愛犬の命を脅かす「胃捻転」。特に大型犬と暮らす方なら誰もが心配し、対策をしていることだと思います。
しかし、「ドッグフードを水やお湯でふやかす」「食事台を使用する」といった、これまで予防になると考えられてきたことが、逆に胃捻転のリスクを高める場合があるということをご存知でしょうか?
大切な愛犬の命を守るために、胃捻転対策について今一度考えてみませんか?
発症すると恐ろしい、「胃捻転」とは
胃の中に大量のガスが溜まって胃がパンパンに膨れ上がり、それにともなって胃がねじれてしまう「胃拡張捻転症候群」は、発症してしまうと急激なショック症状に陥り、高い確率でわんちゃんの命を落としかねない非常に危険な症状です。
主にグレートデンや秋田犬、ジャーマンシェパードやバーニーズマウンテンドッグ、レトリバー種などの胸 が深い大型犬が高リスクとされますが、小型犬や猫でも起こり得るため、わんちゃんと暮らす方であればあらかじめいくつかの注意点を知識として持っておくことが必要です。
胃拡張・胃捻転の発症には、遺伝的、体質的要因とともに、食事内容、食事の与え方、食後の激しい運動など、環境的要因も関係すると言われています。親きょうだいや親戚犬などが胃捻転を起こしたことがある場合や、体脂肪が少なく痩せ気味のわんちゃん、加齢により胃を支える靭帯が弱くなっている場合などは、より注意が必要とされます。
家庭の中で気をつけるべき点としては、タンパク質の種類や脂肪の割合などを考慮し、リスクが低いとされる食事内容にすること、一度に大量の食事を与えないこと、食後に走らせたり仰向けになったりさせないことなどが挙げられます。
大型犬と暮らす方は、食べてすぐはしゃいでしまわないよう、食後に一定時間ケージでの休憩をさせることもめずらしくありませんよね。また、超大型犬などの高リスク犬種においては、予防として「胃腹壁固定術」が推奨されることもあります。
▲食後は安静に!
わんちゃんの「胃捻転」リスクを高める!?ドッグフードへの水分添加と食事台の高さについて
胃捻転予防のために家庭でできる対策の中で、「ドッグフードに水やお湯を入れてふやかす」ということが昔から推奨されてきました。
確かに、カリカリのドライフードを勢いよく吸い込めば、一緒に空気を飲み込んでしまいそうな気がしますよね。しかし、ドライフードに水分を含ませて与えることで胃捻転の発症リスクを高めるという論文もあるのです。特に保存料としてクエン酸を使用しているドライフードの場合、通常の4倍以上ものリスクとなります。
また、食べやすいようにと食事台を使用している大型犬の飼い主さんも少なくないと思いますが、こちらも同様に胃捻転のリスクを2倍以上高めるという統計が出ています。
食事台の使用についても、古くから胃捻転防止に良いと言われてきた方法です。しかし、わんちゃんの体にとって高すぎる台は逆に空気を飲み込みやすくなるということが分かってきました。
愛犬が食事時に空気を飲み込まない適切な高さをきちんと計測できれば良いですが、それはなかなか難しいと思いますので、床の上で与えることが安心かもしれません。
▲我が家では、床に置いた食器を手で支えながら食べさせています。
わんちゃんに関する研究は日進月歩。飼い主さんが心がけたいこととは?
▲食後はヘソ天も禁止!(写真は食後ではありません)
胃捻転の発症リスクを高める、または低くするとされることは、他にもたくさんあります。いずれも数多くの観察やさまざまな研究に基づいた内容ではありますが、そのすべてを守っても胃捻転を完全に予防することは、残念ながらできないと思います
というのも、わんちゃんの健康に関する研究自体が完ぺきなものではなく、未研究の部分も多くあるためです。以前は良いとされたことが、10年後、20年後にNGとなる・・・といったことは人間の医療でも起こるくらいですから、仕方がないかもしれませんね。
そんな中でも可能な限り正確な知識を得るために、私たちは飼い主として玉石混淆の情報を見極める冷静さを持つ必要があります。インターネット上には古い考えや間違った情報が散りばめられていますので、必ずリソース(情報の出どころ)を確かめて、信頼できるかどうかをチェックするようにしたいですね。
また、英語が苦手じゃないならぜひ海外のWebサイトにも目を通してみることをおすすめします。日本よりも研究が進んでいることが多く、論文を見つけることもできるからです。
インターネットの情報で頭がパンクしそうになった時に私が心がけているのは、「犬にとって自然かどうか?」という点に立ち返ることです。たとえば食事を与える高さについて、犬の祖先が獲物を食べる時に食事台を使うなんて考えられませんよね。ドライドッグフードの普及に比例して胃捻転の症例が増加していることからも、犬の体にとってより自然な食べ物の方がリスクを低減できるように感じます。
発症してしまうと愛犬の命を奪いかねない、胃捻転。少しでもリスクを抑えるために、今一度飼い主さんとしてできることを考え直してみてはいかがでしょうか?
<参考文献>
>https://dogsintheus.blogspot.com/2017/06/gdv.html
>http://goldenrescuestlouis.org/Bloat.asp
長年犬と旅をしてきたノウハウが誰かのお役に立てればうれしく思います。
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