ここ数十年で「子犬の時に社会化をさせることが大切」という事が広く認知されるようになりました。
社会化をしっかり行うことで問題行動を減らしたり順応性を高めることができる一方で、間違ったトレーニングを行ってしまうと、かえって子犬の体と心を傷つけてしまうこともあります。
子犬にそんな思いをさせないために、今回は「失敗しがちな子犬の社会化トレーニング」の例を「5つ」ご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
<目次>
「子犬の社会化」ってなんですか?
失敗しがちな社会化の例をご紹介する前に、まず「子犬の社会化」について復習をしておきましょう。
「子犬の社会化」とは一体なんでしょうか。
子犬の周りは今まで見たことも聞いたこともない音や物であふれています。
そして子犬はそれが「安全なのか」「危険なのか」の判断がつきません。
そのため、初めて見る物や音に対して警戒したり、怖がったりすることがあります。
これを「そんなに怖がらなくて大丈夫だよ」と教えていくのが、社会化です。
子犬自身が「これって怖くないんだ」という経験を繰り返すことによって自信がつき、初めての事にも動じないタフな精神力を身につけていくことができます。
つまり社会化では、出会った物や人に対して「どう良い印象を子犬に持たせるのか」が大事なポイントになります。
それを踏まえて、失敗しがちな社会化の例をみていきましょう。
失敗しがちな子犬の社会化①「子犬が良い思いをしていない」
▼子犬が良い思いをしていない例
・電車に慣れさせようとしたが、踏切の音や電車の大きさに驚いてしまった
・人に慣れさせようとしたが、急に触られて子犬が後ずさった
・掃除機に慣れさせようと近づけたら、子犬が走って逃げてしまった
子犬にいろいろ経験をさせることは大切ですが、何でも経験させれば子犬が勝手に慣れていくわけではありません。
「驚いてしまった」「後ずさった」のであれば、犬の中には「嫌な印象」として残ります。
先ほどお話ししたように、経験させようとしたことに対して「良い印象」を持ってもらわないと、社会化の意味がありません。
もし電車の音に慣れさせたいのであれば、「部屋の中でオヤツをあげながら踏切や電車の音を聞かせる(小さい音に慣れたら少しずつ音を大きく)」「電車から離れた所でオヤツを食べる」など、子犬が「これって平気なんだ」と思える環境を慎重に作って学習させてあげることが大切です。
失敗しがちな子犬の社会化➁「何回体験させたからOK」
失敗しがちな社会化の中に、「何回やったから社会化は大丈夫」と思ってしまうことがあります。
先ほどもお話ししたように、社会化は子犬の中で「これって平気なんだ」と学習できていなければ意味がありません。
そのため、「何回やったから」「たくさん練習したから」と人側が思っていても、子犬が「まだ不安だなぁ」と思っていたら、まだまだ時間をかける必要があります。
社会化は「何回やったから完璧」というものではないんですね。
そのため、人側の判断で「もう大丈夫だろう」と勝手に社会化を終わらせてしまうと、「あれ?社会化したはずなのになんで?」という事態に陥ってしまいます。
失敗しがちな子犬の社会化➂「子犬の手助けをしていない」
▼子犬の手助けをしていない例
・他の犬と挨拶をさせたら子犬が後ずさったが、練習だと思ってそのままにしていた
・子供が大声をあげたときに子犬が怖がったが、慣れさせるために何もしなかった
社会化は、嫌なことや怖いことを自力で乗り越えていくための訓練ではありません。
特に子犬は経験が少ないため、嫌なことや怖いことに直面した場合の対処法がわかりません。
もしここで「自分を守るためには攻撃しなきゃ」と学習してしまったら、この先不幸になるのは子犬と飼い主さんです。
そんな思いをさせないためにも、社会化をするときは、必ず飼い主さんが子犬の手助けをしてあげましょう。
例であげたように、他の犬と挨拶をさせたときに子犬が後ずさったり一方的に追い詰められている場合には、距離をあけて一旦中断させてあげましょう。
また、子犬が怖い思いをしたかなと感じたら、対象と距離をあけてオヤツを与えて落ち着かせ、悪い印象を残さないようにしましょう(次に同じことをする場合は慎重に)。
失敗しがちな子犬の社会化④「子犬のペースに合わせていない」
▼子犬のペースに合わせていない例
・掃除機に慣れてほしいのに子犬がなかなか近づかないので、無理やり掃除機に近づけた
・相手の犬のにおいは嗅ぐのに自分のにおいは嗅がせないので、子犬を押さえて相手の犬に嗅がせた
社会化で大切なのは、子犬のペースです。
自分のタイミングで近づいたり離れたりしながら「これって本当に安全なの?」というのを確かめていきます。
それを飼い主さんのペースに合わせてしまうと、子犬が「怖い」「嫌だ」と思ったタイミングで逃げることができません。
そうすると「嫌な経験」として子犬が学習をしてしまいます。
社会化をする際は、飼い主さんのペースではなく、子犬のペースに合わせて勧めていきましょう。
失敗しがちな子犬の社会化➄「子犬の時だけ社会化を行う」
社会化は子犬のときだけ必要と思っていませんか?
子犬のときは社会化に熱心に取り組んでいたけれど、「落ち着いてきたし、もう大丈夫だろう」と急に社会化を止めてしまうと怖がりになってしまうことがあります。
また、最初は好きだったけど何かのきっかけで急に嫌いになる、苦手になるということもあります(例えば、来客に尻尾を振っていたのに急に吠えかかるようになってしまった)。
つまり社会化は子犬ときだけ一生懸命頑張れば良いものではなく、生涯に渡って飼い主さんが手助けをしつつ行っていくものということですね。
子犬の時期はいろんなことに順応しやすいというのはありますが、成長してからも社会化を続けていくことが大切です。
子犬にとって「社会化が大事」というのはよく聞きますが、間違った対応をすることによって子犬の心を傷つけたり、社会化を失敗してしまうこともあります。
一人だと難しいなと感じる場合は、必ず専門家の手を借りるようにしましょう。
今回ご紹介した内容がお困りごとの参考になれば幸いです。
<参考書籍>
こころのワクチン 村田香織 (著)
ドッグ・トレーナーに必要な「子犬レッスン」テクニック ヴィベケ リーセ (著), 藤田 りか子
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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