食中毒は、人でも犬でも年間を通して発生する可能性のあるものですが、皆さんは季節によって起こりやすい食中毒の種類をご存知ですか?
春は寒かった冬から徐々に暖かく、色々なものが芽吹く時期です。
今回は、愛犬にとって気を付けたい春の食中毒の種類やその主な症状や対処法などをご紹介します。
愛犬が春の食中毒で気を付けたい種類とは?

犬や人の食中毒と聞くと、どうしてもイメージ的に『ジメジメする梅雨から夏場の暑い時期にかけて起こるもの』という印象が先立ってしまい、春は油断してしまうかもしれません。
しかし、春の季節であっても犬の場合には、以下のようなもので食中毒を起こす可能性があるので、気を付けましょう。
▼【犬が春に気を付けたい食中毒】
・カンピロバクターなどの細菌
・キノコやスイセンなどの自然毒
・殺虫剤や殺鼠剤などの化学物質
以上が、犬が春に気を付けておきたい食中毒の主な種類です。
人もそうですが、犬であっても、カンピロバクターなどの細菌で食中毒を起こす可能性は、十分に考えられます。また、キノコやスイセンなどの自然毒を口にすることでも、食中毒を起こす場合があります。
さらに、殺虫剤や殺鼠剤に関しては、犬や猫特有のものですが、特に春の時期などは散布されやすくなるので、散歩中にも注意が必要です。
ただし、この中でも例えば、カンピロバクターなどの細菌が原因の食中毒は、愛犬が仮にかかった場合、不顕性感染(感染しても症状が出ない)の可能性が高いかもしれません。
ですが、それはあくまで、健康的な成犬の場合であれば、の話です。

一般的に、犬においても春は、生活環境の変化や季節の変わり目による気圧の変化の影響で、ストレスを抱えて体調を崩しやすいと言われます。
その症状は主に、食欲不振や元気消失、下痢や嘔吐といった消化器症状など様々で、一見すると食中毒の症状とあまり大差ない場合も多く見受けられることでしょう。
特に下痢や嘔吐に関して言えば、その原因がストレスからくるものなのか、もしくは食中毒からくるものなのかは、飼い主さんご自身の判断だけではなかなか難しい場合があります。
愛犬が春に罹ってしまう食中毒は、基本的に人が手出ししないような自然毒や化学物質の方が可能性としては高いと考えられますが、万が一細菌による食中毒に愛犬が罹ってしまった場合、それは人にも感染し得る人畜共通感染症です。
そのため、もしも愛犬が春に体調を崩すようなことがあり、その症状の中に食中毒なのか、ストレスなのかの判別が付かないような症状があった場合には、まずは獣医さんに診てもらって、原因を突き止めてから、愛犬と関わるように心掛けましょう。
▼【合わせて読みたい!こちらの記事もオススメです】
犬も食中毒を起こす?ワンちゃんが気を付けたい食中毒の原因と症状、注意点をご紹介
>https://www.inutome.jp/c/column_7-165-44961.html
愛犬が春の食中毒に罹ってしまった時の主な症状

