愛犬に「あそこのボール取ってきて~」と何気なく指差しをすると、その方向へ顔を向けませんか?
または、「そこにおやつが落ちているよ!」と指差しで教えると上手く見つけてくるなど。
我が家の愛犬トープードルのテトも例外ではありません。
愛犬が当たり前のようにやっている、この「指差しジャスチャー」の理解能力、実は他の動物にはなかなか出来ない特殊能力なのです。
頭の良いとされるチンパンジーですら難しいと言われているのです!意外ですよね?
では、なぜ犬は指差した方向に顔を向けられるのでしょうか・・・?
それには人間と長く暮らしてきた歴史が大きく関係しているようです。
それでは詳しく説明しましょう!
<目次>
チンパンジーも難しい指差しジェスチャーを犬が理解できるのはなぜ?
チンパンジーは霊長類の中でも賢く、人間に近い遺伝子を持っていますが、なんと指差しジェスチャーを理解するのは犬との比較研究の結果、難しいとされています。
驚きますよね!我が愛犬はチンパンジーよりも頭がいい??いえいえ、ちょっとお待ちください。
これには少し特殊な理由があるのです。
さまざまな研究で、犬は人間との長い家畜化の歴史の中で、遺伝子変異が起こり、人間と交流しコミュニケーションを取るための社会的認知能力を発達させた可能性があることがわかっています。
その中で、犬は「人との共同作業」に限定すると、その社会的認知能力を他の動物よりはるかに備えてきたと言えます。
そのため、指差しジェスチャーや人間の視線に対する意味を理解できるようになったと言われているのです。
もちろん社会的認知能力や知能はチンパンジーの方が優れています。
こちらの記事を読み始めて、愛犬に指差しジェスチャーしてみたけど反応してくれない~!という飼い主さん、ご安心ください。もちろん環境や経験によって個体差がありますよ!
ただし、犬の指差しジェスチャーに関しては、さまざまな国で研究が行われていて、犬は指差しジェスチャーを理解しているとされています。
人間と犬、種類の違う動物同士がジェスチャーでコミュニケーションを取れるのは実はとてもすごいことなのです。
生まれつきの能力?!野良犬も指差しジェスチャーを理解できる!
犬は指差しジェスチャーが理解できるとは言え、生まれた子犬が人間と共に生活し、その経験の中で指差しジェスチャーを理解できるようになるのでは?と思う方も多いかもしれません。
では、もともと人間と接したことの無い野良犬の場合はどうでしょうか?
こちらに関する研究がありますのでご紹介します。
2019年にインドで人間と関わりの無い野良犬160頭を対象に行われた研究で、不透明なボウルに鶏肉を入れ厚紙で蓋をし、もう片方のボウルには鶏肉の匂いだけ付けて蓋をし、指差しジェスチャーの理解度を測定する実験をしました。
この2つのボウルを地面に置き、手を叩いて人間に注目させ、鶏肉の入っているボウルを指差しします。(※細かい条件は省略します。)
すると、1/2の犬は過去に人間にされた嫌な経験からボウルに近づきませんでしたが、残り1/2の野良犬のうち80%は人が指差したボウルに近づいたという結果でした。
この実験結果で野良犬も指差しジェスチャーに対する理解能力が高く、犬はその能力を生まれつき持っているということが分かったのです。
すごいですね!もはや犬は遺伝子レベルで人間のことを生まれつき理解しているということでしょうか?愛犬の能力にわくわくしてきませんか?
人間はいつから指差しジェスチャーを理解できるのか?
では、犬よりもチンパンジーよりもはるかに頭の良い私たち人間はいつから指差しジェスチャーが理解できるのでしょうか?
乳幼児期の環境や経験で理解の速さは変わりますが、人間が指差しジェスチャーが理解できるのは一般的に生後7か月~1歳6か月頃だと言われています。
私たち人間の成長過程を考えると当然と言えば当然の時期ですが、犬と比べたらとっても遅く感じますね。
(番外編)オオカミに近い古代犬種ほど人に依存しない?
犬の指差しジェスチャーに関する実験の中で面白い研究結果があります。
2022年に麻布大学で発表された研究では、ストレスホルモンであるコルチゾールの産生に関与しているメラノコルチン2受容体遺伝子の変異は犬がストレスを感じずに人間の側に留まり交流することを促進する役割をしているという研究結果を発表しました。
この研究では、624頭の一般家庭の犬に視線や指差しでエサの場所を探させ、理解度や依存度が遺伝子と関連があるか測る実験が行われ、犬が人の指差しジェスチャーを理解する時や、人間を見つめる時にメラノコルチン2受容体遺伝子が関連していることがわかりました。
この実験対象になったのは、【オオカミに近い遺伝子を持つ古代犬種(秋田犬・シベリアンハスキーなど)】と【オオカミから遠い遺伝子を持つその他の犬種】だったのですが、自分では開けられないエサの入っている容器に対する反応(解決不可能課題)を調べたところ、オオカミに近い古代犬種はその他の犬種よりも実験者の人間を見つめる回数が少なく、人への依存が薄い可能性があることもわかりました。
とても面白い実験結果ですね。
指差しジェスチャーを理解できないわけでは無いですが、野生に近い犬種ほど人間の視線やジェスチャーに頼ることが少ないというこの結果。なんだかとてもたくましさを感じます。
まとめ
犬が指差しジェスチャーを理解できるのは訓練されていない野良犬でも可能であり、人間との長い家畜化の歴史があったことが遺伝子に大きく影響していました。
一緒に暮らしていく人間をより理解したいという彼らの思いが遺伝子の変異を起こさせ人間との社会的認知能力を高めているのかもしれません。そう考えると愛犬をさらに愛おしく感じますね。
<参考URL>
PLOS PNE犬 ( Canis familiais ) は命令的指差しを理解するが、チンパンジー ( Pan troglodytes ) は理解しない
>https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0030913
frontiersオリジナル研究論文 放し飼いの犬は複雑な人間の手がかりを利用することができます
>https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2019.02818/full
特定非営利活動法人 動物介在教育・療法学会 イヌの社会的認知研究の動向
>https://asaet.org/data/sc11/2015-04-So.pdf
犬のココカラ
>https://www.green-dog.com/cocokara/
大学プレスセンター 麻布大学イヌがヒトの最良の友になるための遺伝的な手がかりを発見
>https://www.u-presscenter.jp/article/post-48314.html
<参考書籍>
いぬ大全304 藤井康一(著)
フラワーアレンジメント講師
2人の息子の母
実家でパグの出産、育児を経験し、
現在はトイプードルの男の子と暮らしています。
みなさまの愛犬にお役に立てる情報を発信していきたいです。
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