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「犬の抜歯で後悔しないために」抜歯の必要性は?生活に影響はあるの?【動物看護師が解説】

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歯に問題があったり、重度の歯周病の場合、抜歯を勧められることがあります。

でも飼い主さんとしては「ご飯が食べられなくなるのでは」「本当に抜かないとダメなの」など心配事も多いですね。

犬の抜歯で後悔をしないために「どんなときに抜歯が必要なのか」や「生活に影響がでるか」などをしっかりと学んでいきましょう。

どんな時に抜歯が必要なの?

歯石除去に行ったら、抜歯を勧められてびっくりしたという話はよく聞きますね。

では、どんな時に抜歯が必要だと判断されるのでしょうか。

動物病院や獣医師さんによって違う場合もありますが、大まかに「6つ」抜歯の基準があります。

抜歯が必要となる基準は?
①永久歯と乳歯が一緒に生えている場合
➁歯が残っていると治療できない病気になっている場合
➂歯が折れている場合
④歯周病が悪化してあごの骨が溶けたり折れたりしている場合
➄激しく歯がぐらついている場合
⑥歯を支える骨が溶けて歯の根元が見えている場合

文字で見てもイメージがつきにくいものもあるので、1つずつ見ていきましょう。

①永久歯と乳歯が一緒に生えている場合

犬も人と同じように子供の歯(乳歯)から大人の歯(永久歯)に生え変わります。

しかし生え変わりの時期に、うまく乳歯が抜け落ちないと上の図のように、乳歯と永久歯が一緒に生えてしまいます。

乳歯と永久歯が一緒に生えると、歯並びが悪くなるのでご飯が食べにくかったり、歯の隙間に歯垢が溜まりやすくなります。

そのため、今後の予防のために抜歯を勧められることが多いです。

また乳歯が永久歯の生え変わりを邪魔している場合も、抜歯を勧められます。

※自然に抜け落ちる場合もあるので、6カ月齢ごろが抜歯するか否かの目安になります。
※まれに永久歯が生えないこともあるので、その場合は検査をして抜歯するか否かを決めます。

➁歯が残っていると治療できない病気になっている場合

歯が残っていると治療できない場合も、抜歯を勧められます。

●口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)
●根尖周囲病巣(こんせんしゅういびょうそう)

上記のような病気を聞いたことがあるでしょうか?

どちらも「歯周病が悪化して起こる病気」で、炎症が歯の根元まで進むと歯の根元に膿が溜まったり、頬や鼻に穴が空いてしまいます。

抜歯をして歯の奥の治療をしなければ、根本的な改善は難しいので、抜歯をおすすめされます。

➂歯が折れている場合

硬い物をかじったり、何かにぶつかった拍子に歯が折れてしまうことがあります。

歯が折れると痛みや菌への感染など、今後トラブルを起こす可能性が高くなります。

歯が折れると修復できる場合とできない場合があり、修復が難しいと判断した場合はトラブル予防のために抜歯をおすすめされます。

④歯周病が悪化してあごの骨が溶けたり折れたりしている場合

「歯周病であごが骨折するの?」と思うかもしれませんが、歯周病が進行すると歯の下にあるあごの骨まで溶けてしまいます。

そのため、あごが非常にもろい状態になり、ちょっとした衝撃で骨折をしてしまいます。

あごの骨を溶かすほど歯周病が進行している状態なので、抜歯を勧められることが多いです。

➄激しく歯がぐらついている場合

歯周病が悪化すると、歯を支える歯肉が歯から離れてグラグラになります。

物を噛んだり食事をするたびに、歯が動いて圧力がかかるので非常に痛いです。

痛みを改善したり、歯周病に治療のために抜歯を勧められます。

⑥歯を支える骨が溶けて歯の根元が見えている場合

先ほど歯周病が悪化すると骨まで溶かすとお話ししました。

歯周病は歯の根元を支える骨(歯槽骨といいます)も溶かしてしまうので、上の図のように歯槽骨が下がって歯の根元が見える状態になります。

歯槽骨が自然に治ることはないので、悪化を防ぐために原因となる歯の抜歯をすすめられます。

なんとなく、抜歯をする基準がおわかりいただけたでしょうか。

抜歯をすると、ご飯が食べられなくなる?

