避妊・去勢の手術は飼い主さんにとっても犬にとっても大きな決断ですね。
手術を迷っている内に犬が高齢になってしまったり、事情があって手術を受けられなかった方もいらっしゃると思います。
避妊・去勢手術を受けていない場合、ホルモンに関する病気が年齢が上がるごとに起きやすくなります。
そのため、「どんな行動や変化があったら要注意なのか」しっかり覚えて、いち早く病気に気づけるようになりましょう。
<目次>
「避妊手術を受けていない」犬が注意する3つのこと!
①乳腺にしこりができていないか
犬の女の子の乳房付近にしこりができたら、「乳腺腫瘍」の可能性があります。
ホルモンの影響で発生すると考えられており、犬の女の子の腫瘍でもっとも発生が多い病気です。
年齢が高い犬や未避妊の犬に発生することが多いため、高齢になったり避妊手術を受けていない場合は、こまめに乳房付近をチェックするようにしましょう。
腫瘍の「良性」・「悪性」の割合は半々ほどなので、早期に発見して治療に入ることが、今後の生活を多く左右します。
➁多飲多尿・多食・お腹が膨れていないか
避妊手術で予防できる病気では無いですが、ホルモンの影響で起こる病気の中に「クッシング症候群」があります。
腎臓のすぐそばに「副腎」という臓器がありますが、そこから異常に「ホルモン」が分泌されるようになってしまい、体に悪影響(糖尿病・膀胱炎など)を与える病気です。
この病気になると、下記のような症状が現れます。
▼「クッシング症候群」の症状
・いっぱい水を飲んで、いっぱい尿を出す
・たくさん食べるようになる
・お腹が膨れてきた(肥満と勘違いされやすいので注意)
・毛が抜ける
高齢になるとホルモンの病気を起こしやすくなるので、注意喚起として「注意する3つのこと!」に入れさせていただきました。
特に「飲水量とは排尿量」は、さまざまな病気の初期症状として現れることが多いです。
いち早く異変に気づいてあげられるように、日頃から愛犬のチェックを欠かさないようにしましょう。
➂陰部から膿が出ていたり、多飲多尿になっていないか
未避妊の犬の女の子がかかりやすい病気に「子宮蓄膿症」があります。
細菌に感染して子宮の中にどんどん膿が溜まってしまい、処置が遅くなれば命を落としてしまう恐ろしい病気です。
子宮蓄膿症にかかると、下記のような症状が現れます。
▼「子宮蓄膿症」の症状
・陰部が汚れていたり、膿が出ている
・発情による出血がいつもより長い
・いっぱい水を飲んで、いっぱい尿を出す
・下痢や嘔吐
・熱がある
この病気の怖いところは「陰部から膿が出る場合(開放性子宮蓄膿症)」と「陰部から膿が出ない場合(閉鎖性子宮蓄膿症)」の2パターンあることです。
膿が出ていれば、飼い主さんも発見しやすいのですが、膿が出ないパターンだと発見が遅くなる可能性があります。
発見が遅くなると、膿で子宮が破裂してしまったり細菌感染の影響で全身に炎症が起きてしまうなど、非常に危険な状態におちいります。
陰部の汚れだけでなく、犬の行動もしっかりとチェックするようにしましょう。
「去勢手術を受けていない」犬が注意する3つのこと!
①排泄をするときに痛がったり、何度もふんばったりしないか
去勢手術を受けていない犬は、排泄のときの仕草をよく観察するようにしましょう。
下記のような仕草が見られたら「前立腺肥大」の可能性があります。
▼「前立腺肥大」の症状
・排泄をするときに痛がる
・尿に血が混じっている
・尿量が減った
・何度も排泄のポーズを取るが、排泄しない
・トイレで何度も踏ん張っている
前立腺肥大は去勢を受けていない男の子の犬によく見られるホルモンの病気で、年齢が高くなると発症率が高くなります。
上の図を見るとわかるように前立腺が大きくなるので、近くにある肛門付近や膀胱を圧迫して、痛みや排尿困難、※しぶりを引き起こします。
※しぶりとは、直腸が圧迫されて「便がないのに便意を起こす状態」です。
何度も排泄のポーズを取るけど、便が出ないといった行動を引き起こします。
排尿困難になると尿毒症を引き起こすため、1日でも尿が出ないと大変危険です。
排泄のときに痛がったり、しぶりが見られたら、すぐに動物病院に行きましょう。
➁肛門まわりに「できもの」がないか
日常のスキンシップのときに、肛門にできものがないかもチェックしましょう。
去勢手術を受けておらず、年齢が高い男の子の犬は「肛門周囲腺腫」を引き起こす可能性があります。
肛門周囲腺腫は、肛門近くにある皮脂の分泌腺から発生する腫瘍(良性と悪性があります)で、ホルモンが関与していると考えられています。
最初は小さい腫瘍でも犬が気にして何度も舐めたり擦ったりすれば、大きくなりますし出血もします。
肛門の近くが腫れあがると排便困難になりますし、化膿してしまうと非常に痛いです。
肛門に「できもの」を見つけたら、すぐに動物病院で診察を受けましょう。
➂乳房が張っていたり、脱毛や色素沈着がないか
タイトルを読んで「男の子なのに乳房が張ることがあるの?」と思われたかもしれませんが「精巣腫瘍」という病気になると症状として現れる場合があります。
精巣腫瘍は生殖器の精巣が腫瘍化してしまう病気で、未去勢で年齢が高くなると発症率が高くなります。
この病気にかかると、下記のような症状が現れます。
▼「精巣腫瘍」の症状
・左右の精巣(睾丸)のサイズが違う
・精巣(睾丸)の形がいびつ
・後足の内側のつけ根に「しこり」のようなものが触れる
・女性ホルモンが多く分泌され、乳房が張る
・脱毛
・皮膚に色素沈着が現れる
早期に発見して手術をすれば、完治する可能性が高い腫瘍ですが、気がつかないとホルモンの影響で雌性化(男の子なのに女の子の特徴を持つようになる)したり、貧血や白血球の減少を引き起こすなど、生活に支障をきたすようになります。
一見、精巣とは関係もなさそうな症状もありますので、日常のスキンシップの中で、体に異常が出ていないか、しっかりとチェックしましょう。
いかがでしたか?
年齢が高くなるとホルモンに関する病気も起きやすくなります。
未去勢・未避妊の場合、発症する可能性が高い病気もあるので、「もっと早く気づいてあげられれば!」と後悔しないように、しっかり症状を覚えて「早期発見」できるようにしていきましょう。
<参考書籍>
小動物獣医看護学 小動物看護の基本と実践ガイド 上巻・下巻 西田 利穂 (翻訳), 石井 康夫 (翻訳), D.R.Lane B.Cooper
<参考URL>
動物の病気 セルトリー細胞腫 あいむ動物病院
https://www.119.vc/illness/archives/130
犬の避妊(卵巣除去)/去勢に関する長期的な健康面でのリスクと利点
http://at-b.com/wordpress/wp-content/uploads/2013/05/LongTermHealthEffectsOfSpayNeuterInDogs-wayaku2.pdf
Neutering of German Shepherd Dogs: associated joint disorders, cancers and urinary incontinence
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5645870/
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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