなく“地球沸騰化”の時代だともいわれる始末です。
すると、屋外飼養で過ごしているわんこは、昔の日本とは違って熱中症や夏バテのリスクに大いにさらされて、大変危険な状態となってしまいます。
飼い主さんの目が届かない
屋外飼養は屋内飼養と違って当然飼い主さんの目が届きにくくなります。
どんなに可愛がっていたとしても、やはり飼い主さんの目が行き届かない状態での屋外飼養だと、前述した熱中症の危険性やノミ・ダニ・蚊による感染症の危険性、そして、脱走や事件、事故によるケガなどに気づきにくくなってしまいます。
愛犬の異常は早期発見・早期治療が大切になってくるため、屋外飼養によって飼い主さんの目が届かない環境は、危険と隣り合わせという事を覚えておいてください。
他人への危害の恐れ及び愛犬への危害の恐れ
屋外飼養をすることで、意外にも一番厄介と言っても良いかもしれない他人への危害の恐れ及び愛犬への危害の恐れは、屋内飼養であればほぼ心配する事のない項目です。
屋外飼養は、言ってしまえばどんな人でも触れる状態であり、普段どんなにおとなしい愛犬だったとしても、想定外の何かが起こってしまった時には、自己防衛本能から他人にケガを負わせてしまう危険性があります。
人に怪我を負わせてしまった場合には、当然賠償責任が問われることとなりますし、逆に愛犬が怪我を負わされた場合には、適切な治療が必要となるため、屋外飼養で迎えようと思う以上は、こういったリスクをしっかりと考えなければいけません。
世界のペット先進国から学ぶ犬との接し方
では、世界では日本のこうした屋外飼養方法は全くないのでしょうか?
結論から申し上げれば、答えは『NO』です。
ただし、世界の中でもペット先進国と呼ばれるドイツやスウェーデン、デンマーク、アメリカなどは、こういった屋外飼養について一定のルールを設けています。
例えばスウェーデンでは、外でも2時間以上の鎖での繋ぎっぱなしや犬をゲージに入れたままにすることを法律で禁止しています。
また、ヨーロッパ北部に位置するデンマークでは、法律によって犬を外で飼養する事を禁止しています。
ドイツに関しても犬を外で繋いでおくことは違反とされており、ドイツではその違反者はすぐ通報されてしまうと言われています。
そして、アメリカのテキサス州では、2022(令和4)年に、犬を屋外に繋ぎっぱなしにすることを違法とする法律が成立されました。
このように、世界におけるペット先進国では、日本では今はまだ考えられない動物保護に関する法律が多数存在し、それによって動物の自由や尊厳は守られています。
日本も昔に比べれば、随分と殺処分される犬猫は減り、それまでペットショップが迎え入れの基本だったものが保護施設からの迎え入れが増えるなど、徐々に動物福祉の考えは見直されつつありますが、世界のペット先進国は日本よりもずっと進歩しているのが窺えます。
ともなれば、まず私たち飼い主に出来る一番身近な犬との接し方は、特に今もなお中・大型犬で考えられがちな屋外飼養を屋内飼養に切り変えて、それを当たり前にすることなのかもしれません。
まとめ
現在50か国を対象として世界動物保護協会(WAP)が調査、ランク付けした『動物福祉指数』では、ペットだけでなく畜産動物や実験動物などの評価で、日本は下から3番目のEランクです。
今後日本がもっと愛犬や愛猫、畜産動物、実験動物に至る福祉観点が進むことを祈るばかりですね。
<参考書籍>
気持ちを知ればもっと好きになる! 犬の教科書
<参考サイト>
ペットフード協会|『全国犬猫実態調査』|主要指標サマリー
>https://petfood.or.jp/data/chart2022/3.pdf
アニコム家庭どうぶつ白書2019
>https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_201912.pdf
New Texas Law Will Make It Illegal to Chain Up Dogs Outside Beginning in 2022|テキサス州の新法により、2022年から犬を屋外に鎖でつなぐことが違法となる
>https://people.com/pets/texas-law-bans-chaining-dogs-outside/
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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