犬にとって梅雨時期は、皮膚疾患に気を付けたい季節です。
しかし、そんな梅雨時期に起こる皮膚疾患にはどんな種類があるのか、皆さんはご存知でしょうか?
今回は普段痒がらないワンちゃんはもちろんですが、皮膚疾患になりやすいと言われるワンちゃんを迎えている飼い主さんに知ってほしい【梅雨時期に注意したい皮膚疾患】の種類、発症、悪化させない対策などをまとめました。
意外にも保険請求理由上位を占める皮膚疾患!
2019(令和元)年にアニコム損害保険株式会社が発行している【家庭どうぶつ白書】内の保険請求理由TOP20によると、意外かもしれませんが『原因不明の外耳炎』が第1位を占め、その件数はなんと168,192件に及び、外耳炎が理由で診察を受けた犬の数は、57,305頭という結果になりました。
▽『犬の保険請求理由TOP20』
△家庭どうぶつ白書2019 第2部どうぶつ医療を取り巻く環境|アニコム家庭どうぶつ白書2019
引用元:https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_201912_2.pdf
しかし、驚くべきはその第1位を占める『外耳炎』に次いで保険請求理由TOP20に入っている皮膚疾患には、第5位に『原因不明の皮膚炎』、第6位に『膿皮症/細菌性皮膚炎』、第8位に『アレルギー性皮膚炎(抗原特異的)』、第9位に『アトピー性皮膚炎』、そして、第14位に『細菌性外耳炎』と、犬が発症しやすいと言われている皮膚疾患のほとんどが上位を占める結果になっているところです。
皮膚という臓器が体の中で一番大半を占めるものとはいえ、これほどまでに保険請求理由の上位に食い込んでくるとは、飼い主さんにとっても意外な結果だったのではないでしょうか?
けれど、これだけ大きな臓器の一つである皮膚は、裏を返せば飼い主さんが愛犬の異変にいち早く気付き、皮膚の状態を目視することが出来る唯一の臓器であるとも言えます。
筆者自身も2代目シェットランド・シープドッグを飼養していた時には、外耳炎、食物アレルギー、甲状腺機能低下症による皮膚疾患などの経験がありますが、その皮膚疾患の悪化に特に気を付けておきたい季節が、まさに梅雨時期と言っても過言ではないと思っています。
梅雨時期に気を付けたい皮膚疾患の種類とは?
では、そんなペット保険請求理由上位を多く占める皮膚疾患の中でも、梅雨時期に特に気を付けておきたい皮膚疾患の種類には、どんなものがあるのでしょうか?
好発犬種についても併せてご紹介しますので、ご自身の愛犬が該当しているかといった点も合わせて参考にしてみてください。
梅雨時期注意の皮膚疾患①:膿皮症
皮膚に常在している黄色ブドウ球菌が増殖することによって赤いブツブツや痒みを伴う膿皮症は、通常であれば病原性の低いものであるため、健康的な愛犬であれば発症することはありませんが、梅雨時期のジメっとした季節にはこれらの菌の増殖を促し、免疫機能が衰えてしまっているワンちゃんや甲状腺機能低下症などのホルモン疾患を患っているワンちゃんなどは、特に発症の恐れがある皮膚疾患です。
▼【膿皮症になりやすい犬種】
シー・ズー、ウエストハイランド・ホワイトテリア(ウエスティ)、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ゴールデン・レトリバー、アメリカン・コッカー・スパニエル、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ペキニーズなど
梅雨時期注意の皮膚疾患②:マラセチア皮膚炎
皮膚から分泌される脂分を栄養にする酵母菌が増殖することによって発症するマラセチア皮膚炎は、膿皮症同様常在菌のため、ワンちゃんが健康であれば問題ありませんが、マラセチア皮膚炎の主な原因となるマラセチア菌が湿度の高くなる梅雨時期に増殖、悪さをすると、首や脇、お腹、耳の表面などが脂っぽくなり耳垢や腫れなどを引き起こします。
▼【マラセチア皮膚炎になりやすい犬種】
シー・ズー、ウエストハイランド・ホワイトテリア(ウエスティ)、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ゴールデン・レトリバー、アメリカン・コッカー・スパニエル、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ペキニーズ、柴犬など
梅雨時期注意の皮膚疾患③:アトピー性皮膚炎
