犬には、犬種によって様々な瞳の色を持つ子がたくさんいますが、実はその瞳の色の違いは、正しい紫外線予防をしないと眼の病気に繋がってしまう可能性があります。
今回は、紫外線に弱いと言われる犬の瞳を守るために。色の種類から考える病気の備えや予防についてまとめました。
犬は紫外線が見えているって本当?

「犬は紫外線が見えているかもしれない」
これは、2014年にイギリスのロンドン市立大学の生物学者、ロン・ダグラス氏が研究リーダーを務め、研究・調査し発見した結果から端を発したものです。
私たち人間は、青(光の波長が短い色)から赤(光の波長が長い色)までを眼視で確認することが出来ますが、青よりも波長の短い紫外線や赤よりも波長の長い赤外線を実際に見る事は出来ません。
しかし最近の研究によって示された内容では、犬の持ち合わせている水晶体は、紫外線を透過することが出来るかもしれないと言われているのです。
この中の数値で紫外線を示している数値は透過UVAの割合の部分です。この研究によると犬の眼は、61%以上もの紫外線量を透過していることが分かりました。
(※上記画像は研究で示された数値を基に、筆者が再度編成した図表になります。)
▽『人と犬の光の波長の見え方』
そして波長の見え方を示した図表では、紫外線を示す300nm~400nmに位置する部分でも、犬のnm数値を示す50%T(nm)部分では、犬の眼は335nmと記録されていることから、犬の眼は確かに紫外線を認知しているかもしれないことが窺えます。
犬に存在する瞳の色の種類って?

では、犬に存在する瞳の色についてここではご紹介します。
あなたの愛犬がどの瞳の色に当て嵌まるか、確認してみてくださいね。
黒またはこげ茶色

黒っぽい、またはこげ茶色の瞳の色を持つ代表的な犬種には、日本犬が挙げられます。
柴犬や秋田犬、甲斐犬といった日本を代表する犬種の他にも、チワワなどの愛玩犬種でもこの瞳の色の子は多いです。
ブラウン(茶色)

こげ茶よりももっと明るい茶色の瞳を持つ代表的な犬種は、トイ・プードルやミニチュア・ダックスフンドなどが挙げられます。
また、見た眼が狼を思わせるようないで立ちのアラスカン・マラミュートなどの犬種もブラウンの瞳を持ちやすい犬種と言われています。
ヘーゼル

グリーンとブラウンの中間のような色をしたヘーゼルを瞳に持つ犬種には、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルやビーグルなどが挙げられます。
また、それら犬種以外にも、バセンジーやブラッドハウンドといった犬種でも見られる傾向があります。
イエロー(アンバー:琥珀色)

イエロー系の瞳を持ち合わせる犬種には、ワイマラナーなどが挙げられます。
また、あまり日本では馴染みのない犬種のチェサピーク・ベイ・レトリバーという犬種も、このイエロー系の瞳を持つ犬種と言われています。
グリーン

メラニン色素が極端に薄いと現れると言われるグリーンを瞳に持つ犬種は、ピットブルやワイマラナーなどが挙げられます。
緑色の瞳を持ちやすいこれらの犬種の特徴は、毛色の薄さにあるとされているようです。
ブルー

透き通るようなブルーの瞳を持つ犬種には、主にシベリアン・ハスキーやオーストラリアン・シェパードなどが挙げられます。
また、他にもボーダー・コリーやシェットランド・シープドッグなどでも時折ブルーの瞳を持つ犬種が見られる場合があります。
オッドアイ

左右で瞳の色が違うオッドアイですが、これらの瞳を持つ犬種には、主にシベリアン・ハスキー、シェットランド・シープドッグなどが挙げられます。
オッドアイで生まれてくる子は、一般的にメラニン色素の量が違うことで起こり得るのだそうです。
ただ、これらとは別に外傷や眼薬の影響などでも後天的にオッドアイになる場合があるようなので、途中からでもオッドアイになる可能性はあることを覚えておくと良いですね。
瞳の色の違いはメラニン色素の量

