暖かくなると出てくる蚊。蚊は犬にとってフィラリア症という病気の原因になる厄介な天敵ですよね。
ただ、皆さんはその予防として必要なフィラリア予防薬の正確な投薬期間を覚えていらっしゃいますか?
今回は、今更聞けないフィラリア予防薬の必要性や地域別で知っておきたい投薬期間目安をご紹介します。
フィラリア予防薬の投薬開始はいつから?
まず、フィラリア予防薬の投薬開始時期を大まかにお伝えすると、それはズバリ、『1匹でも蚊の出現を確認した1カ月以内~蚊が1匹も見られなくなった次の月まで』となります。
しかし、多くの場合こうした考えは一般的ではなく、飼い主さんが良く目にする大まかな期間は、『5月頃~12月頃まで』でしょう。
動物病院の先生からも、4月頃に「もうそろそろフィラリアの予防対策をしましょう」と言う先生も居れば、5月頃になってからフィラリア予防の話題を出してくる先生も居ると思います。
けれどこの考え方は、あくまで目安にしか過ぎません。
実際は、例えば蚊が出現しだした時期が4月上旬頃から11月下旬頃だったなら、その場合の犬のフィラリア予防期間は、上記で示した『5月頃~12月頃まで』が適正となります。
ですが、これが例えば沖縄などの温暖の地域に住んでいる犬のフィラリア予防だったとしたら、上記の目安期間よりも長い場合も考えられますし、逆に寒冷地域であれば、短い場合も考えられます。
このように、飼い主さんご自身の居住地や気温、地形、湿度や雨量など、様々な条件の違いによって蚊の出現時期は変わってきます。
また、近年は温暖化の影響により蚊の発生時期や生存期間などにも変化が生じていて、今では以下のような蚊の活動データも公表されています。(株式会社カンセキ:代表取締役社長、太田垣一郎 Pet Planet調べ)
▽『全国平均による蚊の発生状況』
そのため、基本的には、犬のフィラリア予防薬の投薬開始時期は『1匹でも蚊の出現を確認した1カ月以内~蚊が1匹も見られなくなった次の月まで』という考え方を基準にし、必ずしも全ての地域が『5月頃~12月頃まで』という期間には合致しないことを覚えておきましょう。
今更聞けない!なぜ犬にはフィラリア予防薬が必要なの?
今や多くの飼い主さんが認識していると思いますが、そもそもなぜ犬にはフィラリア予防薬が必要なのでしょうか?
それは、フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫が、蚊を媒介して犬の肺動脈や心臓の内部に寄生、悪さをしないよう防ぐためです。
もっと詳細且つ簡単に言うと、犬が万が一フィラリア症になってしまっても、そのフィラリアが子虫(幼虫)であれば、その後に投薬した予防薬の効果で駆除することができるためです。
そもそも犬に施すフィラリアの予防薬は、犬が蚊に刺されたという前提で行われる予防対策になります。
一体どういうことかと言うと、フィラリアの予防薬の効果というのは、例えば4月に仮に犬が蚊に刺されていたとしても、5月からの投与を行えば、そのフィラリアの感染は成虫になる前の駆除で食い止めることが出来ます。
なので、捉え方としては保険のようなもので、そのようなものであるからこそ、蚊が落ち着くだろう1ヶ月後も、成虫の危険性を100%なくすために投薬が必要となるのです。
そのため感覚的には、罹ってしまっているかもしれない可能性の駆除を行うもの、というのがフィラリアの予防薬としての役割と考えるのが適切だと言えるでしょう。
では、なぜそういった方法なのかと言えば、通常フィラリアの症状が顕著に表れる時期というのは、そのほとんどが重症化した後だと言われ、症状が軽い間は時々咳が出る程度、他には特に変わった症状は見られないというのがこの病気の特徴であり、見過ごした場合には最悪死に至ってしまう可能性がある恐ろしい病気だからです。
▽『慢性化・重症化した場合のフィラリア症の症状』
犬がフィラリア症を患ってしまった場合、一般的には上記のような症状が見られた時に早急な動物病院への受診が求められます。
そして、その対処の方法は、状況によって以下の3通りの処置で行われる場合がほとんどです。
薬での駆除:駆虫薬での処置。ただし心臓内の血管に詰まると死亡してしまう危険性がある。
手術:首の血管から特殊な器具(アリゲーター鉗子)を挿入後、心臓から成虫をつまみ出す。ただし手術には大きな負担が掛かるため、亡くなるリスクも大きい。
対症療法:積極的な駆除をせず、症状軽減で留める。
しかし、こうした処置はどれもが危険を伴うもので、対症療法に至っては緩和措置となってしまうため、結果的には飼い主さんにとっても犬にとっても辛い結果となりかねません。
そのため、そうならないためにも、フィラリアの予防薬は決められた期間中に決められた量の投与を、忘れずに行うことが大切です。
フィラリア予防薬の地域別投薬期間の目安って?
それでは、フィラリアの予防薬を投薬する期間の目安には、地域によってどのような違いがあるのでしょうか?
