新しく家族が増えることはなによりも嬉しいことですね。
でもお家で犬を飼っている場合、「赤ちゃんと仲良くできるかな?」「どんな準備をしたらいいんだろう?」と不安に感じることも多いでしょう。
そこで今回は、犬がいる家庭で赤ちゃんを迎えるときに大事なことを「妊娠中」・「出産後」・「育児中」のシーンに分けてご紹介します。
「妊娠中」に犬との生活で気をつけたい5つのこと
お腹に赤ちゃんがいるとわかったら、犬との生活で気をつけること、準備しておくことはどんな事があるでしょうか。
ポンイトを「5つ」にまとめて紹介します。
▼「妊娠中」に犬との生活で気をつけたい事
①犬との接触はOK、でも過度な接触はNG
➁噛みつきなどの傷に要注意
➂猫の糞や生肉に要注意
④犬にも心の準備をさせてあげる
➄犬の世話の分担を決める
①犬との接触はOK、でも過度な接触はNG
妊娠をしても犬のとの接触を控える必要はありません。
しかし「犬とキスをする」「口移しで食べ物を与える」「触った後に手を洗わない」などの過度な接触は控えるようにしましょう。
動物が持っている菌などが原因で起こす病気を「人獣共通感染症」といいます。
▼人獣共通感染症の一例
・パスツェラ症 ・・・犬や猫の口にいる菌が原因で人に感染、皮膚の化膿やリンパ節が腫れる
・サルモネラ菌 ・・・犬や猫の糞にいる菌、人に感染すると嘔吐や下痢を引き起こす
・皮膚糸状菌症 ・・・皮膚症状が出ている箇所に接触、頭や手などに赤い円形の発疹が出る
※どれも「接触後に手を洗う」「犬を治療する」「過度に接触をしない」などで人への感染を防げる病気です。
妊娠中は免疫力が低下して感染症にかかりやすくなると言われています。
過度に犬を遠ざける必要はありませんが、「犬を触った後は手を洗う」「犬に口を舐めさせない」など、基本的な感染予防をしっかりと心がけましょう。
➁噛みつきなどの傷に要注意
犬に噛みつかれる、引っ掻かれるなどの怪我には十分注意しましょう。
傷口が細菌感染を起こして腫れたり膿んでしまった場合、妊娠しているため使用できるお薬が限られてきます。
また、先ほどお話ししたように妊娠中は免疫力が低下しがちなので、傷が治りにくくなるかもしれません。
妊娠中の怪我には十分注意すると共に、犬を興奮させすぎないなど、犬の噛みつきや引っ掻きが起きやすい状況を作らないようにしましょう。
➂猫の糞や生肉に要注意
妊娠中に気をつけたい感染症として有名なのが「トキソプラズマ症」ですね。
▼トキソプラズマ症とは?
「トキソプラズマ」と言われる原虫の寄生によって起こる病気です。
「感染した猫の糞」「生の豚肉や羊肉」「土」を介して人に感染します。
無症状のこともありますが、リンパ節の腫れや発熱のほか、妊娠中は胎児へも影響を及ぼします(脳や肝機能に障害など)。
猫の糞や生肉を介して感染というのはよく聞きますが、犬に関してはどうなのでしょうか。
トキソプラズマ症は犬にも感染する病気ですが、猫ほど宿主には向いていないため、基本的には無症状で糞にトキソプラズマが出ることはありません。
ただ家庭内にトキソプラズマを持ち込ませないことが大事なので、犬を猫の糞がありそうな場所に接触させない、肉は加熱して食べる(犬も人も)、散歩後は犬の手足をしっかり拭く、飼い主さんは土を触ったら必ず手洗い、などを心がけましょう。
④犬にも心の準備をさせてあげる
人はこれから家族が増えるという事がわかりますが、犬にはわかりません。
犬にも「これから家族が増えていくんだよ」と心の準備をさせてあげましょう。
▼犬の心の準備の一例
・赤ちゃんと犬のスペースを区切る(犬が大好きな場所は残す)
・ベビーベッドを設置する
・赤ちゃんの鳴き声を小音から聞かせておく
・お腹に乗る癖、飛びつき癖を止めさせる
急に移動できるスペースが少なくなったり、今までなかった見慣れない物を設置すると犬もびっくりして警戒してしまいます。
ただでさえ赤ちゃんが家に来ると、犬の生活も大きく影響をうけます。
赤ちゃんが家に来る前から、スペースを区切っておく、ベビーベッドを設置するなど、犬にも環境に慣れる時間を作ってあげましょう。
➄犬の世話の分担を決める
赤ちゃんの世話をしていると、犬の世話やかまってあげる時間はどうしても減ってしまいます。
しっかり家族内で犬の世話の分担を決めておきましょう。
特に今まで当たり前だった生活習慣はなるべく変えないようにしてあげてください。
今まで自分だけに向けられていた愛情や関心や時間が、別の所に向けられるので犬は非常に不安です。
「あなたも今までと変わらず大事だよ」と伝えて接する時間を確保してあげましょう。
体力や時間的に難しいようなら、ペットシッターさんや両親など他の方に協力してもらうのもひとつの手です。
「出産後」に犬との生活で気をつけたい4つのこと
妊娠中に大事なことと準備しておくことを「5つ」お話ししました。
では「赤ちゃんを出産した後」に犬と暮らしていくうえで、気をつけていくことはなんでしょうか。
