手術は飼い主さんにとってもわんちゃんにとっても、大きな決断がいりますね。
「なんとかまた歩けるようにしてあげたい」との思いで、思い切って手術を決めたけれど「手術後の生活はどうなるんだろう」と不安に感じることも多いと思います。
そこで今回は、「前十字靭帯断裂の手術を受けた後に注意すること」や「再発のリスク」について解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
▼「前十字靭帯断裂」について詳しく知りたい方は、先にコチラの記事をご覧ください。
犬の「前十字靭帯断裂」の手術の後に注意することは?
手術や入院が終わった後は、愛犬の管理は飼い主さんの手に託されます。
手術が終わった後の生活で注意することはなんでしょうか?
ポイントを「3つ」にまとめました。
▼手術後に注意すること
①愛犬に激しい運動はさせない
➁愛犬の膝に負担がかかりにくい環境にする
➂愛犬を太らせないようにする
①愛犬に激しい運動はさせない
手術後1カ月ほどは「安静に過ごしてください」と言われることが多いです。ボール遊びやジャンプなどの激しい運動は控えて、軽い散歩程度に留めるようにしましょう。(早歩きはしないように注意)
また、ひざに負荷がかかりやすくなるので、「段差がある場所」「階段」「坂道」も避けるようにしましょう。
運動が大好きな子には辛い時間ですが、手術から2~3カ月ほど経過すると様子をみながら運動制限が解除されるのでグッと我慢しましょう。
➁愛犬の膝に負担がかかりにくい環境にする
フローリングのように床が滑りやすいと、犬のひざに負荷がかかりやすくなります。マットやカーペットを敷くなど、歩くときに滑りにくくなる工夫をしてあげましょう。
特に、水を飲んだりご飯を食べる時のように頭を低くする姿勢は、バランスを取るために足をぐっと踏ん張りがちなので、足元が滑りにくいようにマットのうえで食事などを与えるようにしましょう。
➂愛犬を太らせないようにする
手術後は安静にするけど体重は増やさないようするという、なかなか難しい管理が要求されます。
体重が増えた分だけひざにかかる負荷も増えてくるので、食事を低カロリーのものに変えるなど体重を増やさないように気をつけましょう。
犬の「前十字靭帯断裂」は再発をするリスクがあるの?
前十字靭帯断裂の治療は、主に「手術をする外科治療」と「状態を維持していく保存療法」があります。
その犬のひざの状態や年齢、飼い主さんの希望になどによって、その犬に合った治療方針を決めていくのでどちらが良い、悪いとは一概に言えません。
ただ、治療法によっては、再発を起こす可能性もゼロではありません。
「え、再発するの?」と思うかもしれませんが「この治療法だから再発する」「この治療法だからダメ」と否定したいのではなく、あくまで可能性のお話です。
今後の愛犬との暮らしの中で、お困りごとが起きないように「どんなときに再発するのか?」を知っていただければと思います。
再発の可能性があるケース①「外科手術で使った人工靭帯がゆるんでしまった」
前十字靭帯断裂の手術はさまざまな手法がありますが、よく取られる手法は「関節外制動法」と「TPLO法」です。
それぞれ何が違うのかというと、下の図のような違いがあります。
▼「関節外制動法」人工靭帯という糸を関節に通してひざを安定させる方法
▼「TPLO法」脛の骨を切って骨の角度を調整し、プレートで固定させる方法
再発の可能性があるのは、「関節外制動法」の方です。
ひざを安定させるのに人工靭帯という糸を使用するので、その糸が切れたりゆるんだりしてしまうと、靭帯の役目が果たせず再発してしまいます。
「関節外制動法」は靭帯の損傷が軽度、活動量が少ない場合に用いられることがあります。
この手法を取ったから必ず再発するということではありませんが、こういった流れで再発のリスクがあるという事は覚えておきましょう。
※「TPLO法」は再発のリスクが少ないと言われていますが、手術を行える病院や獣医師さんが少ない事、費用が高額になること、骨を切るため手術が大掛かりになることがネックです。
再発の可能性があるケース➁「保存療法で状態が悪化した」
「手術ではなく保存療法を取っている」もしくは「手術ではなく保存療法にすれば良かった」と悩んでいる方もいるかもしれません。
ただ保存療法は、関節のダメージを治すものではなく対症療法で状態をキープする方法です。
鎮痛剤で痛みを和らげても、ひざの骨は動きやすくなっているので、ひざへのダメージは少しずつ蓄積していきます。
そのため、「ケンケン歩き」と「一時的に良くなる」を繰り返すことで、軟骨やひざの衝撃を吸収してくれる半月板を損傷し、状態が悪化したり再発に繋がってしまうことがあります。
犬の「前十字靭帯断裂」の手術の後、リハビリは必要?
片足が悪いと、もう片方の足に負荷をかける歩き方をしがちですね。
特に3本足で歩くことに慣れてしまった子は、手術が終わっても慣れた歩き方をしがちです。そうすると筋肉の付き方に差が出てしまったり、体のバランスが悪くなってしまいます。
手術後は凝り固まった筋肉をほぐしたり、歩き方の補正を行うなどのリハビリテーションを行うのが好ましいですね。
リハビリというと病院で行うイメージがありますが、お家でのサポートもとても大切です。
そのため、前十字靭帯断裂の手術をする際には、「リハビリを行っているか」「手術後のケアもしてくれるか」も含めて、動物病院を探すことが大切です。
またもし事情があって手術ができない場合も、リハビリを行うことで筋肉の緊張が取れて歩行が改善したり、痛みが緩和できることがあるので、そういった面からもリハビリを行うことをオススメします。
いかがでしたか?
手術の後は「どんな生活になるのかな」と不安も大きいですね。
前十字靭帯損傷の手術を検討している、手術を受けたという方の参考になれば幸いです。
<参考書籍>
小動物獣医看護学 小動物看護の基本と実践ガイド 上巻・下巻 西田 利穂 (翻訳), 石井 康夫 (翻訳), D.R.Lane B.Cooper
<参考URL>
前十字靭帯断裂 一般社団法人日本小動物整形外科協会
>http://voa.or.jp/case/03
犬の前十字靭帯断裂 ONE for Animals
>http://one-for-animals.co.jp/case/03
【獣医師監修】高齢犬のためのリハビリ紹介 苅谷動物病院グループ
>https://www.youtube.com/watch?v=NOvnR28WO-k
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
最新記事 by 伊藤さん (全て見る)
- 「愛犬と食べたい秋・冬が旬の果物」与えてOKな果物とNGな果物知ってる? - 2024年11月12日
- 「長生きする犬の共通点は?」長生きさせるための飼育環境や年齢別の注意点を解説 - 2024年11月4日
- 「犬の歯が欠けやすいオヤツ・オモチャ5選」選ぶときのポイントや歯が欠けたときの対応も解説 - 2024年10月29日
- 「犬の睡眠が足りないとどうなる?」犬の睡眠不足がまねく病気や睡眠不足のサインを解説 - 2024年10月22日
- 「習慣化で病気をまねくおそれも」犬の皮膚や毛、耳によくないNG習慣 - 2024年10月18日