よその犬を触ろうとすると阻もうとする、赤ちゃんが生まれてから愛犬の態度が変わってしまったなど、犬の嫉妬に関するエピソードを持っている方は多いですね。犬にも嫉妬と似たような感情があることがわかっています。
愛犬と良い関係を築いていくために、赤ちゃんや2頭目の犬を迎えるときに大切なことを覚えていきましょう。
犬も嫉妬をする?!
犬にも感情があるのかを確認する研究は世界中で行われています。
エモリー大学のチームは、犬に「①犬自身が食べ物を受け取る」「➁模型の犬に食べ物を与えるのを見る」「➂食べ物がバケツに入れられる」の3つの状況を体験させ、脳がどう反応するかMRIで観察しました。
すると、「➁模型の犬に食べ物を与えるのを見る」の状況で脳の偏桃体という部分の活動が活発になったそうです。偏桃体は「不安、怒り、恐れ、嫉妬」といった感情と関わっていることが判明しています。
そのため、犬にも人の嫉妬心に近い感情があるのではないかと推測されています。また攻撃性が高いと判断された犬ほど、偏桃体の働きは活発になったそう。
別の実験でも、ライバルと見定めた相手と飼い主の関係を断とうとする仕草が確認できたことから、犬にも自分に関心を向けてほしいといった嫉妬のような感情があると考えられています。
犬が嫉妬しているときの5つサイン
以下のような行動が見られたら、犬が嫉妬しているかもしれません。
①妨害行動
ライバルと見定めた相手と飼い主さんの間に割り込んだり押しのけたりして、関心を自分に向けようとします。
➁攻撃行動
ライバルと見定めた相手を排除しようとして攻撃することもあります。
また生活スタイルが変わったことによるストレスや不安を飼い主さんに向けてしまい、攻撃してしまうこともあります。
➂普段と違う場所で排泄
普段はきちんとトイレで排泄をしているのに別の場所での排泄が見られたら、不安に思っているというサインかもしれません。
④注意をひく行動
いつもより甘えてきたり手や顔を激しく舐めるときは、飼い主さんの関心を欲しがっているときです。
吠える、物を壊すといった方法や自分をしつこく舐める、自分に噛みつくといった方法で自分の不安な気持ちを表す子もいます。
➄部屋を移動する
いつも飼い主さんにくっついている、定位置がある犬が別の部屋に行く場合は、不安や悩みを感じている可能性があります。
またライバルと見定めた相手の側にいるのが居心地が悪くて、距離を取ることもあります。
赤ちゃんと愛犬を会わせるときの注意点
赤ちゃんと愛犬を対面させる前に大事なこと
人にとっては赤ちゃんは新しい家族ですが、犬にとっては急に自分の縄張りに入ってきた知らない人です。
赤ちゃんが来て愛犬と向き合う時間が減れば、自分だけに向けられてきた愛情が奪われてしまうかもしれないと危機感を覚えるでしょう。そのようなことがないように、事前に赤ちゃんが来るという心構えを愛犬にさせてあげると良いでしょう。
家に赤ちゃんを連れてくる前に、赤ちゃんの匂いのついたタオルや産着を椅子やソファーなどに置いておき匂いを覚えてもらいましょう。
また、赤ちゃんの泣き声を録音して、赤ちゃんの声に慣らしておくことも大切です。(初めは小音からはじめて慣れたら少しずつ音を大きくしましょう。)
赤ちゃんと愛犬を初めて対面させるときは?
愛犬にとって家は自分の縄張りであり、そこに入ってくる知らない人に対しては防衛的になります。
そのため部屋でいきなり対面させるのではなく、家の外で一度会わせてから一緒に家の中に入ると警戒心を解きやすくなります。(愛犬は事前に散歩させておくとベスト)
外で会わせるのが難しい場合は、ドア越しや部屋越しに匂いを嗅がせて存在に慣らします。
ある程度愛犬が赤ちゃんの存在に慣れて落ち着いてきたら、赤ちゃんを抱っこした状態で愛犬に会わせて対面時間と回数を増やしていきます。
赤ちゃんと愛犬が一緒に暮らすうえで大事なこと
赤ちゃんが来ることによって、今までフリーだったのにケージに入れられるようになった、一緒にベッドに寝れなくなったなど生活スタイルが変わると愛犬がストレスを感じます。ストレスが溜まると攻撃や問題行動に発展しかねません。
愛犬ではなく赤ちゃんの方をサークルに入れる、柵で空間を分けるなど赤ちゃんが来る前と同じ生活ができるようにしてあげましょう。(安全面からも衛生面からもオススメ)
また、赤ちゃんに吠えたり飛びかかろうとするなど、好ましくない行動をしたときについ叱ってしまいたくなりますね。ただでさえ愛情がとられてしまうかもしれないと不安な犬を叱り続けると、ますます赤ちゃんに嫌な思いを募らせていきます。
赤ちゃんに興味を持ったら褒める、飛びかかりそうになったら落ち着かせて褒める、赤ちゃんが泣いたらオヤツをあげる(良いことがある)、たくさん遊んであげるなど、愛情を態度に出して愛犬を安心させてあげましょう。
2頭目の犬を迎えるときの注意点
先住犬と新住犬の対面は慎重に
自分の縄張りだと思っているところにいきなり新しい犬を放つとケンカになりかねません。可能であれば、外で対面させましょう。一緒に散歩に行って一緒に家に入り、柵で仕切った部屋で過ごしながら少しずつ一緒の時間を増やして同居をめざします。
外で会うのが難しい場合は、新しく迎える子をケージに入れてリードを付けた状態で先住犬と会わせます。
お互いの存在に慣れるまでは、柵で区切った環境で生活させましょう。
先住犬と新住犬、食事は一緒に食べさせない
一緒の場所や一緒の器で食事をさせる方がいますが、食べ物への執着が強い子であればケンカになりますし、おっとりした子であれば横取りされてしまいます。
食事は不仲の原因にもなりかねないので、食事はそれぞれのケージで取らせる、別々の部屋で取らせるなど安心してご飯が食べられる対策をとってあげましょう。
先住犬の暮らしを守ってあげる
よく先住犬の方を立てて優先してあげると良いと聞きますね。でも犬の性格によっては、飼い主さんに優先されることで強気になって、2頭目をいじめることがあります。(逆もあります)
大切なのは、先住犬を立てることではなく先住犬の暮らしを守ってあげること。
オヤツやご飯を先にあげても、散歩を先に行っても、先住犬が望んでいることでなければ、不満に感じてしまいます。
先住犬のストレスサインを見逃さずに、先住犬の安心感と暮らしを守ってあげましょう。
犬が新しい環境に慣れるためには時間がかかります。
新しい家族や2頭目を迎えるときには、1カ月前から対策をとっておきましょう。
<参考文献>
・Jealousy in dogs? Evidence from brain imaging
・Cook, Peter; Prichard, Ashley; Spivak, Mark; and Berns, Gregory S. (2018) Jealousy in dogs?
・Jealousy in Dogs PLOS ONE
・レトリバーが子供を殺した事件について:DOGGY STATION Vol.67
・イヌは飼い主を取られると嫉妬する ナショナルジオグラフィック
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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