人では何気ない動作で突然グキッ!と腰を痛める『ぎっくり腰』という症状がありますよね。
しかしこの『ぎっくり腰』、実は犬にも起こり得る危険性があります。
今回は、他犬事じゃない!?犬にも起こり得る『ぎっくり腰』の原因や主な症状、また、椎間板ヘルニアとの違いをまとめました。
犬にも起こる『ぎっくり腰』とは?
人でも犬でもそうですが、いわゆる『ぎっくり腰』とは、何かの動作がきっかけで突然激痛が走る急性痛の事を指し、正式名称は、【急性腰痛症】と言います。
犬の『ぎっくり腰』は、基本的に筋肉の障害や関節の損傷によって認められる急性痛なので、人同様痛み自体は鋭く激しいものです。
しかし、痛みの原因がはっきりとしているため、それほど長い期間持続はしません。
とはいえ、犬は人のように「安静にする」という行動自体には難しいものがあり、中でも椎間板ヘルニアになりやすいミニチュア・ダックスフンドといった胴長短足の犬種では、痛みから来る症状が『ぎっくり腰』なのか、「椎間板ヘルニア」なのかをしっかりと見極めておく必要があります。
特に急性椎間板ヘルニアでは、突然キャン!と鳴いたかと思ったら、急に痛がって立ち上がれない、後肢周りに麻痺が出るといった症状が見られ、それこそ、突然のことだと『ぎっくり腰』なのか、「椎間板ヘルニア」なのか判断に迷ってしまう場合があります。
急性椎間板ヘルニアは、症状の重症度に応じて通常の内科的治療に加え、外科的治療やその他代替療法が用いられるため、ミニチュア・ダックスフンドやウェルシュ・コーギー、ペキニーズ、アメリカン・コッカー・スパニエルなどの遺伝的にも注意が必要な犬種については、『ぎっくり腰』及び「椎間板ヘルニア」で見られる痛みの症状の有無に限らず、一度動物病院をしっかりと受診するよう心掛けましょう。
犬が『ぎっくり腰』を起こしてしまう原因
犬が『ぎっくり腰(急性腰痛症)』になる原因は、一般的には不明とされています。しかし、特に室内飼養が当たり前となった昨今では、ついつい愛犬がやってしまいがち、また、私たち飼い主がつい忘れてしまいがちの室内環境に関する事で『ぎっくり腰』のきっかけとなってしまう危険性もあるのです。
発症しやすい原因を一つずつ見ていきましょう。
『ぎっくり腰』の原因その①:室内全面フローリング
今は室内のほとんどがフローリングというお宅は多いかと思いますが、フローリングの床というのは、犬にとってはとても滑りやすく、踏ん張る過程で股関節回りや背中周りに負担を掛けてしまいます。
犬には衝撃吸収材や滑り止めの役割を担う肉球がありますが、その肉球を駆使しても、フローリングのようなツルツルとした材質は、多かれ少なかれ愛犬の足や腰の負担となってしまうため、室内が全面フローリングの場合には、マットを敷いたり、絨毯を敷いたりするなど足腰に負担とならないような対策をしましょう。
『ぎっくり腰』の原因その②:ソファや段差
犬は、ソファや段差を昇り降りする場合も、足や腰に負担をかけてしまいます。
室内飼養でマンションの場合であれば共同の階段、一戸建てであれば室内の階段での昇り降りが多く、また、飼い主さんが普段寛いでいるソファに高さがあると、上に昇りたがる犬には負担となってしまいます。
特に胴長短足の犬種や小型犬は、それがきっかけで『ぎっくり腰』や「椎間板ヘルニア」の発症をしてしまう危険性があるため、階段の昇り降りでは抱っこをしたり、ソファでは脚のないローソファを購入したりするなどして対策をしましょう。
『ぎっくり腰』の原因その③:肥満
犬の体重の増え過ぎで起こる肥満は、人と同じように足腰の負担となってしまいます。
可愛いあまり頻繁におやつをあげたり、事情によりけりではあるものの、気分によって散歩に行ったり行かなかったりすることは、愛犬の健康管理によくありません。
肥満は『ぎっくり腰』や「椎間板ヘルニア」の原因だけに留まらず、生活習慣病の糖尿病や心臓病などの原因にもなりかねないため、おやつを与える時には総摂取カロリーの10%~20%を厳守したり、適度な運動をしたりして肥満にならないよう対策しましょう。
『ぎっくり腰』の原因その④:急激な気温低下
季節の変わり目や冬場に急激な気温低下が起こると、犬の体の中で血流の流れが悪くなり『ぎっくり腰』を起こしてしまう場合があります。
血流の流れが悪くなった状態で急激に動いたり、寒さ対策をせず散歩に出かけたりすると“寒暖差ぎっくり腰”になってしまう危険性があります。
