犬が大好きな方は、いつまでも犬と一緒に暮らしたいと願いますね。
でもふと、「何歳くらいまで犬を飼っていられるのかな?」と考えたことはありませんか?
「高齢者になっても犬を飼いたい」「定年後に犬を飼いたい」という方は、この記事を読んで今一度「高齢で犬を飼うということ」について考えて頂ければと思います。
<目次>
60歳以上でも「ペットを飼い続けたい」と答えた方は9割
ペットの霊園などを検索できる「メモリアルなび」がペットを飼っている60歳以上の方にアンケートを実施しました。
「今後もペットを飼い続けたいか」という質問に対し、112人が下記のように回答しました。
●飼い続けたい 89.0%
●飼い続けたくない 10.1%
実に9割近くの方が「ペットを飼い続けたい」と回答しました。
ペットと過ごす時間はかけがえのないものなので、可能な限り飼い続けたいと願う方が多いというのもうなずけます。
しかし、「高齢者が犬を飼い続けること」について考えさせられる、ショッキングなデータがあります。
犬の所有権放棄が多いのは60代と70代
少し古いデータになりますが、2013年に動物臨床医学会で「犬の飼育放棄」に関する調査結果が発表されました。
その調査によると、「保健所や動物愛護団体」が犬を引き取った理由は大きく2つに分かれるそうです。
保健所などが犬を収容した理由
●公園や山などで発見された、飼い主不明 73.3%
●「飼えなくなった」という理由で持ち込まれた、所有権放棄 26.3%
問題はこの「所有権放棄」の方です。
犬の所有権を放棄した方の年齢を調べると、下記のような結果になりました。
犬の所有権を放棄した年齢(多い順)
60代 31.5%
70代 24.8%
50代 18.9%
40代 14.3%
30代 7.6%
50代を境に一気に数値が高くなり、犬の飼育を諦めた方は60代が一番多いという結果になりました。
最初のアンケートでは多くの方が「60歳以上でもペットを飼い続けたい」と回答していましたが、実際に犬を手放す年代を調べてみると60代や70代が多くなっています。
どうして60代や70代の方が犬を手放してしまうのでしょうか?
所有権放棄の理由
1位: 飼い主の死亡・病気・入院
2位: 犬の問題行動
3位: 飼い主の引っ越し
4位: 犬の病気・痴呆・高齢
5位: 子犬の出産
「飼い主さんが亡くなった」「病気や入院になって飼えなくなった」という理由が一番多くあげられていました。
50代以降になると病気や入院する方も少なくないため、それをきっかけに「犬を飼い続けられない」と手放してしまう方が増えてしまうようです。
この結果を見ると、「もっと早く対策できたのでは?」と思う方も多いのではないでしょうか。
しかしペットを飼っている60歳以上の方(112人)にアンケートを取ったところ、ペットの世話ができなくなったときの事を考えて準備できている方はわずか2割でした。
ペットの世話ができなくなったときの事を考えているか?
●まだ考えていない 60%
●考えているが準備はできていない 20%
●考えて準備はできている 20%
「まだ考えていない」「考えているが準備できていない」をあわせると8割の方が「準備不足」ということになります。
年齢が高くなると犬を手放す気がなくても、結果として所有権放棄を生み出す可能性があるということは重く受け止めなくてはいけませんし、早いうちから準備をすることが大切ですね。
寿命だけではない?!保護団体が高齢者譲渡を不安視する理由
高齢になると、「飼い主さんの入院などで犬を手放す方が多い」ことがわかりました。
実際に「犬の方が長生きしちゃうから」という理由で、飼うことを諦める方もいます。
もちろん寿命も大切なのですが、高齢で犬を飼うのは別の心配事もあります。
犬を飼う手段はペットショップ以外に、保護団体からの譲渡がありますね。
保護団体は多くの場合、高齢者への譲渡をお断りしていたり、難色を示すことがありますが、その理由をご存じでしょうか?
犬の飼育放棄に関する調査によって、その理由が浮き彫りになりました。
高齢者への譲渡を不安視する理由
●犬のトレーニングには瞬発力が必要だが、体力にあわないケースが多い
●子犬から飼わないと懐かないと思い込んでいる
●飼育書を読まずに、昔ながらの飼い方をしようとする
●ドッグトレーナーや動物病院にいくのを億劫がる
●飼育経験があると他の方のアドバイスを聞かない
譲渡したとしても上手くしつけきれなくて保護団体に戻したり、譲渡を断られた方がペットショップで犬を飼って新たな飼育放棄を生み出してしまうという現実があるようです。
でもこれは一部の身勝手な方だけの話ではなく、私たちが高齢で犬を飼う時にも出てくる問題です。
・犬をトレーニングをしようとすると、瞬発力や持久力が必要になります。
・病気やしつけ方法は年々アップデートされているので、勉強やこまめな情報収集はかかせません。
・犬の問題行動予防のためには、運動や十分な散歩、密なコミュニケーションも必要です。
年齢が高くなると、体が充実していた頃と同じ飼い方はできません。
自分の体力や気持ちを優先させる飼い方をすると、犬にとっては最善ではない可能性があるのです。
新しく犬を迎えられる最後の年齢は?
今までの事を踏まえると、新しく犬を飼える最後の年齢はいくつになるのでしょうか?
犬の寿命は長くて20年ほどなので、50代前後で新しく犬を迎えようと思うと、下記をことをしっかりと考えて準備する必要があります。
50代前後で犬を飼う前に考える「10カ条」
①10年後、自分が同じ生活をしていられるか
➁自分に何かあった場合に、犬の面倒を見てくれる人はいるか
➂日常的に犬の世話を手伝ってくれる人はいるか
④自分の体力や判断力などに犬の年齢や犬種は合っているか
➄犬が病気や手術をした場合、支払える金銭的余裕はあるか
⑥これから(も)犬のことを勉強していく気概はあるか
➆犬の老後の世話をできるのか
⑧犬に問題行動などが出た場合、受け入れて改善していく覚悟があるか
⑨犬の最後を看取る勇気があるか
➉他の環境でも生きやすいようにしつけをできるか
特に50代以降に新しく犬を飼う方は、「➉のしつけ」に力を入れてください。
飼い主さんにべったりで過ごしていると、他の方から与えられたご飯を食べなかったり、飼い主さんから離れて生活することができなくなります。
いざ自分が犬の面倒を見れなくなったときに、残された犬が非常に生きにくくなるのです。
「他の人にご飯をもらう練習」や「他の犬を気にしないでいる練習」など一緒にいる間にさまざまな経験を積ませて、他の環境でも生きていける心の余裕を育ててあげてください。
今は高齢化社会と言われ、これからますます高齢で犬を飼う方も増えてくるでしょう。
望まぬ飼育放棄を生まないために、高齢で犬を飼うことの課題をしっかりと受け止めて判断してほしいと思います。
<参考文献>
犬の飼育放棄問題に関する調査から考察した飼育放棄の背景と対策
>http://hasc.sakura.ne.jp/1311-repo.pdf
一人暮らしでペットの世話ができなくなった場合のことを考えていない方は6割!
>https://www.aeonpet-memorial.com/column/pet-column/care/
<画像元>
Unsplash
写真AC
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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