実は夏は皮膚病が増える季節。みなさん、愛犬に保湿などのスキンケアはされていますか?
人では当たり前に行われている保湿ですが、犬にも保湿の重要性が認識され、最近ではアトピー性皮膚炎の治療にも取り入れられています。
どうして夏に犬の皮膚病が増えるの?
上図は季節ごとの皮膚病の診療件数です。他の季節に比べて、夏に件数が伸びているのがわかりますね。
梅雨から夏にかけては気温や湿度が高くなるため、雑菌が繁殖しやすい環境になります。
肌が乾燥したり、荒れたり、傷があるとその部分から雑菌が入りこんで増殖し皮膚病を起こします。
乾燥は冬のイメージがありますが、夏もエアコンや紫外線ダメージによって皮膚が乾燥しやすい季節と言えます。
犬に保湿が重要な理由は?
皮膚には、体の外側のさまざまな刺激から守るバリア機能があります。このバリア機能によって、ウィルスや細菌、アレルゲンの侵入を防いだり、紫外線の障害を防いだり、乾燥から守ることができます。
バリア機能を保つには、皮膚の最も外側にある「角質層」に水分が保たれていることが重要です。
シャンプーをした後に保湿しない、湿度が低い環境にいたりすると、皮膚の水分を失ってしまい皮膚が乾燥します。
乾燥した皮膚はバリア機能が働かないため、細菌などに感染しやすく、花粉やダニ、食べ物などのアレルゲン物質が皮膚に取り込まれやすくなります。
実際に人では、新生児期の保湿ケアでアトピー性皮膚炎の発症リスクが3割低下したという研究がでています。
皮膚病を起こさないために保湿はとっても重要なんですね。
保湿に重要なポイント4つ
保湿剤の成分をきちんと確認しよう!
保湿剤の裏を見るといろいろな成分が書かれていますね。
保湿成分は大きく分けると4種類あります。
①皮脂を補い、水分の蒸散を防ぐ「ワセリン・スクワラン」
➁細胞間脂質を補う「セラミド・脂肪酸」
(細胞の間を隙間なく埋めることで外からの刺激を防ぐことができる)
➂水を引き付ける「ヒアルロン酸・コラーゲン・グリセリン」
④角質細胞に水を含ませて柔らかくする「尿素・乳酸」
犬用の保湿剤はこれらの成分を組み合わせて作られていますが、保湿の働きを覚えて愛犬のお肌の状態に合わせて選んであげることが大切になります。
一度、獣医師さんや皮膚科専門医にどの保湿剤が愛犬に向いているか相談するといいですね。
こまめに保湿しよう!
保湿は定期的にこまめにしてあげましょう。
犬のアトピー性皮膚炎における保湿効果を調べた結果では、3日おきに保湿剤を塗ると皮膚(角質構造)の改善がみられた、週3回塗ると症状に改善が見られたと報告されています。
私たちも保湿は1カ月おきとかではなく、毎日しますよね。愛犬にも継続してこまめに保湿してあげることが大切です。
保湿剤の特徴を覚えよう!
一口に保湿剤といっても、ローションやクリーム、スプレーなど色々な形状がありますね。
形状によって使用感に差が出るだけでなく、皮膚への浸透性や刺激性にも差があることをご存じでしょうか。
最近は、広範囲に塗りやすく摩擦も軽減できる泡タイプの保湿剤も出ています。
形状の特徴を知ることは、正しく保湿してあげるためのポイントのひとつですね。
たっぷり保湿しよう!
保湿するといってもどれくらいの量を塗ればいいのか迷ってしまいますね。
乳液やローシュンであれば1円玉と同じ大きさ、クリームや軟膏であれば人差し指の第一関節くらいの量で手のひら2枚分の広さを保湿することができます。目安として覚えておくといいですね。
また、形状によって塗りやすい場所、塗りにくい場所があります。
例えば、油分の多いクリームやオイルは毛の薄い場所、サラサラのローションは毛の多い場所など使用する場所によって保湿の形状を使い分けると、しっかりと保湿することができます。
全身をまんべんなく保湿したい場合は、お風呂の中に保湿剤を入れる保湿浴という方法もあります。
NGな保湿方法って?
クリームや軟膏を塗るときに、指につけてグリグリ塗っていませんか?
犬の皮膚は人よりも薄くてデリケートです。一カ所に力をいれて塗ると摩擦で皮膚を傷めてしまいます。
保湿剤を塗るときは、何カ所かに分けて保湿剤をおき、優しくマッサージをするように手のひらを使って塗ってあげましょう。
また、保湿剤を塗る前に拭き取りシートなどで汚れを軽く拭いてあげましょう。汚れたまま保湿してしまうと、保湿成分が浸透しづらくなります。
愛犬に日常的に保湿をするという習慣はまだまだ根付いていません。
夏場の皮膚病予防のために、ぜひ保湿習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。
<参考文献>
・アジア動物スキンケア検定 公式テキスト 動物スキンケア実践ガイド 岩﨑 利郎 (著)
・飼い主さんに知っていて欲しい『保湿の話』
・わが国の犬における皮膚病の罹患状況 日本小動物獣医学会
・新生児期の保湿がアトピー発症率を3割減に 日経メディカル
・スキンケアでアトピーマーチは予防できるのか 日本皮膚科学会総会
・Nippon Shokuhin Kagaku Kaishi,65(6)。320-324.2018
・Horimukai K et al., J Allergy Clin Immunol, 2014; 134(4): 824-830.
・第1回 肌のバリア機能とアレルゲンの関係 1000の真実
<画像元>
illust STAMPO
ICOOON MONO
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
最新記事 by 伊藤さん (全て見る)
- 「犬の涙やけは食べ物が原因?!」「犬の涙やけは治せるってホント?」涙やけに関する誤解やよく聞く疑問を解説 - 2024年11月23日
- 「愛犬と食べたい秋・冬が旬の果物」与えてOKな果物とNGな果物知ってる? - 2024年11月12日
- 「長生きする犬の共通点は?」長生きさせるための飼育環境や年齢別の注意点を解説 - 2024年11月4日
- 「犬の歯が欠けやすいオヤツ・オモチャ5選」選ぶときのポイントや歯が欠けたときの対応も解説 - 2024年10月29日
- 「犬の睡眠が足りないとどうなる?」犬の睡眠不足がまねく病気や睡眠不足のサインを解説 - 2024年10月22日