わんちゃんに食事をあげる際、「おあずけ」させていますか? テレビの動物番組で「おあずけ対決!」というものも時々見かけますよね。食べ物を目の前にして長い時間我慢できることって、そんなにすごいことなのでしょうか?
「おあずけ」をさせることにどのような意味があるのか、わんちゃんとの関係性においてどのような影響があるのか、考えてみました。
なぜわんちゃんに「おあずけ」をさせるの?
ごはんの器を置いて、食べるのを我慢させる「おあずけ」。わんちゃんと暮らす方なら、一度はやったことがあるかもしれませんね。しかし、テレビ番組で長時間おあずけをさせて、成功したわんちゃんは「おりこう」「飼い主に忠実」などと取り上げられているのを見ると、個人的にとても違和感を抱いてしまいます。
わんちゃんはただ、ごはんを食べたいがために言うことを聞いているだけであり、それはおやつで釣ってオスワリをさせたりフセをさせたりすることと何も変わりはありません。食べ物がなければ言うことを聞かないのであれば、飼い主さんに忠実であるとは言えないですよね。
確かに、わんちゃんに食べてほしくないものや危険なものを口にすることを避けるために「飼い主さんの許可なく食べ物を口にしない」ということをルールとする考え方もあります。
しかしそうではなく、むやみに「おあずけ」をさせられているわんちゃんは、じっと食器を凝視し続けて、飼い主さんのことは目に入っていないでしょう。食べようとすると止められる(または怒られる)から我慢しているだけで、わんちゃんの頭の中は飼い主さんではなく目の前の食べ物でいっぱいなのです。これでは「しつけ」と呼べないだけではなく、わんちゃんとの関係に良くない影響を与える恐れも出てきてしまいます。
関係を悪化させる!? 「おあずけ」させることのデメリットとは?
わんちゃんに長時間「おあずけ」をさせることで、どのようなデメリットがあるか考えてみましょう。
まず、当然のことながら、食べ物を前にして我慢することでわんちゃんには大きなストレスがかかります。特に、1日の中で一大イベントとなる食事は、準備をしている時からわんちゃんはずっと待っているのです。「ようやくごはんの時間だ!」と大喜びしたのに長いこと「おあずけ」をさせられたら、期待が大きかった分ストレスになるのは明らかですよね。
また、長い時間「おあずけ」をさせられることで、食べ物に対する執着心が強くなると考えられます。そしてそれは食べ物を守るための攻撃につながりかねません。
子犬の時期の基本的なしつけ、パピートレーニングとして、「物を守らない」ということを教えるために、食事中、器を手で持って食べさせたり、食べている途中で美味しいものを追加したりということをします。そういった練習をしないと、食事中に人が近づいただけで怒るようになるわんちゃんも少なくないからです。
わんちゃんにとって、食べ物を守るというのはとても自然で本能的な行動ですので、食事時に不信感を与えることが攻撃性につながると考えてもおかしくありません。
むやみに「おあずけ」をさせることのもうひとつのデメリットとして、早食いの危険性が高まるということがあります。食べたい気持ちをさんざん我慢した後に「よし!」と言われたわんちゃんは、ものすごい勢いでごはんを食べますよね。普段から食欲旺盛で早食いのわんちゃんであればなおのこと、まるで掃除機のように食事を吸い込むのではないでしょうか。
早食いをすると同時に空気を飲み込む量も増えるため、胃拡張や胃捻転の危険性が高まってしまいます。胃捻転は致死率が高く、発症すると1分1秒を争う非常に危険な症状ですから、わんちゃんにはできるだけ落ち着いて食事をしてもらいたいものです。
意味のある「おあずけ」とは?
長時間にわたって食べ物を我慢させる「おあずけ」にはデメリットしかないということをお話しましたが、使い方によっては有益な「おあずけ」もあります。それは、わんちゃんがごはんを食べる勢いが良すぎて、器に飛びかかったり、前足を突っ込んだり、器をひっくり返してしまったりする場合です。食事のたびにそんな状態では、まともに食べることもできませんよね。ごはんの入った器を目の前にして、ほんの少しだけ落ち着かせるために「おあずけ」をさせるのであれば効果的でしょう。
また、食べこぼすわんちゃんの場合は器の下に敷物を敷いたり、お耳が長くて食器に入ってしまうわんちゃんにはスヌードをつけたりすることがありますが、その準備をする間だけ、食べるのを待ってもらうというのも、「おあずけ」の理想的な使い方だと思います。
いずれの場合もわんちゃんに意味もなく我慢をさせるのではなく、落ち着いて食事をとったり、飼い主さんの手間を減らしたりするために必要な時間です。同時に「慌てなくてもすぐに食べられる」という安心感を身につけてもらう良いトレーニングの時間にもなることでしょう。
昔から定番の「おあずけ」、その目的とわんちゃんへの影響を考えてあげたいものですね。
長年犬と旅をしてきたノウハウが誰かのお役に立てればうれしく思います。
最新記事 by 希 (全て見る)
- わんちゃんと遊びに行くなら人が少ない早朝がねらいめ!愛犬と「朝活」してみませんか? - 2022年12月6日
- 愛犬と車山高原ハイキング!日本アルプス360度パノラマ大絶景の旅<長野県諏訪市・茅野市> - 2022年12月4日
- 愛犬と一緒に紅葉を楽しもう!標高1,542メートルの小高い丘「美し森(うつくしもり)」ハイキング<山梨県・北杜市> - 2022年11月6日
- 想像以上の満足感!森の散歩道やカフェ、キャンプ場・・・愛犬と1日楽しめる「信州大芝高原」<長野県上伊那郡南箕輪村> - 2022年11月4日
- 友好的すぎるのも考えもの!?本当の意味での「犬の社会化」とは。 - 2022年9月30日