犬にとって生きていくために必要不可欠な栄養は、いつだって十分与えてあげたいですよね。
しかし、実はドッグフードの中には、時に重要なのに十分じゃない栄養素が存在することをご存知ですか?
今回はそんなドッグフードの栄養素の中で、必須なのに、もしかしたら足りていない「亜鉛」について、欠乏で起こってしまう症状や予防法をご紹介します。
<目次>
そもそも亜鉛とは?犬はどれだけ必要?
人の体内であれ、犬の体内であれ、必要不可欠とされている栄養素の亜鉛。ただ、その亜鉛という栄養素は、そもそもどんな栄養素でどのような働きをするものなのでしょうか?
亜鉛とは、健康維持に欠かすことのできない必須ミネラル要素の一つとされている栄養素です。
亜鉛は基本的に成人体内に約2g含まれているとされていますが、この2gという微量な量であっても、その栄養素の重要性は、筋肉、骨、皮膚、肝臓、腎臓、消化管、膵臓、毛髪など、様々な臓器酵素の構成成分に役立てられていると言われています。
これだけ重要度の高い亜鉛の効果を人以上に必要とするのが、実は犬などの動物です。
一般的に人の場合には、成人男性であれば1日当り必要な亜鉛摂取量は大体10~11mg(0.01g~0.011g)/体重1kgが目安とされており、女性では大体8mg(0.008g)/体重1kgが目安と言われています。
しかし犬の場合、AAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準に基づいた亜鉛含有量の目安によれば、例えばパピーや成長期だと100mg(0.1g)/体重1kgが目安とされており、成犬だと80mg(0.08g)/体重1kgが目安だと言われています。
ドッグフードに含まれている亜鉛では足りない?
では、AAFCO(米国飼料検査官協会)基準を満たしているドッグフードを与えていれば、犬は亜鉛の一日の必要摂取量を満たせることになるのでしょうか?
結論から申し上げれば、半分正解で半分不正解といったところです。
というのもAAFCO基準のドッグフードでは、確かに推奨摂取量として亜鉛が含有されていればOKと言えますが、現在、その亜鉛を適切に吸収するための加工工程がしっかりと明確化されていないドッグフードの現状では、仮に愛犬がちゃんと食餌を摂っていても、腸からの十分な吸収に繋がっているかどうかが分からないのです。
また亜鉛のようなミネラルは、基本的に体内で蓄えておくことが出来ない栄養素の一つであるため、「亜鉛が含有されている=十分に吸収出来ている」ということではないことも覚えておきましょう。
理屈では総合栄養食タイプのドッグフードを与えていれば、標準基準値通りの亜鉛を摂取することは可能で、愛犬の体重に合わせた適切なドッグフードの量を与えていれば亜鉛不足に陥ることはありませんが、加齢による食欲低下や体調、ダイエット目的による節制など、与える環境下によってはうまい具合に亜鉛摂取が出来ていない場合も考えられます。
そういった際にはドッグフードの見直しや食餌量の調整などを検討してみましょう。
愛犬の亜鉛不足が起こす症状とは?
亜鉛は、200種類以上の酵素構成や酵素反応の活性化、ホルモン合成、分泌調整、DNA合成、タンパク質合成、免疫反応調整などに作用しています。
こうした作用に一役買う亜鉛が愛犬の体内で不足を招いてしまった場合、どのような症状が起こってしまうのでしょうか?
不足してしまった場合の症状を以下でいくつか確認してみましょう。
▽『犬の亜鉛不足が起こった時の主な症状』
・被毛のパサつき、毛艶の悪化
・脱毛やフケ、色素が抜ける
・発育不良、骨格異常
・傷の治りが遅い
・生殖機能低下
・免疫力低下
愛犬の身体から亜鉛が不足してしまうと、このような様々な不調が症状として表れるようになってしまいます。
その他にも、犬が亜鉛欠乏を引き起こしてしまった場合、性格にも影響を及ぼし、以下のような症状が見られることがあります。
亜鉛が不足してしまう要因には、食餌によるものの他に、遺伝的なもの、胃腸の病気によるもの、亜鉛吸収の問題によるものなど様々あります。
しかし、こうした亜鉛不足によって起こってしまう症状には、これだけ多くの不調が愛犬に見られる可能性があるため、注意しておきましょう。
愛犬の亜鉛不足を招かないための予防法とは?