それでは、愛犬が春で起こしやすい食中毒に罹ってしまった時の主な症状を、ここではご紹介します。
細菌性及び自然毒に関する食中毒症状に関しては、人も犬も罹ってしまう可能性があるため、症状の違いなども踏まえて、一つずつ確認していきましょう。
細菌性によって起こる食中毒
細菌性により起こってしまう食中毒には、主にカンピロバクターやサルモネラ菌、ウェルシュ菌、O157の腸管性出血大腸菌などが挙げられますが、この中で春先に、犬も人も罹りやすい細菌性食中毒には、カンピロバクターとウェルシュ菌、黄色ブドウ球菌があります。
【主な症状】
人の場合:腹痛や発熱、下痢や嘔吐、血便など(カンピロバクターの場合)
犬の場合:基本的には不顕性感染(カンピロバクターの場合)
※ただし、子犬やシニア犬、免疫力が落ちている犬の場合、下痢や嘔吐、腹痛、脱水、元気消失などが見られる。
先程もお伝えしましたが、基本的にこれら細菌性による食中毒においては、人も犬も移る可能性がある人畜共通感染症の場合が多いです。
特にカンピロバクターによって起こる食中毒については、一般社団法人の埼玉県食品衛生協会にて、以下のようなグラフが示されています。
▽『カンピロバクター 月別発生状況』
愛犬の場合であれば、不顕性感染で済むものですが、人の場合だと3月頃から大体横ばいで感染する危険性があるため、愛犬が万一感染してしまった時には、その症状の有無に関わらず、十分注意して排せつ物の処理を行うようにしましょう。
自然毒によって起こる食中毒
食中毒の可能性がある自然毒には、主にふぐ毒や毒キノコ、スイセン、トリカブト、アジサイ、ジャガイモの芽などが挙げられますが、この中で、春先に犬も人も罹りやすい自然毒による食中毒としては、毒キノコとスイセン、トリカブトが挙げられます。
【主な症状】
人の場合:嘔吐や下痢、腹痛、昏睡、痺れなど
犬の場合:嘔吐や下痢、腹痛、よだれ、痙攣、呼吸困難、心臓発作など
中でもスイセンは野菜のニラに似ており、トリカブトは山菜のニリンソウに似ています。
▽『スイセンとニラの違い』
▽『芽生え期のトリカブトとニリンソウの違い』
▽『トリカブトとニリンソウの違い』
これらの植物は、人においても重篤な症状を起こしやすいものですが、人以上に体格や目線が近い犬の場合では、口にしてしまうと最悪死亡してしまう大変危険な植物ばかりです。
愛犬の散歩中に似たような植物を見つけた際には、安易に近寄らせないように注意しましょう。
化学物質によって起こる食中毒
私たちの身近にいるアブラムシやダニ、毛虫、ナメクジなどを駆除する殺虫剤は、春によく撒かれる機会が多くなるため、散歩中は注意が必要です。
【主な症状】
犬の場合:よだれや痙攣、下痢、呼吸困難、最悪死亡
色々な芽吹きの有る春では、虫が付かない対策として殺虫剤が使われることが多く、公園内や遊歩道といった犬の散歩にうってつけの場所は、特に危険性が高まります。
一般的に、アブラムシやダニ、毛虫などに用いられる有機リン系の殺虫剤では、トリクロロフォン、マラチオン、ロンネル、パラチオンディクロフォス(DDVP)、ダイアジノンといった薬剤が使われているため、注意しましょう。
これら薬剤は、誤って摂取してしまうと血中の酸素濃度の低下によって、上記症状に加え、チアノーゼ(皮膚などが青紫色に変色すること)になる可能性があります。
また、以前は犬に使用するノミ取り首輪でも、これらの薬剤が使われていたため、首輪でノミの駆除を行っている飼い主さんは、少なくともこれらの薬剤が使われていないか、成分表をしっかり確認するよう心掛けましょう。
愛犬が春の食中毒に罹ってしまった時の対処法

春の食中毒に愛犬が罹ってしまった時には、何よりも動物病院での受診を優先しましょう。先述でもお伝えしましたが、犬が春に起こす食中毒は、人にも移ってしまう細菌性食中毒が含まれています。
そのため、まずは起こしている下痢や嘔吐がストレス性のものか、細菌性のものかをしっかりと判断してもらうことが大切です。
その上で、ストレス性の下痢や嘔吐であるなら、メンタル面のケアに注力し、愛犬のそばにいてあげることで、体調の回復をはかってあげてください。
一方、細菌性の食中毒であった場合には、しばらくの間は、ご自身の感染防止のためにも、愛犬の下痢や嘔吐の処理をいつもの感覚でしてしまわないよう注意し、安易に素手で触らないよう心掛けましょう。
そして、自然毒や化学物質においても、人への感染の危険性は低くなるものの、摂取してしまった愛犬自身の負担は変わりないため、もし愛犬にいつもとは違った症状や状態が見られた時には、症状の有無に関わらず、動物病院を受診するよう心掛けましょう。
まとめ

いかがでしたか?
食中毒というと、高温多湿の環境下で起きるイメージが強いかもしれませんが、少なくともその考えは、もしかしたら人にだけ通用するものかもしれません。
犬の場合の食中毒は、細菌性よりも自然毒や化学物質、他にも犬自身が摂取してはいけない食べ物が中心になるため、春でも注意を怠らず、少しでもいつもと違った姿が見られた時には、動物病院を受診してあげてくださいね。
<参考書籍>
もっともくわしいイヌの病気百科 イヌの病気・ケガの知識と治療
犬の医学
<参考サイト>
自然毒のリスクプロファイル|厚生労働省
>https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/poison/index.html
一般社団法人埼玉県食品衛生協会
>https://www.s-shokyo.jp/

また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。

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