熱中症といえば「夏」というイメージがありますが、実は「春」も熱中症のリスクがある季節です。
過ごしやすい気温だからと油断して車内やお店の外で愛犬を待たせていると、熱中症にかかってしまうかもしれません。
今回は、「つい見落としてしまう春の熱中症のリスク」と「もしも愛犬が熱中症になってしまったときの対処法」について解説していきますので、お出かけのときの参考にしてくださいね。
春からジワジワ増える犬の熱中症
熱中症というと夏に起こりやすいイメージがあるため、熱中症対策を春にはじめる飼い主さんは少ないかもしれません。
しかし、アニコム損保が行った調査を見てみると、熱中症月別請求件数は5月・6月頃~右肩上がりに伸びているのがわかります。
▼熱中症月別請求数【2012年】
体感的に5月・6月は「過ごしやすい気温」と感じますが、日中は25度を超える夏日も増えてきます。
グラフを見るとわかるように、夏日が増えると熱中症にかかる犬の数も急激に増えてきます。
また春は体が暑さに慣れていません。急な温度変化に体がついていけず、熱中症にかかりやすくなるというのも、春に熱中症が増えていく原因のひとつであるようです。
夏日が増える5月・6月頃から、意識的に熱中症対策をとっておくというのが大切ですね。
では次に、ついやってしまいがちな「車内やお店の外で犬を待たせるリスク」についてお話ししていきましょう。
短時間でも危険!?車内や屋外で犬を待たせる4つのリスク
お出かけした際、車内やお店の外で愛犬をお留守番させたりしていませんか?
夏には気をつけていても、体感的に涼しい春はついやってしまいがちだと思います。
「窓を開けたり涼しいところで待たせれば大丈夫」と思うかもしれませんが、十分熱中症にかかるリスクがあります。
どうして熱中症を起こしてしまうのか「4つ」に要点をしぼって解説していきますね。
▼短時間でも車内や屋外での留守番は熱中症のリスク
①想像よりも車内は暑くなる
➁不安は呼吸を荒くさせる
➂見落とされがちな湿度の危険性
④1匹で残すと何が起きるかわからない
①想像よりも車内は暑くなる
JAF(日本自動車連盟)が行った車内温度の実験によると、外気温が「23℃」前後でも、車内の温度はたったの1時間で「40℃」を超えることがわかりました。
▼車内の温度変化のグラフ(2019年5月8日 外気温23.3~24.4℃ 南向きの車両配置で実施)
1時間近く犬を1匹で残す方はいないと思いますが、注目して欲しいのは開始直後から急激に温度が上がり30分立たずに「30℃」を超えていることです。
犬が快適に感じる温度は20~25℃程と言われているので、短時間でも十分に熱中症を起こす可能性がでてきます。
また同じくJAFの別の実験で、窓を開けていても車内の温度変化を防ぐことは難しいことがわかっています。
▼サンシェード設置や窓開けで車内の温度変化は防げるか (2012年8月22日・23日 晴れ 外気温35℃ 駐車条件の異なる5台を車内温度25℃ に揃えて実施)
窓開け対策は「緑色の線」ですが、開始直後から急激に温度が上がり、車内平均気温は42℃を記録しています。
つまり窓を開けていたとしても熱中症対策にはなっておらず、車内は想像よりもずっと暑くなってしまうということです。
海外のサイトでは「犬は暑い車の中でわずか6分で亡くなる」と書かれている記事もあります。
短時間でも犬を1匹で車内に残さないようにしましょう。
➁見落とされがちな湿度の危険性
熱中症は気温が注目されがちですが、実は湿度も注意が必要です。
湿度が高いと汗が蒸散しにくいため、体から熱を放出しにくくなります。
犬はごく一部でしか汗をかかないので、体温調節は口の呼吸で行いますが、湿度が高いとうまく水分を蒸散できずに体温を下げにくくなります。
そのため気温が低くても、湿度が高いと熱中症を起こすリスクが高くなります。
「気温が低いし日陰になっているから大丈夫」と、お店の外などで待たせていると熱中症になってしまう可能性は十分にあります。
➂不安は呼吸を荒くさせる
人の場合「5分で戻ってくる」という間隔がわかりますが、犬にはわかりません。急に1匹にされたり、車に残されると不安でたまりません。
不安や緊張を感じると呼吸が荒くなり、呼吸が荒くなると体温があがります。
つまり不安や緊張を感じる状況で、気温や湿度の高い空間にいると、通常よりもずっと熱中症になるリスクが高くなるのです。
④1匹で残すと何が起きるかわからない
