「わんちゃんがチョコレートを食べると危険!」というのはよく知られていますね。
なのに、「チョコレートの誤飲事故」を調べてみると、毎月のように事故が発生しており、事故の件数が減っていないことがわかります。
危険だと認識されているのに、事故が減らないのはなぜでしょう?
バレンタインが近いこの時期、事故を起こさないために大事なことをしっかりと覚えておきましょう!
<目次>
犬のチョコレート誤飲事故が減らないのはなぜ?
下の3つの図は、犬のチョコレート中毒の保険請求件数を月別にまとめたグラフです。(アニコム損害保険株式会社から抜粋)
上から順に、2009年・2013年・2016年のデータです。
少し古いデータもありますが、3つのグラフを見て気づくことはありませんか?
3年分のグラフから読み取れること
●チョコレートの誤飲事故は減っていない
●チョコレート中毒は毎月多く起こっている
●2月頃に多くなる傾向にある
3年分のデータを見ても、チョコレートの誤飲事故は特に減っておらず、バレンタインがある2月頃に事故が増える傾向にあることがわかります。
チョコレートが危険だと認知されているのに、事故がなかなか減らない理由はなんでしょうか?
答えは、実際に事故を経験した飼い主さんの言葉の中にありました。
チョコレートにかぎらず、犬の誤飲事故でよく聞く飼い主さんの言葉は、「ちょっと目を離した隙に」と「まさか」です。
わんちゃんは嗅覚も鋭いですし、欲しいと思ったものを手にするためには、予想外の行動も起こします。
事故がなかなか減らない背景には、「わんちゃんが予想外の行動を取ったこと」が大きく関わっているのです。
犬のチョコレート誤飲事故を防ぐには?
わんちゃんのチョコレートの誤飲事故が減らない背景に、「わんちゃんの予想外の行動」がある事がわかりました。
では、どうやって事故を防いだらよいのでしょうか?
大事なことは「3つ」あります。
誤飲を防ぐために大事なこと
①「目」に入らない所ではなく、「手」が届かない所に保管
➁扉にロックがかかるところに保管
➂人がすぐ取れる場所(テーブルや棚など)に置かない
事故の多くは目を離した隙に起こりますが、ずっとわんちゃんから目を離さないのは難しいですね。
そのため、わんちゃんとチョコレートを同じ空間に置かないことを意識しましょう!
鞄や袋の中に入れていると、嗅覚で見つける恐れがありますし、テーブルや棚だとジャンプをしたり椅子にのぼって食べてしまうことがあります。
オススメなのは、冷蔵庫に保管して食べる分だけ取り出すことです。目を外した隙に事故を起こさないように、すぐに食べてしまいましょう。
STOP誤飲新聞
>https://www.anicom-sompo.co.jp/prevention/stopgoin/pdf/130627.pdf
犬の「誤飲事故」を減らすプロジェクトをアニコム損害保険(株)が立ち上げています。「家庭内のどこで事故が起こるのか」や「事故の実例」を紹介しているので、とても参考になりますよ。
犬のチョコレート中毒 死亡例はあるの?
さて、わんちゃんのチョコレートの誤飲に関して、下記のことがわかりましたね。
●事故が減らない背景は犬の思いがけない行動
●事故防止には犬とチョコレートを同じ空間に置かない事
では、注意していたのに愛犬がチョコレートを食べてしまったらどうしましょう。
一番心配なのが、チョコレートで中毒を起こして亡くなることだと思います。
しかし、「犬・チョコレート・死亡例」で検索すると、あまり事例は出できませんし、中には症状も出ずに元気だったという書き込みもあります。
わんちゃんがチョコレートを食べても亡くなることはないのでしょうか?
【獣医師が経験した異物と死亡例】
上の表はアニコム損害保険(株)が「犬の誤飲事故」に関して「獣医師172人」に実態調査を行った結果です。
毒物の7番目に「チョコレート」がありますね。
それを見ると、「獣医師141人(約82%)」がチョコレート中毒の診療経験があり、その内「9件が死亡」と報告しています。つまり、チョコレート中毒で亡くなってしまうこともあるのです。
致死率はそこまで高くないですが、チョコレートの摂取量や体調、個体差によってリスクは変わってきます。(なにより事故件数自体が多いです)
では、どれくらいの量を食べると、わんちゃんが危険に陥るのでしょうか?
犬がチョコレートを食べてしまったら?【危険値と症状】
わんちゃんがチョコレート中毒をおこすと、最悪死亡してしまうことがわかりました。
●どれくらいの量を食べると危険なのか?
●中毒をおこすとどんな症状が出るのか?
この2つを詳しくみていきましょう。
犬はどれくらいチョコレートを食べると危険なの?