ちなみにこの“寒暖差ぎっくり腰”は、人も注意が必要なので、愛犬も飼い主さんも事前にある程度準備運動をした上で、散歩に行くよう対策しましょう。
犬の『ぎっくり腰』の主な症状
犬に『ぎっくり腰』が起こってしまった時、主な症状には以下のような行動が挙げられます。
『ぎっくり腰』は通常の腰痛と比べてかなりの激痛を伴うため、愛犬の様子を注意深く観察しながら、冷静に対応するよう心掛けましょう。
▼犬が『ぎっくり腰』で見せる主な症状
・お座りをしたがらない
・後ろ足に力が入らない
・丸まって動きたがらない
・おしっこの時足を上げない
・急にキャン!と鳴き動かなくなる
・腰を触ろうとしたら噛もうとしてくる
・食欲がなくなり、体を触ろうとすると嫌がる
犬に『ぎっくり腰』の疑いがある場合、主にこのような症状や行動が見受けられます。
犬の『ぎっくり腰』は上記でも述べたように、筋肉の障害や関節の損傷で起こるため、長期的な痛みの持続力はありません。
ただ、急激な痛みを伴い、特に、痛みから思うように動くことが適わない『ぎっくり腰』は、お座りをしたがらなくなる犬が多いようですので、それまで問題なく出来ていたお座りが出来なくなった場合には、『ぎっくり腰』を疑ってみても良いでしょう。
『ぎっくり腰』と「椎間板ヘルニア」の違い
『ぎっくり腰』と「椎間板ヘルニア」では、唐突な激痛に襲われるという点では同じですが、その判断基準にはいくつかの違いがあります。
痛みの原因による違い
◎ぎっくり腰
主に筋肉、関節の障害や損傷によって痛みが生じる。
◎椎間板ヘルニア
脊椎と脊椎の間にある椎間板が脊髄を圧迫することで痛みが生じる。
痛みが出る体の部位
◎ぎっくり腰
腰周辺のみに痛みが生じる。
◎椎間板ヘルニア
神経の圧迫による痛みなので、腰に限らずお尻周り、後肢周り、また重症化の場合痺れ、下半身麻痺が生じる。
痛みが続く期間
◎ぎっくり腰
筋肉や関節の炎症が落ち着けば痛みが和らぎ、いずれは痛みが軽減する。
◎椎間板ヘルニア
発症直後の痛みが長期に渡り継続し、内科的治療及び外科的治療、保存療法などの処置が用いられる。
以上が『ぎっくり腰』と「椎間板ヘルニア」の主な違いです。
犬の『ぎっくり腰』の場合は、概ね(おおむね)安静にしていれば、痛みはおのずと和らぎ、やがて治まってきます。
しかし一方で、一度犬が『ぎっくり腰』を発症してしまうと、発症した人ならご存知かもしれませんが、再度発症してしまう可能性もあるため、癖になってしまわないように気を付けましょう。
また、ミニチュア・ダックスフンドなどの犬種で起こしやすい「椎間板ヘルニア」には、3歳~6歳までに発症する急性(ハンセンタイプⅠ型)と7歳以上のシニア犬で発症する慢性(ハンセンタイプⅡ型)の2種類に分けられ、且つグレードというものが存在します。
初期のグレードであれば、外科的手術をすることで症状改善が見込めますが、急性で起こった「椎間板ヘルニア」で、突然動かなくなった場合や痛覚消失が見られる深部痛覚の場合、その症状を48時間以上放っておくと、どの治療法を用いても、あまり効果を期待出来なくなってしまいます。
「椎間板ヘルニア」発症の心配がある犬種では、「急性椎間板ヘルニア」特有に現れる判断基準で示した②の体への痺れや麻痺の有無を最重要視し、出来るだけ早く動物病院を受診しましょう。
まとめ
犬にも人同様『ぎっくり腰』と言われる症状が見られる場合がありますが、多くはその原因は不明と言われています。
しかし、原因不明の症状であるという事は、裏を返せば「何かしらの病気」が原因で、症状を起こしている可能性も考えられる、という風にも捉えられます。
もしも愛犬に『ぎっくり腰』の症状が見られる時には、早めの処置や対応を心掛けてあげてください。
<参考書籍>
イヌやネコを愛する人のためのペットの自然療法事典 獣医さんとペット飼い主の架け橋となる本
犬の医学
最新版 愛犬の病気百科 気になる初期症状から最新医療までがわかる
<参考サイト>
犬のぎっくり腰|GREEN chiropractic
>https://www.green-chiro.com/symptomscat/post-5469/
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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