皆さんは、《交差反応》という言葉を聞いたことはありますか?
交差反応とは、花粉症などのアレルゲンと似たアレルゲンの構造を持つ食材によって、花粉症と似たアレルギー反応を引き起こしてしまうことを指します。
実はその反応は、犬にも存在します。
今回は、花粉症がある犬は要注意!交差反応が起こってしまう食材、誤って摂取した時の症状や対処法について解説します。
<目次>
そもそも犬に交差反応はあるの?
基本的に犬の《交差反応》では、ある種の動物たんぱく質に対してアレルギーを示す際、その種に近い動植物にも同じようにアレルギーを示す事を指します。
つまり、以下のような食材は《交差反応》を示す可能性が非常に高い食材という事になります。
【犬が食べることで起こしやすい交差反応食材】
・鶏≒卵、ウズラなど
・牛≒牛乳、羊、馬、豚、ウサギなど
・小麦≒大麦、ライ麦、オート麦など
上記の食材は、食物アレルギーの観点からも代表的なものとして挙げられ、愛犬たちが実際に口にする機会も多く、関連性も高いため、普段愛犬に食べさせる食事内容に気を付けていれば、そこまで心配する必要はないでしょう。
しかし、例えば愛犬にスギ花粉があった場合はどうでしょうか?
きっと飼い主さんの多くは、スギ花粉が飛散する春の季節の散歩を控えたり、控えないまでも、飛散している時間を避けて散歩したり、頻繁にシャンプーをしたりといった対策を取るのではないでしょうか?
けれど、当然ながらその対策は、あくまでも【花粉症】にのみ有効なものであって、《交差反応》を示す食材に対しての有効性はありません。
そのため、花粉症のある犬が示す《交差反応》では、動物性たんぱく質の食材に限らず、植物性たんぱく質の食材に対しても注意する必要があります。
論文で示された花粉症と食材による犬への交差性
それでは、花粉症の犬が《交差反応》を起こす食材をご紹介する前に、先に論文で示された犬への交差性について、確認していきましょう。
少し古い文献にはなってしまいますが、2002(平成14)年には、人に対して見られるスギ花粉とトマトへの交差性は、犬のスギ花粉とトマトへの交差性でも見られたことが、論文で明らかとされました。
その論文によれば、日本では最も一般的とされるスギ花粉とトマトへの交差性を6歳の雄犬、雑種犬(以下対象犬)が示したとされており、この雑種犬については、元からアトピー性皮膚炎の傾向が強い犬種だったようです。
この対象犬には、4月頃から10月頃にかけて、紅斑や湿疹、脱毛を含む慢性的な皮膚症状を示し、重度の掻痒を伴ったとのこと。
そして、その症状はスギ花粉の飛散時期に、より重篤な状態になったと記録されています。
▼犬のスギ花粉及びトマトアレルゲンに対する特異的IgE|●スギ花粉症対象犬 ○陰性対称犬
しかし、一方で陰性対称として選ばれた20頭の犬については、対象犬とは正反対の結果となり、トマトへのアレルゲン反応は示されませんでした。
この論文報告においては、スギ花粉とトマトに関する交差性の言及のみでしたが、人の花粉症患者では、リンゴやオレンジ、トマトやブドウなど、様々な果物や食材で、《交差反応》が示されている報告が数多く存在します。
近年では、出来る限りアレルギーを除去するために、プレミアムドッグフードなどの需要が高くなってはいますが、そのプレミアムドッグフードの中にも、野菜や果物といった食材は、豊富に使われています。
そのため、動物においてもこうして交差性が分かっているものがあることから、アレルギー体質の愛犬を迎えている飼い主さんの場合には、野菜や果物が使われた食事などは注意してください。
犬が交差反応を起こす食材ってなに?
スギ花粉とトマトへの交差性があることが分かったところで、他に《交差反応》を示す食材にはどんなものがあるのかご紹介します。
基本的に犬自身が花粉症を患っている場合、その多くはブタクサによるものが多いと言われています。
ただ、犬の花粉症ではブタクサが多い、というだけで、そこに関わってくる《交差反応》を示す食材には、以下のような食材が挙げられます。
【花粉症の犬が注意すべき《交差反応》のある食材】
・メロン
・リンゴ
・スイカ
・セロリ
・バナナ
・きゅうり
・トマトetc.
