犬を飼っているとよく耳にするのが「フィラリア」という病気ですね。
毎月お薬を飲んで予防を頑張っている飼い主さん、わんちゃんも多いのではないでしょうか。
でも、「どうやって病気を予防しているの?」とか「感染したらどうなるの?」と聞かれると、上手く説明できないという方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、「フィラリアはどんな病気なのか」や「感染したらどうなるのか」を解説していきたいと思います。
うっかりおこしがちな薬を飲み忘れた場合についても解説していくので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
フィラリアってどんな病気?
まず、フィラリアがどんな病気なのか、について解説していきますね。
フィラリア症は、「犬糸状虫(フィラリア)」という寄生虫が犬の血管や心臓に住みつくことによって起こる病気です。もともと体の中にいるわけではなく、蚊を介して感染します。
下図を見るとよくわかりますが、フィラリアに感染した犬の血を蚊が吸い、その蚊が他の犬を刺すことでフィラリアは感染を広げていくのです。
「犬糸状虫」と聞くと犬にしか感染しないと思いがちですが、猫やウサギなど犬以外にも感染をします。
地域によっては外飼いの犬猫が多かったり、野良猫が多かったりしますよね。感染対象が多いということは、愛犬が感染する機会や可能性もおのずと高くなります。
私たちにはどの犬や猫が感染しているか、どの蚊がフィラリアを持っているかはわからないので、予防が何よりも大切です。
しっかりと予防することで愛犬もまわりの犬も感染するリスクを低くすることができます。
愛犬がフィラリアに感染したらどうなるの?
フィラリアは犬の体に入り込むと、時間をかけて大きくなりながら、心臓から肺に向かう「肺動脈」というところに住みつきます。
フィラリアが住みつくと血液の行き来を邪魔するので、心臓が血液を送り出すポンプとしての機能を十分に果たせなくなります。
また、心臓のドアの役割をする弁を傷つけたり、血管を硬くしたり、血栓を作って肺を傷つけたりします。
そうすると下記のような症状が見られるようになります。
▼フィラリアの症状
・咳をする
・痩せて毛なみが悪くなる
・運動や散歩を嫌がる
・呼吸が浅くて回数が増える
・散歩や運動の後に失神する
・お腹が膨れてくる(腹水がたまる)
・血尿
最初にフィラリアは予防がなによりも大事とお話ししたのは、このやっかいな寄生虫に寄生され、予防薬も効かないほど成長すると、治療が非常に難しくなるからです。
「治療薬で一気に退治すればいいのでは」と思うかもしれませんが、寄生した数が多いと死骸が肺や血管に詰まって、心不全や呼吸困難をひきおこす可能性が高くなります。
また外科手術で取る方法もあるのですが、対応している動物病院は多くなく、犬の体にも大きな負担がかかります。
そのため、現状では対処療法か薬でジワジワ時間をかけて弱らせていくという方法しかとることができません。
(最近、フィラリアと共生している菌(ボルバキア)を除去することで、より短期間で死滅へ向かわせることができるという治療法が出てきたようです。)
フィラリアは正しく予防薬を飲めば、予防することができる病気です。大変な思いをして治療するよりも、感染するリスクをなるべく低くしてあげましょう。
フィラリアってどうやって予防するの?
さて、今までの内容で、「フィラリアがどんな病気なのか」「感染したらどうなるのか」「予防がいかに大切か」がお分かりいただけたかと思います。
では今度は、この大切な「予防」についてお話ししていきましょう。
フィラリアの予防には「予防薬」が効果的です。動物病院で「毎月飲んでくださいね」とお薬が出されますね。
でも、「どうやって予防されているのか」「どうして毎月飲む必要があるのか」はご存じでしょうか?
フィラリアがどんな風に大きくなっていくのかを知ると、予防薬の仕組みがよくわかるので一緒に学んでいきましょう。
下図を見るとわかりますが、フィラリアは「L1~L5」という5つのステージを得て「成虫」へと成長していきます。
生まれたばかりの「L1」を「ミクロフィラリア」といい、蚊に吸血されると蚊の体内で「L3」にまで成長します。そのため、犬に感染するときにはフィラリアは「L3」まで成長した状態です。
犬の体内に入った「L3」のフィラリアは、メキメキ大きくなり約10日で「L4」に成長します。「L4」になったフィラリアは、皮膚の下や筋肉内でまたメキメキ成長しながら「L5」を目指します。
「L5」になると、皮膚の下や筋肉にいたフィラリアが「血管」に入り込もうと動き出し始めます。血管内に入り込むとなかなか手出しができなくなります。
ここで「予防薬」の出番です。
予防薬と言われているのですが、正確には「L4」のフィラリアを対象にした「駆虫薬」です。(ミクロフィラリアにも効果があります。)
「L3」から「L4」の成長は約10日でしたが、「L4」から「L5」に成長するには、約50日~120日ほどかかります。
「1カ月毎にお薬を飲みましょう」と言われるのは、「L5」に成長するまでの長い期間の内に成長させないように駆虫をしてしまおうという事なんですね。
予防薬は「L4」を対象としているので、「L5」に成長してしまうと、お薬が効かなくなります。毎月お薬をきちんと飲むことの大切さがよくわかりますね。
どうやってフィラリアを予防しているのか、どうして毎月お薬を飲むのか、お分かりいただけたでしょうか。
愛犬にフィラリアの薬を飲みませ忘れたらどうする?
毎月お薬を飲んでいると、どうしても出てくる問題が「飲み忘れ」ですね。
「あれ?先月飲ませたっけ?」「1カ月分余っちゃった・・・」となると、「どうしよう!」と慌ててしまいますね。
お薬を飲み忘れてしまった場合は、フィラリアの成長の図を思い出してもらうとわかりやすいです。
予防薬は「L4」のフィラリアを駆虫するお薬でしたね。「L4」~「L5」までは一番早くて約50日で成長するとお話ししました。なので実質は2週間ほど猶予があります。
もし飲ませ忘れても予定日から2週間過ぎていなければ、効果を発揮してくれます。
「L4」の期間は約50日前後なのに、1カ月毎に飲むのを勧めているのはこういった飲み忘れによる感染のリスクを減らすためなんですね(あと虫の中にも成長が早い子遅い子がいるので)。
ただ病院によって出しているお薬は違いますし、やり方も変わってくるので、飲み忘れに気づいた時点で動物病院に電話をして相談することをオススメします(googleで情報を探すより安心できますよ)。
予防薬を飲ませ忘れた場合に「注意して欲しいこと」があります。
お薬が1カ月分余った場合に、翌年に回して飲ませることです。
飲ませ忘れがあるという事は、成虫になっているフィラリアがいる可能性があります。
その成虫がミクロフィラリアをたくさん生んでいると、そのミクロフィラリアが一気に死ぬため、死骸の成分で犬がショック反応を起こす可能性があります。
飲ませ忘れがある場合は、必ず獣医師さんに相談して検査を受けてから、次の年の予防に入るようにしましょう。
フィラリア予防は身近な対策ですが、予防薬が効かないほど大きく成長すると、非常に厄介な病気になります。
愛犬に辛い思いをさせないためにも、月に1回の予防を忘れないようにしましょうね。
<参考URL>
「フィラリア症の正体」の話 南大阪動物医療センター
>https://so-amc.com/column_detail/entry/308
<参考書籍>
小動物獣医看護学 小動物看護の基本と実践ガイド 上巻・下巻 西田 利穂 (翻訳), 石井 康夫 (翻訳), D.R.Lane B.Cooper
動物看護のための小動物寄生虫学 佐伯 英治 (著)
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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