ここでは、全国エリア別にそれぞれの違いをご紹介します。
※以下でご紹介する内容は、HDU(Heartworm Development heat Unit:フィラリア幼虫が成熟するために必要な積算温度の単位)という数値を基にして算出された投薬期間目安となります。あくまでも目安のため、正確な投薬時期は獣医さんに従ってください。
フィラリア予防薬の投薬期間目安:北海道エリア
北海道エリアは最も北に位置し、夏場でも涼しいというイメージが定着しているエリアですが、近年の結果では、概ね以下のような時期がフィラリア予防薬の投薬期間目安となっています。
北海道エリア別早見表 |
札幌:6月~11月頃 |
フィラリア予防薬の投薬期間目安:東北エリア
東北エリアは北海道エリアほどではないものの、どちらかというと涼しい地域に思えますが、近年では概ね以下の期間が、犬のフィラリア予防薬の投薬期間と定められているようです。
東北エリア別早見表 |
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青森:6月~11月頃 |
岩手:6月~11月頃 |
宮城:6月~11月頃 |
秋田:6月~11月頃 |
山形:6月~11月頃 |
福島:5月~11月頃 |
フィラリア予防薬の投薬期間目安:関東エリア
関東エリアは、早いところで4月の下旬頃から徐々に暖かくなってくる印象が強く、東京都などの都会というイメージの強いエリアでもあります。近年では概ね以下の期間が、犬のフィラリア予防薬の投薬期間となっているようです。
関東エリア別早見表 |
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茨城:6月~11月頃 |
栃木:5月~11月頃 |
群馬:5月~11月頃 |
山梨:6月~12月頃 |
長野:6月~11月頃 |
神奈川:5月~12月頃 |
埼玉:5月~12月頃 |
千葉:5月~12月頃 |
東京:5月~12月頃 |
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フィラリア予防薬の投薬期間目安:北陸・東海エリア
日本海側の北陸エリアと、太平洋側の東海エリアでは、随分と気候の違いが感じられそうですが、近年でのフィラリア予防薬の投薬期間目安は、以下のような目安となっているようです。
北陸・東海エリア別早見表 |
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新潟:6月~11月頃 |
富山:5月~11月頃 |
岐阜:5月~12月頃 |
愛知:5月~12月頃 |
静岡:5月~12月頃 |
石川:5月~12月頃 |
福井:5月~12月頃 |
三重:5月~12月頃 |
フィラリア予防薬の投薬期間目安:近畿エリア
近畿エリアは、大阪や京都などがあるエリアで、丁度日本の真ん中あたりに位置するエリアですが、近年の犬のフィラリア予防薬の投薬期間目安は以下のような期間となっているようです。
近畿エリア別早見表 |
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京都:5月~12月頃 |
大阪:5月~12月頃 |
兵庫:5月~12月頃 |
奈良:5月~12月頃 |
和歌山:5月~12月頃 |
滋賀:5月~12月頃 |
フィラリア予防薬の投薬期間目安:中国エリア
中国エリアは、徐々に南寄りに位置してくるエリアで、鳥取砂丘などの観光地が魅力的なエリアですが、犬のフィラリア予防薬の投薬期間目安は近年では以下のような期間となっているようです。
中国エリア別早見表 |
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鳥取:5月~12月頃 |
島根:5月~11月頃 |
岡山:5月~12月頃 |
広島:5月~12月頃 |
山口:5月~12月頃 |
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フィラリア予防薬の投薬期間目安:四国エリア
四国エリアは、中国地方の南に位置するエリアですが、5月頃ともなると随分と暖かくなるような印象が強いエリアのように思われます。
そのため、近年では以下のようなフィラリア予防薬の投薬期間が目安となっているようです。
中国エリア別早見表 |
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香川:5月~12月頃 |
徳島:5月~11月頃 |
愛媛:5月~12月頃 |
高知:5月~12月頃 |
フィラリア予防薬の投薬期間目安:九州エリア
九州エリアともなると、3月の下旬頃から暖かくなってくるイメージが強いエリアです。また、フィラリア予防薬の投薬開始も比較的早い印象に感じられますが、近年では以下のような投薬目安期間のようです。
九州エリア別早見表 |
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福岡:5月~12月頃 |
佐賀:5月~11月頃 |
長崎:5月~12月頃 |
大分:5月~12月頃 |
宮崎:5月~12月頃 |
熊本:5月~12月頃 |
鹿児島:4月~12月頃 |
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フィラリア予防薬の投薬期間目安:沖縄エリア
沖縄エリアは、日本列島の最南端に位置し、言わずと知れた暖かい地域で知られています。そんな沖縄エリアでは、近年は以下のような期間がフィラリア予防薬の投薬開始期間となっているようです。
沖縄エリア別早見表 |
沖縄:1月~12月頃 |
さて、以上が全国エリア別での犬のフィラリア予防薬の投薬開始目安時期でした。繰り返しになりますが、上記で示したフィラリア予防薬開始時期はあくまで目安です。
そのため、実際に愛犬へ予防薬を投与する際には、獣医さんの指示に従い、適切な投与方法で最後まで忘れずに投薬してあげてください。
まとめ
今回は、犬のフィラリア予防薬の必要性や投薬時期、またその適正期間、地域による違いをご紹介しました。
フィラリア症は、犬にとっては最悪命を落としてしまう大変危険な病気です。毎月投薬しなければいけないという手間はありますが、その結果として得られる愛犬の健康は、何にも代えがたい安心感に変わります。
投薬する時期が訪れた時には、是非とも最後まで忘れず投薬してあげましょう。
<参考書籍>
もっともくわしい イヌの病気百科 イヌの病気・ケガの知識と治療
<参考サイト>
2021年のフィラリア感染期間|こんない動物病院
>https://www.konnaiahp.jp/2022/02/14/
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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