皆さんは、カプノサイトファーガ感染症という感染症を耳にしたことはありますか?
カプノサイトファーガ感染症とは、犬や猫が口腔内に持つ常在菌の一種が原因で起こる大変危険な感染症です。
そこで今回は、“愛犬との触れ合いが激しめの飼い主さん”や警戒心強めで人に牙を剥いちゃう愛犬を迎えた飼い主さん”にぜひ知ってほしい!犬が持つカプノサイトファーガ感染症の恐ろしさや症例、予防法などをご紹介します。
カプノサイトファーガ感染症ってどんなもの?

カプノサイトファーガ感染症とは、冒頭でもお伝えしたように犬や猫が口腔内に持つ常在菌が原因で起こる危険な感染症の一つです。
主にこれらの常在菌にはいくつか種類が存在し、その菌の種類には、カプノサイトファーガ・カニモルサスCapnocytophaga canimorsus)、カプノサイトファーガ・カニス(Capnocytophaga canis)、カプノサイトファーガ・サイノデグミ(Capnocytophaga cynodegm)という3つが、カプノサイトファーガ感染症に罹る病原体となります。
これらの常在菌の保菌率は厚生労働省の報告によれば、国内の犬・猫の保菌率はそれぞれ以下の通りとなっています。
▽『犬と猫のカプノサイトファーガ保菌率』
ただ、カプノサイトファーガ・カニスについては近年新しく報告された菌種のため、現在では調査中とのことです。
ただし、一般的にこの感染症は世界においても発症するのは非常に稀な感染症と言われており、愛犬との接し方や飼い主さんご自身の健康状態に問題がなければ、通常は感染しないとされています。
実際に1976(昭和51)年~2017(平成29)年までのこの感染症による報告件数でも、諸外国では約500人程度とそれほど患者数は多くありません。それは、日本においても言えることで、日本においては1993年(平成5)年~2017(平成29)年までの報告件数は、これまでに計93件となっています。
▽『日本におけるカプノサイトファーガ感染症報告件数』
カプノサイトファーガ感染症に感染してしまった時には、その潜伏期間は大体1日~14日(多くは1日~5日)とされており、症状が発症した時は発熱、倦怠感、腹痛、吐き気など、一見すると風邪やインフルエンザなどの様相を呈する場合が多くあります。
けれど、これが重症化してしまった時には、敗血症性ショックや多臓器不全に進行し、最悪は死に至ることがあるのです。
カプノサイトファーガ感染で手足切断に至った重症例2つ

それでは、ここからはカプノサイトファーガによる感染症で手足切断に至ってしまった重症例2つをご紹介します。
飼い主さんからしたら、「えっ、それだけで?」と思う内容や結構ショッキングな内容もあるかもしれませんが、実際にあった事例なので普段からスキンシップが激しめな場合は心得ておいてください。
カプノサイトファーガ感染症例①:犬に咬まれ手足の指の一部を切断
2008(平成21)年に、長崎県佐世保市のある病院で一人の男性が親戚の犬から右手の指を咬まれケガをしたとして、診察に訪れました。
男性の職業は救急救命士だったため、流石の手際の良さですぐに傷口を流水で洗い流すなどの応急処置をし、その後の診察にて念のための破傷風ワクチン接種と万全を期すための抗菌薬治療を入院の元、行うこととなりました。
しかし入院し始めて4日目を迎えたある日のこと。
それまで順調に回復していた容体が急に悪化し、熱は38℃(後に40℃)以上、下痢や頭痛が起こり始め、ついにはチアノーゼとなって、敗血症を引き起こす事態に…。
カプノサイトファーガ感染症がほとんど知られていなかった当時、この診断名が特定された男性の容態が快方に向かったのは、入院してから13日後のことだったと言います。
ただ、やはりその間に起こってしまった多臓器不全や壊死の影響は、男性の両脚の親指以外の指と右手人差し指の切断をせざるを得ない状態となってしまったのでした。
カプノサイトファーガ感染症例②:傷口を舐められ両脚膝下から切断
2013(平成26)年、カナダに住むある40代の女性が、咳や高熱、激しい吐き気を訴えて、病院を訪れました。
しかし、彼女は来院して数分後、突然その場に倒れ込んでしまったのです。脈が異常に早く意識もない彼女をすぐさま医師が診察したところ、何らかの感染症が疑われることから抗生物質の投与が行われることに。
けれど、昏睡状態となった彼女におおよそ1週間後待ち受けていたのは、指先及び足の壊疽(えそ:皮膚が変色すること)でした。
彼女は4人の子供を面倒見るシングルマザーで、4匹の愛犬と暮らしていたと言います。症状が出る数日前に、犬と遊んでいる最中に小さな傷を作り、その傷を4匹の愛犬たちから心配されて交互に舐められたのだとか。
皮肉なことに、それで彼女がカプノサイトファーガに感染していることが分かった医師たちは、ようやく壊疽を食い止める透析を行うことが出来たのでした。
しかし、結果的に助かるためには壊疽を起こしてしまった部分の手術が必要だったため、彼女は両脚膝下を切断することに。
けれど現在は義足の状態ながらも、彼女は大好きな犬たちと変わらず過ごしていると言います。
カプノサイトファーガ感染症を予防するためには…