ポイントを「4つ」にまとめました。
▼「出産後」に犬との生活で気をつけたい事
①赤ちゃんの声や匂いに慣れさせる
➁犬と赤ちゃんの会わせ方
➂犬の心に寄り添う
④衛生面に注意する
①赤ちゃんの声や匂いに慣れさせる
赤ちゃんが生まれたら、さらに共同生活への準備を整えてあげましょう。
赤ちゃんの匂いのついた産着やタオルを家に持ち帰って、犬に匂いを覚えさせてください。
しばらく産着をベビーベッドやソファーに置いておくと、犬がその環境に慣れてくれますし、赤ちゃんと会ったときに「この匂い知ってる!」と警戒心を解きやすくなります。
また、赤ちゃんの鳴き声を録音して、小音から聞かせて慣れさせることも有効です。
➁犬と赤ちゃんの会わせ方
赤ちゃんと愛犬を最初に会わせるときは緊張しますね。
もし可能であれば最初に会わせるときは、家の外で会わせることをオススメします。
家は犬の大事な縄張りなので、初めて入ってくる人には警戒心を抱きます。
家の外で対面させて、一緒に家の中に入ると警戒心を少し和らげることができます。
犬にリードをつけた状態で夫婦どちらかが持ち、赤ちゃんを抱っこして犬の様子を見ながら対面させてください(犬は散歩を済ませておくとベスト)。
➂犬の心に寄り添う
赤ちゃんが来ると犬の生活スタイルはガラっと変ってしまいます。
今までと違う環境に慣れなくて、ストレスからトイレの失敗をしたり、赤ちゃんに吠えかかるといったことが起きるかもしれません。
でもけっして犬をきつく叱ることはやめてください。赤ちゃんに対して「嫌だなぁ」という感情をより強くしてしまいます。
赤ちゃんが鳴き出したら犬にオヤツをあげる、赤ちゃんに話しかけたら犬にもスキンシップをとるなど、犬の不安な気持ちに寄り添って安心させましょう。
④衛生面に注意する
赤ちゃんはミルクの匂いがするので、犬が赤ちゃんの顔を舐めてしまうかもしれません。
最初にお話ししたように、犬の口には人にも感染する菌がいます。
赤ちゃんを寝かせるときは犬が届かない場所にする、犬のをおもちゃを赤ちゃんが口に入れないようにするなど、衛生面には十分注意してください。
「育児中」に犬との生活で気をつけたい3つのこと
赤ちゃんが大きくなってくると、行動も活発になりますね。
それでは、育児のなかで犬と過ごすときに気を付けることはなんでしょうか。
▼「育児中」に犬との生活で気をつけたいこと
①犬が安らげる場所を作る
➁犬のストレスサインを見落とさない
➂子供に犬との接し方を教えていく
①犬が安らげる場所を作る
子供が大きくなると行動範囲も広がり、動きも活発になります。
犬にも1匹でホッとできる場所や時間が必要なので、赤ちゃんと犬の場所を区切る、ケージやクレートを置いておくなど、犬が安らげる場所を確保してあげてください。
➁犬のストレスサインを見落とさない
悲しいですが、犬による子供の口傷事故はあとをたちません。
原因のひとつに犬の「ストレスサイン」の見落としがあります。
犬にも触ってほしくない場所や触ってほしくない物があり、それを一生懸命サインで伝えています。
それが守られないときに「やめて!」と口が出てしまうことがあるので、犬にストレスサインが出ていないかよく観察して、いち早く気づいてあげるようにしましょう。
➂子供に犬との接し方を教えていく
赤ちゃんがある程度、分別がつく年齢になったら、犬との接し方を少しずつ教えていきましょう。
「犬が食事をしているときは近寄らない」「犬にも触ってほしくない場所がある」「寝ているときに触らない」など、少しずつ犬の気持ちを考える練習をしていくと、犬と子供が良い関係を築いていく手助けをすることができます。
赤ちゃんと犬がいる家庭で注意したいことをシーン毎に紹介しました。
色々と注意点を書きましたが、飼い主さんも不規則な生活でいっぱいいっぱいな中で、赤ちゃんも愛犬のことも頑張らなきゃと思うと、飼い主さんが追い詰められてしまいます。
赤ちゃんも愛犬も飼い主さんの心の変化を敏感に察知するので、まずは飼い主さんが無理をしすぎず、心のゆとりを持てる環境作りを心がけてくださいね。
<参考URL>
「妊婦さん!気をつけて」 妊娠中に気をつけたい感染症 埼玉県庁
>https://www.pref.saitama.lg.jp/a0704/boshi/ninshintyukansenyobo.html
妊娠中もペットと仲良く暮らす方法
>https://jp.moony.com/ja/tips/pregnancy/pregnancy/how-to-spend/pt0299.html
<参考書籍>
動物看護のための小動物寄生虫学 佐伯 英治 (著) ドッグ・トレーナーに必要な「子犬レッスン」テクニック ヴィベケ リーセ (著), 藤田 りか子
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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