過ごしやすい季節の秋は絶好の行楽シーズンです。愛犬と一緒に川や山など自然を満喫しにお出かけする方も多いのではないでしょうか。
秋のお出かけでぜひ気をつけてもらいたいのが、愛犬へのマダニの寄生です。
身近に潜むマダニの危険性をしっかりと把握しておきましょう。
夏から秋にかけてはマダニの発生シーズン
マダニの発生シーズンというと、「春」のイメージがありますね。
しかし実は、秋は幼ダニ(ふ化したばかりのマダニ)や若ダニ(幼ダニと成虫の間の時期)が多く発生するシーズン。
上記グラフを見ると8月~9月にかけて寄生数が一気に伸びているのがわかります。
寄生されないために年間を通したマダニ対策やお出かけ前のマダニ対策が重要ですね。
どこでマダニに感染するの?
マダニは日本全国どこにでも生息していますが、特にマダニが好む場所として知られているのが河原の草むらや山林などです。
葉っぱの先端や裏側に身を潜ませて、ハラー氏器官とよばれる独特の器官で体温や振動、二酸化炭素を感知してわんちゃん(人も)の体に飛び移ります。
山や河原近くに行っていなくても安心はできません。草むらであれば潜んでいる可能性があるので、都市部の公園や土手などの草むらでも感染するリスクがあります。
愛犬がマダニに感染したらどうなる?
マダニに感染=血を吸われるというイメージがありますね。
吸血による貧血など血を吸われることによる影響ももちろんありますが、マダニの恐ろしいところは命の危険もあるさまざまな病気を媒介する所です。
成長や産卵に必要な栄養分を摂取するために、マダニは吸血をします。
吸血中はただ血を吸うだけではなく、血液の凝固を防ぐ成分や感覚をマヒさせる成分などさまざまに成分を含む唾液を分泌しています。(そのためマダニの噛まれていてもわんちゃんが痛がったり、気づいたりすることは少ないです。)
マダニの唾液腺には病原体が潜んでいることがあり、唾液を通じて病検体が体の中に入ってきます。
マダニが媒介する病気・症状
貧血
大量に寄生をされた場合、貧血を起こす場合があります。
アレルギー性皮膚炎
マダニの唾液やちぎれたアゴがアレルゲンとなり、皮膚炎や強いかゆみを引き起こします。
バベシア症
マダニの中に潜む寄生虫(バベシア原虫)がわんちゃんの赤血球に寄生して破壊します。そのため、感染したわんちゃんは貧血や発熱、食欲不振の症状が現れます。
症状が重い場合は、黄疸などがみられ死にいたるケースもあります。
全国どこでも感染リスクがある恐ろしい病気です。
ライム病
スピロへータという細菌に感染することによって発症します。発熱や食欲不振、関節炎、全身性麻痺などの神経症状を引き起こします。
この病気の怖いところは、わんちゃんだけでなく人への感染例も報告されているところです。
人に感染した場合も、歩行異常や神経過敏などの神経症状、関節炎、赤みがでるなどの皮膚症状が現れます。
リケッチア(日本紅斑熱)
わんちゃんではなく、飼い主さんが要注意の病気です。感染すると発熱や全身の発疹が現れます。
2020年8月には千葉県でマダニに噛まれて日本紅斑熱を発症し亡くなったという事例が起きています。
ダニ麻痺症
マダニによっては唾液に毒性物質を持っている種類もいます。毒性物質が体の中に入ると神経障害や筋肉麻痺を引き起こします。
マダニを見つけたら?
山や河原、散歩などから帰ったら必ずマダニが体についていないかチェックしましょう。
マダニは皮膚が薄いところを好んで噛むので、頭や耳、指の間や顔まわりなどを重点的にチェックしましょう。
もし、マダニを発見しても絶対につぶしたり、取ろうとしてはいけません。
体の中に卵が入っていればつぶれた拍子に卵が広範囲に広がってしまいますし、引っ張るとアゴの部分がちぎれて皮膚に残ってしまいます。
アゴが残るとその部分から皮膚炎をおこしたり、引っ張った拍子に病原体が体の中に入ることがあります。
マダニに噛まれてから48時間以内であれば、病原体に感染するリスクは低いと言われています。
マダニを発見したら、すぐに動物病院に行きましょう。
マダニが媒介する病気にさせないためには、まずマダニに寄生させないという事が重要になります。
山や河原に行く前に駆除薬を使用する、洋服を着せて露出を少なくする、なるべく草むらを避けるなどマダニに寄生されないための工夫をしましょう。
<参考文献>
・眼のないダニは世界をどう「見て」いるか 島野 智之
・マダニを知ろう Life With Pet
・犬 Babesia gibsoni 感染症の発生状況に関する全国アンケート調査 日獣会誌
・広島県における犬の紅斑熱群リケッチアの浸潤状況調査について
・広島県獣医学会雑誌
・マダニで日本紅斑熱に感染した女性が死亡…の飼い主が注意すべきことは?ヤフーニュース
・マダニのもたらす病気や被害 フロントラインプラス
<画像元>
illust STAMPO
ICOOON MONO
Unsplash
イラストAC
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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