ネットで「犬 口臭」と検索すると、さまざまな口臭ケアグッズや自宅で歯石取りをする道具がヒットします。
しかし、「口臭を消すには口臭スプレーをすればいい・歯石を取ればいい」と思っていると、根本的な解決にならないだけでなく、愛犬に怪我をさせてしまうかもしれません。
口臭や歯石にお悩みの飼い主さんには、ぜひ愛犬のために正しい知識を身に着けていただければと思います。
<目次>
自宅での愛犬の歯石取りは危険?!
自宅での歯石取りグッズとして「スケーラー」「ペンチ」「鉗子(かんし)」がなど販売されています。
しかし、「日本小動物歯科研究会」からは「犬の口腔内の知識がない」「器具の訓練を受けていない」者が歯石をとるのは非常に危険な行為であると注意喚起が出されています。
自宅での歯石取るのが、どうしてそんなに危険なのでしょうか?
<自宅で歯石取りをするデメリット>
●愛犬が痛い思いをする
●愛犬が怪我をする可能性
●歯垢や歯石がより付着しやすくなる
●歯石をとるだけでは不十分
愛犬が痛い思いをする
歯石が付着していると歯ぐきに炎症が起こります。歯石を取るために炎症部分に触れるので、わんちゃんは非常に痛いです。
また、目で確認できない部分が膿んだり腫れている可能性もあります。
上記のわんちゃんも一見歯がしっかりしているように見えますが、調べてみると歯の奥が膿んでしまっていたそうです。
目視だけで判断して歯石を取ろうとすると、わんちゃんが辛い思いをすることがあるので注意が必要です。
愛犬が怪我をする可能性
スケーラーや鉗子(かんし)の先には、刃物がついています。わんちゃんがちょっと動いたり、手元が狂っただけでも簡単に口内を傷つけてしまいます(唾液がついてるので歯も滑りやすいです)。
また、舌の近くには太い血管や唾液腺があるので、ちょっとでも傷つけただけでも大事故に繋がりかねません。
実際に「日本小動物歯科研究会」には、鉗子で歯石を取ろうして歯を折ってしまった事故が報告されています。
歯垢や歯石がより付着しやすくなる
歯石を取った後の歯の表面はザラザラしています。動物病院であれば、歯を研磨してツルツルにできますが、自宅だと難しいですね。歯の表面がザラザラしたままだと、歯垢や歯石が余計に付きやすくなってしまいます。
歯石をとるだけでは不十分
歯石が目立つと歯石を取ることが目的になりがちですね。
しかし、歯石だけを綺麗にしても、歯周ポケットのケアができていないと、口臭対策や歯の病気(歯周病)の予防の効果は十分に得られません(次章で詳しく解説します)。
愛犬の歯石取りだけでは口臭対策にならない
自宅で歯石を取るのは、多くの危険やデメリットがあることがわかりましたね。
そのデメリットの中で、歯石を取るだけでは「口臭対策」や「歯の病気(歯周病)予防」には不十分とお話ししました。
どうして歯石取りだけでは、十分な口臭対策や歯の病気(歯周病)予防にならないのでしょうか?
まず口臭の方から見ていきましょう!
<犬の口臭の原因は?>
●歯や歯石に付着した菌が出す匂い
●歯周ポケットに潜む細菌が出す匂い
●歯肉が腫れたり膿んだりして出る匂い
上の図を見るとわかりますが、犬の口臭の原因は主に「歯や歯石に付着した菌」や「歯周ポケットに潜む菌」が食べカスなどを分解するときに出すガスの匂いです(ドブの臭いとよく言われますね)。
歯石に付着している菌は、歯石を取り除けばいなくなりますが、歯周ポケットに潜む菌は歯石を取ってもそのまま残ります。
また、歯周ポケットに潜む菌が炎症を起こせばそれも匂いの元になります。
つまり歯石取りももちろん必要ですが、それと合わせて歯周ポケットもケアしないと、口臭対策は十分とは言えないのです。
歯石取りだけでは歯の病気(歯周病)予防にならない
口臭対策には、歯石を取り除くだけでなく歯周ポケットのケアも必要とお話ししました。
同じく、歯の病気(歯周病)予防の面でも歯周ポケットのケアが必要です。
歯周病の原因は?
