春は気温の寒暖差や新生活の始まりなどで、何かとストレスが掛かる季節と言われます。
それは人だけに限らず、犬の場合でも体調に影響が及ぶと言われているため、気掛かりになる飼い主さんも多いのではないでしょうか?
そこで今回は、犬の春のホルモンバランスで注意したい異変の兆候から過ごし方までをご紹介します。
犬のホルモンの主な役割とは?

犬の様々な内臓器官の働きを支配しているホルモンには、主に下垂体、松果体、甲状腺、上皮小体(副甲状腺)、副腎、膵臓、腎臓、卵巣、精巣などが挙げられます。
これらホルモンは、一般的に成長の促進や生殖機能の発達、骨格・筋肉の発達、また、代謝の活性化など、様々な臓器に働きかけ、そして促進や抑制を行うことでそのバランスを保っています。
特に下垂体(脳下垂体)で分泌されるホルモンには、大きく前葉・中葉・後葉と分けられており、前葉だけでも成長ホルモンや甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成・刺激ホルモンといったホルモンの分泌・調整に多く関わっているため、一般的にはこの下垂体の部分こそ、内分泌器官全体の司令塔のような役割を果たしていると言われています。
けれど、例えばこの司令塔に何かしら異常(ストレスや病気)を来してしまった場合には、これだけ多くのホルモン分泌を担っていることもあって、様々な支障が生じてしまう可能性があるのです。
春は朝晩の寒暖差や生活環境の変化など、ただでさえ変化の大きい季節です。
この季節の変化によって愛犬の心身に何か変化が見られたような場合には、次章でご紹介するストレスホルモンの作用が関係しているかもしれません。
ホルモンバランスの乱れは長引くだけ心身に良くない影響を及ぼすため、早めの対応を心掛けてあげてください。
ホルモンバランスを崩すストレスホルモンって何?

犬は基本的に、人のちょっとした生活の変化や新生活の慣れないストレスなどを敏感に察知し、読み取る能力がとても優れているため、その結果としてストレスを感じ、ホルモンバランスを一時的に崩してしまうことがあります。
そのホルモンバランスは、崩れてしまった時に主にストレスホルモンと言われる『コルチゾール』や『アドレナリン』、『ノルアドレナリン』などが作用することによって、症状や異常として表れます。
では、その『コルチゾール』や『アドレナリン』、『ノルアドレナリン』とは、通常どういった作用をもたらすものなのでしょうか?
まずはその基本的なホルモン作用について見ていきましょう。
コルチゾールとは?
ストレスホルモンとして代表的なコルチゾールとは、糖質コルチコイドの一種であり、腎臓のすぐ上あたりにある副腎から分泌されるホルモン物質の一つです。
コルチゾールは主にタンパク質からの糖生成を促進したり、組織の炎症の抑制をしたり、ホルモンのバランスが取れている状態であれば、犬の体にも人の体にも必要不可欠なホルモンです。また、薬として合成・精製した場合には、ステロイド剤として活用されます。
しかし、このコルチゾールがストレスによって自然と分泌量過剰になってしまうと、血糖値の上昇や副腎皮質刺激ホルモンの抑制、免疫力の抑制などに影響を与え、結果的に心身の弊害へと繋がってしまう危険性があります。
アドレナリンとは?
コルチゾールと同じく副腎から分泌されるアドレナリンとは、交感神経に深く関係し、心拍数や血糖値などに作用するホルモン物質の一つです。
アドレナリンは主にグリコーゲンを分解して血糖値を増やしたり、血圧の上昇を促したりする効果があります。基本的に何も問題がなければ、そのアドレナリンの覚醒作用によって、交感神経が活発化し、集中力や活動力の増加などに活用されます。
しかし、このアドレナリンがストレスの影響で長期間続いてしまったような場合には、逆に副交感神経が働きづらくなることで免疫力の低下が起こり、心身に影響が出てしまう結果となる可能性があります。
ノルアドレナリンとは?
では逆に、アドレナリンと名前が似ているノルアドレナリンの作用ですが、ノルアドレナリンもアドレナリン同様副腎から分泌されるホルモン物質の一つとされています。
ただしノルアドレナリンの場合、精神的な作用にはあまり関係しないアドレナリンとは違って、脳内の神経伝達物質へ作用する働きがあるため、精神的な面で、恐怖や不安、怒りなどを引き起こします。
ホルモンバランスが崩れることで見られる異変

