「愛犬の外耳炎が治らない」「外耳炎を繰り返してしまう」といったお悩みはありませんか?
きちんと耳掃除もしているし点耳薬も使っているのに、なかなか治らないのはなぜでしょうか。実は、外耳炎の直接の原因にアプローチしていなかったり、菌がいなくなれば良くなると思っていると、外耳炎が治りにくい状況を招いてしまいます。
外耳炎を治すために大事なポイントを一緒に学んで行きましょう!
犬の外耳炎の原因はマラセチア菌ではない?!
わんちゃんの耳が臭ったり、黒い耳垢が出で動物病院に行くと「マラセチア菌」が増えているからお薬で菌を減らしましょうと言われたことはありませんか?
そして、マラセチア菌を退治するための点耳薬が出されます。
マラセチア菌とは?
犬の体に元々いる常在菌です。
普段は悪さをしませんが、何らかの原因で増えると炎症を起こすなどの悪さを始めます。
でも実は、マラセチア菌は外耳炎の直接の原因ではありません。
別の原因で外耳炎が起こった結果、マラセチア菌が増える環境になって外耳炎を悪化させているだけなのです。
つまり、外耳炎を起こした直接の原因を突き止めないと、増えたマラセチア菌を退治するだけでは一時的に良くなってもなかなか治りませんし、繰り返してしまいます。
「外耳炎がなかなか治らない」「外耳炎を繰り返してしまう」というわんちゃんは
●外耳炎を起こした直接の原因を見つけること
●マラセチア菌は外耳炎の直接の原因ではない
この2点を意識することが、改善していくポイントになります。
犬の外耳炎の直接の原因とは?
治らない外耳炎には、下記2点を意識することが大切とお伝えしました。
●外耳炎を起こした直接の原因を見つけること
●マラセチア菌は外耳炎の直接の原因ではない
では外耳炎を引き起こす直接の原因とは、一体なんでしょうか。
●アトピー性皮膚炎
●食物アレルギー
●ミミダニ症(ミミダニは寄生虫です)
●耳の中に異物(植物・砂・抜け毛など)
●腫瘤(耳の中にイボやポリープなどができている)
●脂漏症(代謝異常の病気で脂っぽくなる)
●内分泌疾患
●体質(アメリカンコッカースパニエルは脂線が多いので外耳炎を起こしやすい)
一見、外耳炎と関係なさそうな皮膚の病気もありますね。
しかし皮膚と耳の関係は深く、点耳薬の中には炎症を抑えるステロイドが含まれているので、実はアトピー性皮膚炎を緩和していて原因に気が付かなかったということもあるのです。
外耳炎を繰り返さないためには、まず外耳炎を起こしている直接の原因を突き止めることが改善への早道です。
愛犬が外耳炎を繰り返す、なかなか治らない場合は耳科専門医へ
「犬の外耳炎がなかなか治らない」「外耳炎を繰り返してしまう」という場合には、一度耳科専門の獣医師さんに診てもらうことをオススメします。
理由は3つあります。
①耳の状態を詳しく確認できる
➁耳に色々なアプローチが取れる
➂症例経験が豊富
①耳の状態を詳しく確認できる
外耳炎になると耳垢などの汚れを外に押し出す機能が悪くなります。
そうすると下の図のように耳垢や膿が溜まったり、汚れによって菌が増殖し耳の穴が腫れてしまいます。
その状態で菌を退治したり炎症を抑える薬を使ってもうまく届きません。
そのため、わんちゃんの耳の状態がどうなっているのか詳しく確認することが大切なのですが、犬の耳の穴は目視だけで確認するのが非常に難しいです。
▼下の図は犬の耳の構造です。水平耳道の所に汚れが溜まったり腫れたりすると、非常に見えにくいのがわかりますね。
耳科専門の獣医師さんは、耳を細かく見る機械を導入しているので、耳の状態を詳しく把握することができます。
➁耳にさまざまなアプローチが取れる
先程、耳専門の獣医師さんは耳を細かく見る機械を導入しているとお伝えしました。
その機械名を「オトスコープ(耳の内視鏡)」といいます。
オトスコープを使うと、耳の中を細かく見れたり、綺麗に耳の中を洗浄できたり、耳の中の異物や汚れや腫瘤などを取り除くなど、外耳炎に対してさまざまなアプローチを取ることができます。
上記の画像は点耳薬を使ったけれど、なかなか外耳炎が改善しなかったというわんちゃんの写真です。
赤く腫れて耳の穴が塞がってしまい、膿が出てしまっていますね。
炎症を抑えたり抗生物質を使いつつ、オトスコープ(耳の内視鏡)で治療をしたそうです。
▲オトスコープでの洗浄の様子
耳の中に毛と汚れの塊(異物)が入っており、それが原因で外耳炎を起こしていました。
オトスコープを使うことで、耳の穴の状態を細かくチェックでき、原因となる異物を取り除き、綺麗に洗浄できたことで外耳炎は改善しました。
なかなか治らない外耳炎に対し、色んなアプローチ方法を取れるのが強みのオトスコープですが、持っていない動物病院もあるので耳科専門医(もしくは耳科皮膚科が得意な動物病院)に行くことをオススメします。(※オトスコープは麻酔下での使用の場合があります)
➂症例経験が豊富
外耳炎の原因は多くあり、中にはさまざまな要因が複雑に絡み合って治りにくい外耳炎を招いている場合があります。
外耳炎はわんちゃんによく起こる病気ですが、慢性化したり長引いたりすると、外科手術が必要になることもあります。
耳科専門の獣医師さんは症例経験が豊富なので、さまざまなアプローチ方法を取って改善に導いてくれます。
いかがでしたか?
外耳炎の原因はよく耳垢などの汚れがあるから、マラセチア菌がいるからと聞きますね。
しかし、実際には外耳炎の直接の原因にアプローチしていないことや耳の状態を細かく把握できていないことが、治らない外耳炎を招いてしまっています。
点耳薬を使ってもなかなか良くならない、毎年のように外耳炎を繰り返してしまうというわんちゃんは一度、耳科専門医に相談するのはいかがでしょうか。
<参考文献>
・アジア動物スキンケア検定 公式テキスト 動物スキンケア実践ガイド 岩﨑 利郎 (著)
・イラストでみる犬の病気 編集 小野 憲一郎 今井 壯一 多川 政弘 安川 明男 後藤 直彰
・耳科診察 サーカス動物病院
https://circus-ah.com/dermatology/otology/
・Video otoscopeを用いた治療が有効であったアメリカンコッカースパニエルの耳道閉塞の1例 獣医臨床皮膚科
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjvd/15/4/15_4_207/_pdf
・犬の外耳炎って?原因・症状・治療・予防法まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】
https://magazine.vdt.co.jp/2849/
<画像元>
Unsplash
写真AC
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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