歯周病の原因は歯石だと思っているかもしれませんが、正しくは歯周ポケットに潜む菌が原因です。
この菌は酸素が苦手なので、歯周ポケットの奥へ奥へと逃げようとします。その過程で炎症を起こしたり、アゴの骨を溶かしたりします。これが歯周病です。
つまり、歯石取りをして菌の付着を少なくすることも大切ですが、歯周ポケットのケアもしないと歯周病になってしまうのです。
実際に歯石は綺麗に取っていたけれど、見えない所で歯周病が進行し抜歯になってしまったケースが報告されています(上の画像)。
目に見える歯石だけを綺麗にすれば良いというわけではないのです。
歯の病気から愛犬を守るために飼い主さんができるケアは?
さて、今までの内容で下記のことがわかりました。
●自宅での歯石取りは多くのデメリットがある
●口臭対策は「歯石取り」プラス「歯周ポケットケア」が必要
●歯周病予防も「歯石取り」プラス「歯周ポケットケア」が必要
では、このことを踏まえて飼い主さんができるケアはなんでしょうか?
<飼い主さんができるケア>
①動物病院で適切な治療を受ける
➁歯みがきを頑張る
➂口内環境を整えるグッズも併用
①動物病院で適切な治療を受ける
口臭対策にも歯周病予防にも、歯周ポケットのケアが必要とお話ししました。しかし、自宅で歯周ポケットのケアをすることはできません。
歯石が溜まっている歯ぐきは炎症を起こしているので、歯周ポケットを触るとものすごく痛いです。
目に見えない悪化もあるので、歯石が付いている場合は動物病院で適切に処置してもらいましょう。
➁歯みがきを頑張る
動物病院で歯石や歯周ポケットを綺麗にしてもらったら、歯みがきを頑張りましょう。
歯に食べカスが付いたままだと、菌が増えて歯周ポケットにも入り込みやすくなりますし、硬い歯石にもなってしまいます。
歯ブラシが難しいようなら、歯みがきシートや濡らしたタオルなどで、食べカスや歯の汚れを取ってあげるだけでも歯石になるのを防いだり歯周病の対策になります。
口になかなか触れないという方は、動物病院の歯みがき教室に参加してみましょう。
➂口内環境を整えるグッズも併用
歯みがきにプラスして、口内環境を整えるグッズも併用しましょう。
口の中に垂らしたりスプレーをして、炎症を抑えたり口の中の菌数を減らしたりするグッズもありますし、継続的に取ることで口内環境を整えていくサプリメントもあります。
菌を減らすグッズを併用することで、歯周ポケットを綺麗にしたり歯石を付きにくくすることができます。
口臭や歯周病の仕組みがわかると、なんとなく気をつけるポイントがわかるのではないでしょうか。
歯石が付いていると歯石を落とすことを頑張りがちになりますが、根本的な解決には歯周ポケットのケアも大切です。
<参考URL>
>愛犬のお口の中のケアとトラブル。犬の歯医者さんが解説します クラブサンスター
https://www.club-sunstar.jp/article/column/oral/2582/
>無麻酔で歯石をとる?!日本動物歯科研究会
https://ivypetclinic.com/_src/sc2858/93FA967B8FAC93AE95A88E9589C88CA48B8689EF814096B39683908C83X83P815B838A839383O82C982C282A282C4.PDF
<画像元>
Unsplash
写真AC
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
最新記事 by 伊藤さん (全て見る)
- 「愛犬と食べたい秋・冬が旬の果物」与えてOKな果物とNGな果物知ってる? - 2024年11月12日
- 「長生きする犬の共通点は?」長生きさせるための飼育環境や年齢別の注意点を解説 - 2024年11月4日
- 「犬の歯が欠けやすいオヤツ・オモチャ5選」選ぶときのポイントや歯が欠けたときの対応も解説 - 2024年10月29日
- 「犬の睡眠が足りないとどうなる?」犬の睡眠不足がまねく病気や睡眠不足のサインを解説 - 2024年10月22日
- 「習慣化で病気をまねくおそれも」犬の皮膚や毛、耳によくないNG習慣 - 2024年10月18日