「抜歯」を勧められたときに、飼い主さんが一番心配なのが「ご飯が食べられなくなるのでは?」ということですね。

しかし仮に全ての歯を抜歯したとしても「歯がないからご飯が食べられない」ということはありません。

人の歯は何度も噛んで食べ物をすりつぶすという役割がありますが、犬の歯は喉を通る大きさにちぎるのが役割です。

食べ物をあげたときにあっという間に飲み込んでしまうのは、人のようにすりつぶす必要がないからなんですね。

今まであった歯がなくなって多少の食べづらさはでてきますが、フードの粒を細かくしたりお湯でふやかすなどの配慮をすれば、抜歯をしてもちゃんとご飯を食べることができます。

逆に歯が無いのが可愛そうだからと、トラブルをそのままにしておく方が、歯の痛みでご飯が食べれないということが起きてしまいます。

抜歯をしないと、治らない病気もある

最初に少し触れましたが、抜歯をしないと治らない病気もあります。

口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)

歯周病の悪化で歯周ポケットが深くなり、口の中と鼻の穴が繋がってしまった状態です。

「口の中と鼻」が繋がっている状態なので、鼻から血や膿がでたり、食事が口から気道に入ってしまい「誤嚥性肺炎」を引き起こす可能性が高くなります。

根尖周囲病巣(こんせんしゅういびょうそう)

歯周病が悪化し、頬や歯ぐきに穴が空いてしまう病気です。

歯の根元に膿が溜まるので、頬から血や膿が出て非常に痛々しい状態になります。

「できる限り歯を残したい」という気持ちもわかるのですが、歯の奥でトラブルが起こっていると、原因となる歯を抜かない限り治療することができません。

治療を先延ばしにしていると、菌が口から血流にのって全身に広がり、心臓や腎臓などに炎症をおこす可能性が出てきます。

歯を残せるのが一番ですが、抜歯に否定的な気持ちばかり持つと、別のトラブルを引き起こすことがあるので注意が必要です。

抜歯以外の治療方法はないの?

今まで抜歯の必要性や抜歯が必要な基準をお話ししてきましたが、なるべく歯は残してあげたいというのが飼い主さんの心情ですね。

「抜歯」以外の治療法はないのでしょうか。

歯周病が悪化すると、歯肉や歯を支える骨が溶けてしまうとお話ししました。

歯の根元に特殊な薬剤を塗ることで、歯の周りの組織の修復を促すことができます。

エムドゲイン法と呼ばれ、人の歯科でも取り入れられている方法です。

「取り入れている動物病院が少ないこと」「重度の歯周病は修復が難しいこと」の2点が難点ですが、歯を残してあげたいという飼い主さんの希望に沿った治療方法です。

歯がグラグラしている、歯周病がひどいという場合は、歯専門の動物病院に相談してみてはいかがでしょうか。

抜歯と聞くと「かわいそうだから避けたい」と思ってしまいますね。

でも抜歯に否定的になりすぎると、別のトラブルを引き起こす場合もあります。

トラブルを起こさないために、抜歯の判断基準をぜひ覚えてみてくださいね。

<参考書籍>

基礎から学ぶ小動物の歯科診療 Vol.1 藤田桂一  (著)

<参考URL>

犬と猫のやさしい歯科 歯周組織再生療法~エムドゲイン法~
>http://dentalcare.primo-ah.com/service/emdogain/

pet_dental 2021年3月7日 歯科インスタライブ サーカス動物病院 院長/歯科担当 平塚彰吾
>https://www.instagram.com/p/CMHVwZGplzV/

<画像元>

Unsplash

写真AC

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伊藤さん

伊藤さん

・倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手

やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。

大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。

愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。

「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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