以上が、花粉症の犬が注意したい《交差反応》のある食材です。
犬に与えればどれも喜んで食べそうな食材ばかりが目立ちますが、その中でもトマトに関しては、スギ花粉だけではなく、ブタクサ花粉でも《交差反応》を示すので、注意が必要です。
また、犬の花粉症というのは、一般的にくしゃみや咳といった呼吸器系等よりも、皮膚の痒みや脱毛などの皮膚炎に症状が表れやすいため、元からアレルギー体質になりやすい柴犬やシー・ズー、ゴールデン・レトリバー、パグといった犬種だと、その症状が花粉症なのかそうでないのかは、一度動物病院で調べてもらう必要が生じます。
普段からよく皮膚を痒がっていたり、花粉の季節が訪れると途端に元気がなくなったりする場合には、花粉症を疑ってみましょう。
そして、もしその皮膚症状が食物アレルギーに関連するものではなく、花粉アレルギーに関連するものだったなら、日常的に食べている食べ物を犬に安易に与えるようなことはせず、《交差反応》を示しやすい食材は避けるように注意しましょう。
犬が交差反応を示す食材を食べた時の症状
それでは、仮に犬が《交差反応》を示す食材を誤って口にしてしまった場合、どのような症状が考えられるのでしょうか?
主に以下のようなことが挙げられます。
・下痢や嘔吐
・震え
・よだれ
・皮膚の痒み
・腫脹
このような症状は、犬が誤って食材を摂取してから数分で見られる場合もあれば、数時間経ってから見られる場合もあります。
一般的に、犬のアレルギー症状は、早くて数分、遅くても2時間以内にはその症状が表れると言われています。
論文でご紹介した対象犬についても、15分後には唾液の流出や口唇の強張りや腫脹、舌の震えなどが見られ、さらに30分経過後には、腹部と耳に搔痒を伴う紅潮が見られた、とされていました。
ただ、場合によっては例え愛犬が大量に食べてしまったとしても、全く症状が表れない場合もあるため、最初はある程度様子を見て、愛犬に何か異変が表れていないか確認するよう心掛けることが大切です。
また、通常アナフィラキシーショックについては、数秒~数時間(1時間以内)の間に症状が出ることが多いものの、食物が原因の場合だと、摂取から30分程度経過してから表れることもあるため、すぐに症状が表れなかった=アナフィラキシーショックではないという事も覚えておいてください。
犬が交差反応を示す食材を食べた時の対処法
では、愛犬が《交差反応》によってアレルギー症状が出た場合には、どんな対処法を施せば良いのでしょうか?
結論から申し上げますと、アレルギー症状が出たからと言って、慌ててご自身で愛犬に塩水を飲ませたり、牛乳を飲ませたりして、吐かせることはやめましょう。
時々、「塩を飲ませたり、牛乳を飲ませたりして吐かせましょう。」といった内容を紹介している記事を見掛けますが、このような方法は、かえって犬に辛い思いをさせてしまう可能性があります。
塩水に関しては、ナトリウムの濃度を誤ると、塩分中毒になってしまう危険性があり、牛乳に関しては、元々乳糖の分解酵素が少ない犬には、乳糖不耐による嘔吐や下痢などを招いてしまう場合があります。
一般的に催吐処置には、その時々に応じて適切な処置を施す必要があり、また、その際用いられる方法は、動物病院でおこなう時には吐かせるだけには留まらず、状況によって、内服薬や注射などが必要になる場合があります。
愛犬のことを思うが故に、「すぐさま助けたい!」と思ってしまうのが私たち飼い主ですが、アレルギー症状が表れた場合には、一旦落ち着いて、慌てず動物病院に連絡して、獣医さんの指示を仰ぎましょう。
また、仮に全くアレルギー症状が見られなかった場合であっても、念のため動物病院を受診するよう心掛けましょう。
まとめ
いかがでしたか?
《交差反応》を示す食材には、他にも様々な食材がありますが、今回は犬もかかる花粉症に関連した《交差反応》食材をご紹介しました。
花粉症は人でも一度発症してしまうと、とても辛く、それに伴う《交差反応》を示す食材を食べられないのは、なんだかとっても切ない気持ちが湧いてきてしまいます。
しかし、もし愛犬が花粉症で《交差反応》を示す食材の中に大好物があるなら、是非ともそれに代わるおやつを探してあげてくださいね。
<参考サイト>
口腔アレルギー症候群って、ご存知ですか?|ベックジャパン動物病院グループ
>https://www.vec-j.com/medical-examination/darmatology/2096/
Oral Allergy Syndrome Induced by Tomato in a Dog with Japanese Cedar(Cryptomeria japonica)Pollinosis
>https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvms/64/11/64_11_1069/_pdf
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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