犬の瞳の色には、本当に様々な色が存在することが分かったところで、ここではその色が構成されるメカニズムを見ていきましょう。
基本的に瞳の色を構成する違いは、一般的に遺伝子によって決められた虹彩の中のメラニン色素量が多いか少ないかで変わります。
そのため、日差しが強く多い地域原産の犬では濃い瞳を持つ犬種が多くなり、一方で日差しがあまり当たらずメラニン色素の量が少ない地域原産の犬では薄い瞳を持つ犬種が多くなると言われています。
このような傾向は紫外線の透過しやすい・しづらいにも関係しており、紫外線は基本的に暗い色ほど透過しづらい傾向が強く、明るい色ほど透過しやすい傾向があると言われています。
紫外線の影響というのは、人であれ犬であれ、どうしても皮膚や被毛に対するケアを優先にしてしまいがちですが、実際には眼からも紫外線を受けているため、紫外線対策をする際には合わせて瞳に対するケアも検討するよう心掛けましょう。
眼の紫外線が原因で起こり得る病気

犬は、元々夜行性で生活を送っていたこともあり、紫外線にとても弱い動物だと言われています。
そのため、メラニン色素が薄い犬種を迎えているという飼い主さんの場合は特に、以下のような疾患に気を付けましょう。
角膜炎
角膜炎とは、何らかの原因が関係し角膜に傷が付くことで炎症を起こしてしまう病気です。
紫外線もこの“何らかの原因”の一つであり、浴び続けることで角膜にダメージを与え、結果的に激しい痛みや眼の白濁を引き起こしてしまう危険性があります。
夏場の散歩はもちろんですが、冬場も後述する地面への影響を考慮した上で散歩を心掛けるようにしましょう。
白内障
白内障とは、眼の中の水晶体が白濁していってしまう病気で、進行すると視力の低下や失明してしまう病気です。
白内障は加齢によるものももちろんありますが、繰り返しによる紫外線のダメージによっても引き起こしてしまう危険性があります。
また白内障は角膜炎や緑内障など、二次的な併発を起こしてしまう場合もあるため、愛犬の眼に何かしら異変を感じた時には早期発見・早期治療に努めましょう。
眼に影響を及ぼす紫外線への予防策

紫外線を予防する際に重要になるのは、色による違いです。
前述でも述べましたが、メラニン色素は濃ければ濃いほど紫外線への影響を受けづらく、そして通しづらい特徴を持っているため、色素の薄い眼より色素の濃い眼の方が、ダメージは少なくて済みます。
しかし一方で、熱や光の吸収率において言えば、黒に近い色ほど熱や光の吸収率は高くなり、白に近い色ほど吸収率は反射するため低くなると言われています。
▽『地面別の紫外線反射率』
上記の図表の数値は、気象庁が公表している反射率による違いです。紫外線は、一般的には太陽から直接届くものだけではなく、空気分子などで散乱する散乱光によっても影響を受けてしまいます。
そしてそれは、10%以下の草地や土の濃い色よりも、砂浜や新雪の薄い色の反射率の方が高くなる傾向にあります。そのため、紫外線対策として愛犬に帽子を被せる場合には、その帽子の構造にも気を配るようにすることが大切です。

例えば上記の場合、パッと見では同じような帽子に見えるかもしれませんが、ツバの裏側の色が左右で違います。
この場合、より紫外線が予防できて眼に影響が少ないのは、右のツバの裏側が黒い帽子です。なぜなら、左側の帽子は地面から反射した光をさらに帽子のツバの裏側で反射させてしまうのに対し、右側の帽子では黒いツバのおかげで反射することなく、眼への影響を最小限に抑えられるからです。
また、こうした反射を犬用サングラスで予防しようとする場合、しっかりと紫外線カット加工が施されたサングラスを使えば最適に予防が出来ます。(※加工タイプなら濃いサングラスでもOK)
眼に対する紫外線対策は、このようなちょっとした違いを意識するだけでも、だいぶ予防することが可能です。
特に眼の色素が薄いワンちゃんの場合、白い帽子を被せてあげる時にはツバの裏側の注意も怠らないよう意識すると良いでしょう。
まとめ

いかがでしたか?
犬の瞳には様々な種類の色がある一方で、眼の紫外線の影響を強く受けやすい傾向にあります。
夏場は問題なく過ごしているワンちゃんも、冬場はつい油断してしまう可能性があるため、意識して紫外線対策するよう心掛けてあげてくださいね。
<参考書籍>
360°ビジュアル犬種大図鑑
<参考サイト>
The spectral transmission of ocular media suggests ultraviolet sensitivity is widespread among mammals|眼球媒体のスペクトル透過率は、紫外線に対する感受性が哺乳類に広く見られることを示唆している。
>https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2013.2995
地表面の反射と紫外線
>https://www.data.jma.go.jp/env/uvhp/3-76uvindex_mini.html

また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。

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