みなさんの愛犬は「オスワリ」ができますか?「当然、できます!」という声が聞こえてきそうですね。
しかし、私は自分の愛犬が「オスワリができる」と自信を持って言うことができません。その理由は・・・。
誰もが愛犬に教える「オスワリ」。実は意外と奥深く、極めれば非常に便利なコマンドなのです。
「オスワリ」とは?
わんちゃんを迎えて最初に教えるコマンドが「オスワリ」という方は多いのではないでしょうか?ごはんやおやつをあげる時などに教えたら、あっという間に覚えてくれますよね。
「オスワリ」をしている間は走り回ったり飛びついたりできないのはもちろん、声を出しづらいため、吠えにくくなります。興奮しているわんちゃんを落ち着かせたい時には非常に便利なコマンドですね。
しかし、いったいどれだけのわんちゃんが正しい意味で「オスワリができる」でしょうか?ドッグトレーニングの観点から言えば、まず一度のコマンドで即座に反応して座るということが求められます。
「オスワリ! オスワリ~オスワリだよ!」と何度も言ってようやく座るのは、厳密には「オスワリができる」とは言えないのです。
次に、他のコマンドか「OK」などの解除コマンドが出るまでは座り続ける必要があります。何も言われていないのに立ち上がったり伏せたり、他の行動をとることはNG。たとえ目の前で大好きなボールを転がされてもおやつを見せつけられても、足1本動かさないのが正しい「オスワリ」なのです。
さらに、ドッグトレーニングでのオスワリは、吠えたりにおいを嗅いだり他のことに気を取られず、座っている間ずっと飼い主さんに集中して次のコマンドを待つことも求められます。
▲よそ見せず、飼い主さんに集中しなければなりません。
そのすべてを完ぺきにこなせるようになるためには、相当なトレーニングをしなければなりません。
私がドッグトレーニングに携わっていた頃の先代愛犬は子犬の頃からそういう風に教えましたが、今の愛犬にはそこまでのものを求めていません。
2頭を異なる基準で育てた経験から、「オスワリ」を極めることのメリットについてご紹介します。
「オスワリ」を極めると!?
▲「オスワリマスター」だった先代愛犬。どんな状況でも安心していられました(宮崎県の都井岬にて、野生の馬と)
先に述べたように、真の意味で「オスワリ」ができるようになると、どんな状況でもわんちゃんは飼い主さんに意識を向けていますので、いざという時の安心感があります。
一度「オスワリ」をさせておけば、目を離してもその場を離れても愛犬の居場所は変わらないし、勝手に立ち上がることもないため、わんちゃんに待っていてもらう時などに役立ちます。
私の現在の愛犬にはそこまでの信頼性がなく、たとえばお散歩中に排泄物を拾う間座って待っていてくれますが、他の人やわんちゃんが通りかかる時はあらためて声をかけなければ動いてしまう恐れがあります。
▲他のわんちゃんが通りかかる時は安心できません。
「オスワリ」をしている間は吠えたり騒いだりしてはいけないので、他の人やわんちゃんに勝手に近寄っていったりもしません。
狭い道で人とすれ違う時、わんちゃんが急に近づいていったり吠えかかってしまったりしては、相手に不快な思いをさせてしまいますよね。「オスワリ」をさせてやり過ごすことができれば安心です。
先代の愛犬はたとえ他の人に目の前で「おいで!」と呼ばれても動くことはありませんでしたが、現在の愛犬は誘惑に耐えきれず近寄ってしまうでしょう。毛やよだれで迷惑をかけてしまわないかヒヤヒヤしながら「オスワリ」の練習に励む毎日です。
「オスワリ」を極めることは、わんちゃんにとってもメリットがあります。慣れない環境にいる時や怖いと感じる対象に遭遇した時など、「オスワリ」をして飼い主さんに集中することで心の平安を得ることができるのです。
トレーニングを続けているわんちゃんは、コマンドを与えられた方が自分のすべきことが明確になって安心する傾向にあります。「飼い主さんの言うことを聞いていれば大丈夫」という気持ちになれば、怖がりなわんちゃんも心強いですよね。
コマンドが絶対だった先代の愛犬は不安な時に私の指示を求めましたが、今の愛犬は恐怖でいっぱいいっぱいになってしまうことがあるため、怖がりな子こそしっかりとトレーニングをしてあげる必要性を感じています。
「オスワリ」の極め方!
100%「オスワリ」を極めようと思うと途方に暮れそうですし、実際そこまでの確実性が必要なこともそうそうありません。しかし、完ぺきに近づけば近づくほど様々な場面で非常に便利ですので、今できているよりもう少し上手になることを目指してみませんか?「オスワリ」の極め方のポイントを3つご紹介します。
1.正しく教える
「オスワリ」というコマンドに対するルールを明確に決めてから教えてあげるのが、わんちゃんにとっても分かりやすく受け入れやすいです。そのためにはまず、ご自身がコマンドの使い方を整理しておきましょう。
コマンドは繰り返さず、一度で反応しなければ誘導などで物理的に座らせると良いでしょう。また、他の指示が出るまで座り続けるように、動いてしまう前に解除や「フセ」など他のコマンドを出すようにしましょう。
2.成功と失敗を明確に伝える
成功した時と失敗した時とで大げさに違いをつけると、わんちゃんに伝わりやすくなります。一度のコマンドで座った時や他の指示が出るまで座り続けられた時には、一緒になって喜んであげましょう。
反対に、失敗してしまった時は成功するまでやり直すことが重要です。ただし、失敗するということは求めているものが難しすぎるということですので、誘惑の少ない環境で練習するなど難易度を下げることをお忘れなく!
また、何度も失敗してしまう時は一度休憩を入れてリフレッシュする方が上手くいくことが多いですよ。自信喪失ややる気を失ってしまわないように、叱るのは避けましょう。
3.状況や難易度を変えて、コツコツと!
「自宅では完ぺきなのに外に出ると失敗する」というのはよくあることです。コマンドや行動を覚える時、わんちゃんはその時の状況も含めて学習します。
自宅だけで練習していると、一歩外に出て景色も匂いも音も違う環境ではできなくなってしまうこともめずらしくありません。自宅でできるようになったら、玄関先で、道路で、公園で、スーパーの駐車場で、ドッグランで・・・様々な場所や状況での練習を繰り返しましょう。
他の人やわんちゃん、ボール、おやつなど、誘惑に耐える練習も同時に行います。焦らずに、愛犬の成長に合わせて難易度を上げていってくださいね。
▲最初は室内で練習!
▲場所や難易度を変えてどんどん練習しましょう!
誰もが何気なく教えて使っている「オスワリ」というコマンド。ぜひ今以上に練習をしてみて、その奥深さを実感してみてください!
長年犬と旅をしてきたノウハウが誰かのお役に立てればうれしく思います。
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