ハウスダストや花粉症など、様々な環境アレルゲンが要因で起こるアトピー性皮膚炎は、その75%が生後6か月~3歳までの間に初めて発症すると言われるほど、ほぼ先天性に近い疾患です。
増悪と寛解(かんかい)を繰り返すという特徴を持っていて、主に目や口の周辺、耳、わきの下、胸、お腹、四肢など、広範に渡って皮膚の赤みや痒みを必ず伴い、梅雨時期は高確率で悪化してしまう皮膚疾患です。
▼【アトピー性皮膚炎になりやすい犬種】
シー・ズー、ウエストハイランド・ホワイトテリア(ウエスティ)、ゴールデン・レトリバー、アメリカン・コッカー・スパニエル、フレンチ・ブルドッグ、パグ、柴犬など
梅雨時期注意の皮膚疾患④:急性湿性皮膚炎(ホットスポット)
その名の通り突然発症して、飼い主さん自身を驚かせてしまいかねない急性湿性皮膚炎は、ほとんどの場合はノミに咬まれて起こることが多いとされていますが、発症要因は他にもあると考えられています。
急性湿性皮膚炎(ホットスポット)の特徴は、『痒み』というよりも『痛み』に近い症状が見られるため、しきりに舐めたり齧ったりという症状が見られます。そして、高温多湿の環境下で起こりやすく、梅雨時期に発症することが多い皮膚疾患です。
▼【アトピー性皮膚炎になりやすい犬種】
シー・ズー、ゴールデン・レトリバー、柴犬、シベリアン・ハスキーなど
梅雨時期注意の皮膚疾患⑤:外耳炎
細菌やマラセチア、食物アレルギーなどが原因で起こる外耳炎は、痒みで耳を掻きむしったりすることで耳が炎症を起こし、常に耳垢が溜まったり痒みが見られます。
梅雨時期は特に高温多湿の影響で細菌が増殖しやすく、加えて垂れ耳犬種は蒸れなども悪化要因となるのがこの外耳炎という皮膚疾患です。
▼【外耳炎になりやすい犬種】
トイ・プードル、ビション・フリーゼ、ミニチュア・ダックスフンド、アメリカン・コッカー・スパニエル、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ボストン・テリア、シー・ズー、柴犬など
発症、悪化させないための対策はどうしたらいい?
高温多湿下の環境になりやすい梅雨の時期の皮膚疾患対策としては、生活環境を出来るだけ清潔に、そして、散歩の後の足拭き、シャンプー後などはしっかりと乾燥させることを忘れないようにしましょう。
ただし、シャンプー後のすすぎ過ぎやドライヤーの温風による乾燥はかえって皮膚炎の悪化を招いてしまうことがあるため、保湿液などでしっかりと潤いを保ってあげることも忘れずに。
また、梅雨時期は雑菌だけではなく、皮膚炎の原因となるノミやダニも活発に繁殖する季節なので、愛犬が使っているベッドなどは定期的に洗浄する、私たち人が使っているベッドや布団を好んで寝ている子についても、定期的に布団を干したり、掃除機を掛けたりして皮膚炎の原因になるものを排除するといったことを心掛けるのが大切です。
膿皮症やマラセチア皮膚炎、アトピー性皮膚炎など、寛解を繰り返す皮膚疾患は、一般的には動物病院での処置や生活環境の改善などが目立つかもしれませんが、急性湿性皮膚炎(ホットスポット)については、炎症部の毛を刈ったり、ステロイド剤を使ったり、抗生剤などを使う必要性があるので、こういった場合には、まず獣医師さんに診察してもらうように努めましょう。
まとめ
皮膚疾患は長い目で見て治療していかなければならない疾患なので、梅雨時期だけ気を付けておけば良いというものではありません。
しかし、それでも梅雨時期は皮膚炎を起こしやすい季節とされているため、すでに皮膚疾患を患っているワンちゃんはもちろんですが、皮膚疾患になりやすいワンちゃんも、普段の季節に加え、梅雨の皮膚疾患予防には、特に気を付けてあげてください。
<参考書籍>
最新版 愛犬の病気百科 気になる初期症状から最新医療までがわかる
犬の医学
イヌやネコを愛する人のためのペットの自然療法事典 獣医さんとペット飼い主の架け橋となる本
もっともくわしいイヌの病気百科 イヌの病気・ケガの知識と治療
<参考サイト>
家庭どうぶつ白書2019 第2部どうぶつ医療を取り巻く環境|アニコム家庭どうぶつ白書2019
>https://www.anicom-page.com/hakusho/
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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