それでは、犬のホルモンバランスが崩れてしまった場合、どのような症状や異変が表れるのでしょうか?
上記のストレスホルモンが長期間作用した結果、ホルモンバランスが崩れた場合の症状や異変は次の通りです。
▼【犬のホルモンバランスの崩れで起こる主な症状や異変】
・下痢や嘔吐
・円形脱毛や対称性脱毛
・食欲の増加や減退
・乾燥肌・フケや痒み
・無気力・元気消失
・多飲多尿や口喝
・腹部膨満
以上が愛犬のホルモンバランスに乱れや崩れが起こっている場合に見られる症状や異変です。
もっとも、体調を崩しやすい春の季節に愛犬の異常として見られる姿は、下痢や嘔吐、食欲の減退といった消化器疾患や、または乾燥肌とも関係する被毛のパサつきやフケ・痒みといった皮膚疾患の方で見られることが多いと思うので、それが直接的にホルモンバランスの乱れと関係があるかどうかは、動物病院で診てもらわなければ、ハッキリしたことは分かりません。
ただ、消化器疾患でも多飲多尿や口喝、腹部膨満の場合、皮膚疾患でも円形脱毛や対称性脱毛の場合などは、嘔吐や下痢、フケや痒み以上にホルモンバランスの乱れに関与している可能性が高いため、そのような場合には出来るだけ早急に動物病院で診察してもらってください。
犬のホルモンバランスを乱れさせないための過ごし方

犬は基本的に、いつもと同じ生活に安心感を覚える動物です。
しかし新生活や引っ越しなど、人の場合の春の季節はどうしても忙しなくなってしまうため、その異変にいち早く愛犬が気付くと、愛犬は不安や戸惑いから、ストレスを感じてしまいます。
これから環境の変化(家族の増減や引っ越し)を控えていたり、普段とはちょっと違う愛犬の様子が気になったりした場合には、以下のポイントに気を付けながら、犬のホルモンバランスの調整を心掛けてみてあげてください。
ポイント①:時間が許す限りコミュニケーションを図る
春の季節は人の立場であっても、生活の中で新しくなることが多いため、時間的な面でも、精神的な面でも余裕が持てなくなることが増えるかもしれません。
しかし、そんな時でも出来るだけ時間が許す限り、愛犬とのコミュニケーションを意識的に取ってあげるようにしましょう。
特に飼い主さんから見つめられることが大好きな愛犬だった場合、見つめ合ってあげるだけで幸せホルモンの『オキシトシン』という物質が分泌され、不安の軽減や自律神経の安定、また、ストレス自体の軽減などにも繋がることが、実験結果で分かっています。
▼【30分間の人と犬との交流】
▼【30分間の人と犬との交流によるオキシトシン量の変化】
▲図1の結果、Long Gaze(飼い主をよく見つめる犬)群は飼い主もイヌも尿中オキシトシン濃度の上昇が認められた
ただ、中には見つめることに苦手意識を持ち合わせる犬もいます。
そういった場合には愛犬が好きな遊びで目一杯遊んであげたりすることで、出来るだけホルモンバランスに乱れを起こさないようにしてあげましょう。
ポイント②:ストレスホルモンを低減させる撫で方を試す
実は、犬のコルチゾールなどのストレスホルモンは、撫で方一つで低減させられることが実験で報告されています。
その方法というのは至って簡単で、次の3ステップをすることで、コルチゾールの値が下がることが確認できたというのです。
- ①犬を自分に寄りかからせたり、座らせたり、寝そべらせたりする
- ②犬の方、背中、首の筋肉を深くマッサージする。または、犬の頭から後ろ足まで長くしっかり撫でる。(筋肉を動かすような撫で方)
- ③穏やかな声で犬に話しかけながら行なう
この3ステップの方法は、犬は見つめられること以上に、やはり撫でられたり喜びを分かち合ったりすることの方が、ストレスホルモンのコルチゾールの低減を見込めるとされた実験です。
当然、犬種の違いや性格の違いによっては、あまり効果が見られないといった事もあるとは思いますが、試してみる価値はあるでしょう。
というのも、不思議なことに飼い主さんが落ち込んで愛犬を撫でた時には、その愛犬はストレスを共有しやすい一方でその状態の場合、愛犬自身のストレスは溜まりにくいという研究結果もあったのだとか。
そのため、もし愛犬が普段と違った環境に身を置いて不安や戸惑いなどを感じているように見えた際には、こうした方法も是非とも試してみてください。
まとめ

いかがでしたか?
犬のホルモンバランスが崩れる原因には、他にも寒暖差の変化や栄養バランスの乱れなど様々です。
ただ、少なくともそのせいで何か異変を感じた際には、出来るだけ愛犬の気持ちに寄り添って、愛犬のホルモンバランス調整を是非とも図ってあげてください。
<参考書籍>
気持ちを知ればもっと好きになる! 犬の教科書
教養としての犬 思わず話したくなる犬知識130
<参考サイト>
ヒトとイヌの絆形成に視線とオキシトシンが関与 共生の進化の過程で獲得した異種間の生物学的絆の形成を実証|麻布大学獣医学部 伴侶動物学研究所
>https://www.azabu-u.ac.jp/files/150417_press.pdf

また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。

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