愛犬が亜鉛不足にならないための予防法には、以下のような方法があります。
ここ最近毛並みが良くないと感じていたり、性格的にも以前より神経質になったと感じていたら、是非とも一度試してみてくださいね。
レバーや牡蠣を与える
亜鉛と聞いて真っ先に思い浮かぶ食材と言えば、牡蠣ですよね。
牡蠣は別名海のミルクと言われるほど栄養豊富な食材で、亜鉛以外にもタウリンや鉄分、ビタミンD12などが豊富に含まれています。また、レバーも牡蠣同様、鉄分や亜鉛が豊富に含まれているため、ドッグフードのトッピングとして与えてあげると良いでしょう。
ただし、レバーや牡蠣を与える際には、食中毒などを引き起こさないためにも、必ず加熱した上で与えるよう注意してくださいね。
亜鉛が含有されたサプリメントを与える
私たち人は、生活する中で何か栄養素の一部が不足していると感じるとサプリメントなどで補うことが多いと思います。
それと同じように、愛犬にも亜鉛が含有されているサプリメントを与えてあげることで、亜鉛不足を予防してあげられます。亜鉛が含まれているサプリメントで愛犬の亜鉛不足を補う際には、含有の量や添加物の有無、また、摂取のしやすさなどに着目しながら選んであげると良いでしょう。
特に亜鉛不足によって起こってしまう皮膚疾患(亜鉛反応性皮膚炎)の場合では、亜鉛サプリメントなどで効率よく亜鉛を摂取することで、皮膚疾患の改善が見込めると言われています。
愛犬が亜鉛を摂取する時の注意点
亜鉛を摂取することで、愛犬に見られる様々な不調を改善させられると言っても、その摂取が過剰、または長期に及ぶ場合には注意が必要です。
これは、サプリメントの摂取であれ、通常の食材からの摂取であれ違いはないので、覚えておいてください。
亜鉛に限ったことではありませんが、多くのミネラル類は、体内で他のミネラル類と相互に作用することでその効果を発揮しています。ただ、組み合わせの仕方や必要量の違いによっては、相乗的に働く一方、時には拮抗的な作用をもたらす場合も当然起こり得ます。
特に亜鉛の場合は、食餌にカルシウムが高濃度に含まれていると、亜鉛の吸収を阻害してしまうため、亜鉛の要求量は通常よりも高める必要性が出てくることで知られています。
また、小麦などの穀類やインゲン豆などの豆類に多く含まれると言われる植物由来の天然成分、フィチン酸と言われる成分も、亜鉛や鉄などの吸収を阻害してしまうため、結果的に要求量が高くなってしまう場合があるため、注意が必要です。
中でもこのような摂取量に対する心掛けは、遺伝的に亜鉛の吸収が上手く行えないことがあるシベリアン・ハスキーやアラスカン・マラミュートでは、根本的な食事内容の見直しや与えるサプリメントの選定などが重要となってきます。
犬種が該当し、尚且つ皮膚や被毛、発育不良などに不安がある場合には、今一度食事内容などを改めてみてください。
まとめ
いかがでしたか?
総合栄養食(AAFCO)基準をクリアしていても、時として亜鉛不足は引き起こされてしまう場合があります。
亜鉛は長期間の不足が続いてしまうと、慢性炎症の原因やがんや腎不全などの原因に繋がってしまうことがあるため、早めの対処が肝心です。
皮膚疾患の場合、亜鉛とは別の原因で症状の発現や悪化などが見られる場合も多くありますが、そうでない場合には、亜鉛不足などの観点からも症状改善の手立てを検討してみてくださいね。
<参考サイト>
必要不可欠!犬は亜鉛が不足するとどうなるの?|Lutie
>https://lutie.jp/column/zinc-about-dog
栄養の新常識|ふるせ動物病院|栄養療法・通常医療・再生医療
>https://www.furuse-ac.com/nutrition-therapy
犬の亜鉛反応性皮膚炎|PURINA
>https://www.purinainstitute.com/ja/centresquare/therapeutic-nutrition/zinc-responsive-dermatosis-in-dogs
6.2.2. 亜鉛(Zn)|厚生労働省
>https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4ai.pdf
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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