犬や猫が口腔内に持つ常在菌のカプノサイトファーガによる感染を予防するためには、ズバリ!「過度な触れ合いや咬傷・掻傷を避けること」また、「触れた後は手をしっかりと洗うこと」です。
私たち飼い主は、どうしても時として可愛さのあまり愛犬との過度な触れ合い(キスなど)を求めてしまったりしてしまいますが、この行動は、犬や猫に常在する菌の観点から見ると、大変危険な行動と言わざるを得ません。
実は、筆者の母は昔2代目シェルティに手から食べ物を与えようとした際、盛大に指を噛まれ皮膚はおろか、指の肉まで大怪我を負ったことがありました。
本人はすぐに傷口を洗い流し近くの診療所に駆け込みましたが、そこでは上記でご紹介した症例①と同じく、破傷風ワクチンの接種と傷口をガーゼ等で塞ぐ処置を行っただけで帰されました。
しかしその方法では益々腫れが悪化する一方で、母はすぐさま別の総合病院で再度診てもらうことに。
セカンドオピニオンを受けた病院では、「まずは毒素を出すことが大切」だと、ガーゼ等で塞いだ傷を一旦剝がし、改めて適切な処置を施してもらうことで予後は順調に回復、今は後も残らずに済んでいます。
我が家の場合、運良くカプノサイトファーガ感染症に母が罹ってなかったためか、はたまた母の免疫力に問題がなかったためか事なきを得ましたが、しかしそれは実際に病院に行ってみない事には分からない事実でもあります。
特に糖尿病や高血圧、肝硬変、全身性免疫疾患、脾臓摘出者、悪性腫瘍などの基礎疾患を持ち合わせた飼い主さんの場合、その危険性は何の基礎疾患も持ち合わせていない人と比べれば圧倒的に高くなります。
そのため日頃から愛犬・愛猫と関わる時には、適度な距離感を心掛けながら、節度を持った接し方で触れ合うようにしましょう。
まとめ

犬たちからしてみたら、カプノサイトファーガは常在菌の一種のため、基本的に何かしら症状を呈することはありません。
しかし私たち人の場合では、時に過度に示す愛情表現の示し方が最悪の形で私たちの身に、感染症として降り掛かってくる危険性があります。
「愛犬が可愛すぎる。」
この気持ちは、愛犬を愛する飼い主さんなら誰もが共通認識だと思いますが、愛犬を思うなら過度なスキンシップは控えるように心掛けていきましょう。
<参考サイト>
愛犬家 謎の感染症
>https://www.ntv.co.jp/gyoten/backnumber/article/20181120_01.html
謎過ぎる手足のチアノーゼ
>https://www.ntv.co.jp/gyoten/articles/324h8sneg0bg2nxw2rm.html
ペットとのキス、実は危険? ひとなめで細菌が数百万
>https://reskill.nikkei.com/article/DGXMZO23028350S7A101C1000000/
カプノサイトファーガ感染症に関するQ&A|厚生労働省
>https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/capnocytophaga.html

また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。

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