「犬の適温になるようにクーラーをかけておけば、車内に残しても大丈夫では?」と思う方もいるかもしれません。
しかしある動物病院からは「ヒヤッ」と感じるような車内事故が報告されています。
▼以下、院長様のコラムです
この方は10分ほどで車に戻ってきていますが、もし戻る時間が遅かったらと想像するとゾッとしてしまいますね。
最近のエンジン始動はプッシュ式の車が多いので、同じような事故が起こらないとも限りません。
熱中症にかぎらず「窓の開閉ボタンを押して飛び出してしまう」「何かの拍子にドアロックが開く」「繋いでいたリードが外れる」など、1匹で残すと色んな事故を起こす可能性が高くなります。
事故は必ず「まさか」が起こっておきます。
犬を車内やお店の外で1匹で待たせる状況は、なるべく作らないようにしましょう。
もし愛犬が熱中症になったら!動物病院に行くまでにできること
これまでの内容で「春でも熱中症のリスクがあること」「車内やお店の外で待たせる危険性」についてお分かりいただけたと思います。
ではもし愛犬が熱中症になったら、飼い主さんはどのような対応をすればいいのでしょうか。
飼い主さんがすぐにとる対応は「2つ」です。
●かかりつけ医に電話する
●病院に行くまでに応急処置をする
かかりつけ医に電話する
熱中症の症状は軽度から重度までありますが、症状が重くなると「けいれん」「意識がなくなる」「呼吸停止」など一刻をあらそう症状が出てきます。
熱中症の症状(下に行くにつれ重症)
・呼吸が激しい
・熱が高い
・よだれが多くなる
・舌の色が青かったり、白かったりする
・下痢・嘔吐
・けいれんをおこす
・意識がなくなる
・呼吸停止
すぐにいつも診てもらっているかかりつけ医に電話をしてください。
もしすぐに行けない距離にある場合は、最寄りの動物病院に行きましょう。
病院に電話をするときに「どう伝えればいいの」と焦るかもしれませんが、ポイントを3つ伝えればOKです。
動物病院に電話するときのポイント
●熱中症を起こしている可能性があること
●症状を簡潔に(意識がない・呼吸が荒いなど)
●何分くらいに動物病院に到着するか(おおよそでOK)
先ほども説明したように、熱中症は一刻をあらそう症状が出ることがあります(実は熱中症は死亡率も高い病気です)。
到着時間を伝えておけば、すぐ処置に入れるように動物病院は備えることができます。
病院に行くまでに応急処置をする
病院に到着するまでの間に下記のような応急処置を取りましょう。
・薄めのタオルを全体的に濡らして犬にかける
・濡らしたタオルをうちわであおぐ
・自力で水を飲める場合は与える(自力で飲めない時は与えない)
・保冷剤があればハンカチなどに包んで「首」「脇」「股」を冷やす
体に直接水をかけたくなりますが、それだと一部しか冷やすことができません。
体全体をまんべんなく冷やすことが大事なので、タオルをかけて濡らしてあげましょう。
また冷やしすぎると、今度は低体温症になってしまうので、保冷剤を当てたら皮膚を触って冷たくなりすぎていないかチェックしましょう(触って冷たいと感じたら冷やしすぎ)。
熱中症は飼い主さんの対策次第で、防ぐことができる病気です。
気温が20℃を超えたら、熱中症対策をとってお出かけするようにしましょう。
<参考URL>
STOP熱中症プロジェクト アニコム損保
>https://www.anicom-page.com/tobyoki/yobo/yobo01.html
It takes just six minutes for a dog to die in a hot car
>https://theconversation.com/it-takes-just-six-minutes-for-a-dog-to-die-in-a-hot-car-99692
5月ならまだ大丈夫?車内での熱中症の危険(JAFユーザーテスト)
>https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature/heatstroke
真夏の車内温度(JAFユーザーテスト)
>https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature/summer
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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