犬がチョコを食べてはいけない理由
チョコの原材料(カカオ)には「テオブロミン」という成分が含まれています。犬は「テオブロミン」の分解が遅いため、長時間テオブロミンが体内に残り、中毒症状を起こしてしまいます。
「犬がチョコを食べてはいけない理由」を見るとわかるように、危険値はチョコレートに含まれる「テオブロミンの量」によって決まります。
チョコレートの表示にテオブロミンの量はなかなか記載されていませんが、国民生活センターが「高カカオチョコレート」に関する調査結果を出していたので、そのデータをまとめてみました。
●中毒の症状がでる量→90~150mg/kg
●致死量→250~500mg/kg
上記の数値が目安なので、高カカオであればあるほど、体重が軽ければ軽いほど、わんちゃんが食べたときのリスクは高くなります。
近年は小型犬を飼う方が多いので、チョコレート中毒の危険性がより高いといえます。
調査の品数が多かったので、比較的手に取りやすい商品をまとめました。全て知りたい方は、こちらからご覧ください。
高カカオをうたったチョコレート(結果報告) 国民生活センター
>https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/01/dl/s0114-10j.pdf
チョコレート中毒の症状は?
チョコレートの中毒症状
【軽度】水を多く飲む・息が荒い・よだれが多い
【中度】ふらつく・脈が速くなる・下痢・嘔吐
【重度】けいれんを起こす・昏睡
先ほど中毒症状が出るテオブロミンの量は「90~150mg/kg」とお話ししましたが、軽度な症状は「20mg/kg」程度でも見られるし、「60mg/kg」でもけいれんを起こす可能性もあります。
個体差や体調などの要素もあるため「少量だから症状が出ない」「少量だから重症化しない」というわけではありません。
チョコレート中毒の症状は、食べてから6~12時間後に現れると言われています。
すぐに症状が現れないからと、安心しないようにしましょう。
愛犬がチョコレートを食べてしまったら?【飼い主さんにできること】
これまでの内容で、下記のことがわかりました。
●どれくらいチョコレートを食べると危険なのか
●中毒をおこすと、どんな症状が出るのか
●少量摂取・すぐに症状が出なくても安心はできない
では、もし愛犬がチョコレートを誤飲したら飼い主さんが取れる対応は何でしょうか?
できる対応は「3つ」あります。
飼い主さんができること「3つ」
①誤飲状況の把握
➁即、動物病院に電話&行く
➂自分で処置はしない
①誤飲状況の把握
愛犬の誤飲を見つけると「どうしよう!」とパニックになります。
不安でしょうが、動物病院でスムーズに対応が取れるように、一旦状況を把握しましょう。
獣医師さんが知りたい情報
●何時頃食べたのか
●どのくらい食べたのか
●チョコ以外に食べた物はあるか(包み紙など)
●どんな風に食べていたのか(丸のみ・かじってた)
●チョコの種類と成分(箱や袋を持参)
チョコレート以外に誤飲したものがあると、対応や処置が変ってきます。
まず落ち着いて状況を把握することが、愛犬の命を救うことに繋がります。
➁即、動物病院に電話&行く
チョコレート中毒を起こした場合、解毒薬のようなものはありません。
そのため、体に吸収される前に排出させるという対症療法をとります。(薬で吐かせたり胃洗浄をします)
つまり時間がたってしまうと、取れる手段がなくなります。
一刻も早く、動物病院に電話をして指示を仰ぎましょう。
➂自分で処置はしない
ネットで検索すると、誤飲をしたときに吐かせる方法(塩やオキシドール等)がヒットしますが、自分で処置をすることは絶対にやめましょう。
吐かせることで危険が増すことがありますし、オキシドールを飲むと胃や粘膜を爛れさせる恐れがあります。
処置は動物病院にお任せしましょう。
動物病院から「吐かせる処置」に関して注意喚起が出されています。
塩やオキシドールによる催吐方法に関して
>https://www.lizaniho.jp/emetic
いかがでしたか?
犬のチョコレート中毒はよく知られていますが、発生件数がまだまだ多いことは驚きでしたね。
この記事が少しでも悲しい思いをするわんちゃんと飼い主さんを減らす手助けになれば幸いです。
<参考文献>
チョコレートとイヌ・ネコの健康 ペット栄養学会誌
>https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/15/1/15_36/_pdf
犬、猫の誤飲傾向と対策【傾向編】
>https://www.anicom-sompo.co.jp/prevention/stopgoin/pdf/120206.pdf
高カカオをうたったチョコレート(結果報告)
>https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/01/dl/s0114-10j.pdf
チョコレート中毒 あいむ動物病院西船橋
>https://www.119.vc/illness/archives/150
動物看護のための小動物栄養学 著者/阿部 又信 監修/日本小動物獣医師会 動物看護師委員会
<使用素材>
Unsplash
フキダシデザイン
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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