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犬のナルコレプシーってどんな病気?原因や症状・治療方法・好発犬種・予防対策について

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皆さんは、「ナルコレプシー」という病気をご存知でしょうか?

ナルコレプシーとは、慢性的な睡眠障害の事を指し、人に限らず、犬や馬などでも発症することが分かっている病気です。

この記事では、犬のナルコレプシーが起こる原因や症状、治療法、好発犬種、予防対策などをまとめました。

犬のナルコレプシーってどんな病気?

通常人で見られるナルコレプシーは、慢性的に起こる睡眠障害の一種で、日中の過度な眠気や情動脱力発作(カタプレキシー)並びに意識消失、レム睡眠関連障害を特徴とする睡眠サイクル異常と言われています。

一方で犬の場合のナルコレプシーは、食餌や遊びなどの刺激によってカタプレキシー発作を起こすことが知られており、その結果として夜眠りに入る時の時間が短縮してしまったり、覚醒・睡眠における分断化や頻回してしまったりすることが懸念されています。

人では人口の0.02%~0.18%の罹患率が報告されていますが、1970年代に、たまたま食餌によってカタプレキシー発作を有する犬を見つけたことから、犬においても孤発性(非家族性)と遺伝性(家族性)の2種類のナルコレプシーが存在することが発見されています。

また、このうち遺伝性が関係しているナルコレプシーについては、特定の犬種の結果ではありますが、両親の遺伝子変異が両方なのか、片方だけなのかによって、その子犬の罹患率が100%か、約25%か確率が大きく変わってくることも分かっています。

ナルコレプシーになってしまった犬は、感情が高ぶるとそれに反してカタプレキシー反応を示してしまうため、散歩に連れて行く際にも、愛犬と一緒に遊ぶ際にも、そして、犬の生命線である食餌をあげる際にも細心の注意が必要となります。

また、犬のナルコレプシーは、あまり知られていないこともあって、しばしば脳疾患の犬のてんかん発作と間違われることも多い病気です。

そのため、獣医さんを受診する時には、慎重な判断、適切な状況説明など心掛けた上で診察してもらうようにしましょう。

犬がナルコレプシーを発症する原因

犬がナルコレプシーを発症する原因は、主に視床下部の神経ペプチドで食欲及び睡眠と覚醒のスイッチを担うヒポクレチン(オレキシン)の神経伝達障害によるものと言われています。

それを踏まえた上で、遺伝性(家族性)か孤発性(非家族性)かの違いについては、以下のような違いがあるため、確認してみましょう。

遺伝性(家族性)ナルコレプシー=先天性

犬の遺伝性ナルコレプシーにおいては、まずヒポクレチン受容体2遺伝子(Hcrtr2)が変異してしまうことでヒポクレチンの神経伝達が阻害され、発症すると言われています。

発症時期は早ければ生後4週齢ごろからで、遅くとも生後6か月頃までには症状が見られます。

また、カタプレキシー発作については、約16週齢から24週齢に最高値に達し、雄よりも雌の方が重度症状を示すと言われているため、後述する好発犬種は注意しましょう。

孤発性(非家族性)ナルコレプシー=後天性

孤発性が関係している犬のナルコレプシーにおいては、遺伝性とは異なり、何らかの理由が原因で起こったヒポクレチン生産障害によって発症すると言われています。

人の場合で起こるナルコレプシーについては、自己免疫異常の影響でヒポクレチン生産に障害が起こる自己免疫疾患だと言われていますが、犬に関しては、髄膜脳炎や外傷、腫瘍といった別の病気によって引き起こされる傾向が強く、発症時期も幅があるため、様々な病気を発症しやすくなるシニア犬は特に注意が必要です。

犬のナルコレプシーの症状について

犬で見られるナルコレプシーは上記でも少し触れましたが、食餌をあげる時や散歩に出掛ける時、また、愛犬と一緒に遊ぶ時など、犬が興奮状態に達しやすくなる場面で症状として表れます。

△イヌ・ナルコレプシーにおける各種抗カタプレキシー薬による治療効果|実症例:チワワ/雄/6歳齢/2002年時

参照元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/16/3/16_3_71/_pdf/-char/ja

上記は、犬のナルコレプシーにおける治療効果に関する文献で、実際に症例として治療および経過をまとめた一部を引用したものです。

犬のナルコレプシーは、このように突然全身または膝や腰などが弛緩して脱力発作を起こしてしまいます。

発作中は多くの場合意識が保たれており、目も開いたまま横になります。この発作は時間にして数秒から数分程度で、その後眠りに落ちた場合には、筋肉の痙攣や手足などの動きが見られます。

一方で、声をかけたり揺すったりすれば、その刺激によって発作を妨害できます。

犬のナルコレプシーは、遺伝性であれ、孤発性であれ、特段違いは見られません。

しかし、この状況を見ても分かる通り、発作が起こる時間や痙攣、虚脱といった症状は犬のてんかん発作ととても酷似しているため、特に遺伝性でナルコレプシーを発症してしまった時には、ちゃんとした診断を獣医さんにしてもらうためにも、どんなタイミングで、どんな状況でこの発作が起こるのか、しっかりとメモを取っておきましょう。

犬のナルコレプシーの治療方法って?

犬のナルコレプシーの治療方法は、主に以下のような投薬によって行われます。

・イミブラミン(三環系抗うつ薬)

・ヨヒンビン(アドレナリンα‐2受容体拮抗薬)

・スルピリド(ベンズアミド系抗精神病薬)

現段階では、犬のナルコレプシーにおいても、人のナルコレプシーにおいても根本的な治療法は確立されていないため、上記の経口投薬によって症状の緩和を図るしか治療方法はありません。

また、ナルコレプシーは進行性かつ致死的な疾患という訳ではないので、犬の命に関わるような病気ではないですが、一度発症してしまうと生涯にわたって症状が続き、適切な薬物療法は必須とされています。

しかし、これら投薬に加え、愛犬と生活する空間の見直しや飼い主さんご自身が愛犬、また、病気に対する知見や向き合い方を工夫する事で、状態改善に努めることは十分に可能だと思います。

犬のナルコレプシーを発症する好発犬種

犬のナルコレプシーは、孤発性の場合は主に病気が関係している可能性が高いため、これと言って好発犬種をあげることは難しいですが、遺伝性の場合に注意が必要な好発犬種は以下の通りです。

【ナルコレプシー好発犬種】
・ラブラドール・レトリバー※
・ドーベルマン※
・プードル
・ミニチュア・ダックスフンド
・ビーグル

主に上記が遺伝的にナルコレプシーを発症しやすいと危惧されている犬種になります。

この中でも、特にラブラドール・レトリバーとドーベルマンについては、両親ともに遺伝子劣勢変異が見られる場合には100%、どちらか片方が不顕性キャリアの場合には25%の確率で、ナルコレプシーを発症することが分かっています。

遺伝性が関係しているナルコレプシーは、残念ながら浸透率が100%とされていることから、「どちらか一方から遺伝子を受け継ぎつつ発症しない子犬」というのは基本的には存在しません。

そのため、少しでも異変を感じるようなことがあれば、動物病院を受診して、獣医さんに相談するようにしましょう。

もしも愛犬がナルコレプシーになってしまったら…

いつどんな理由で発症してしまうか分からないナルコレプシーに、もしも愛犬が発症してしまったら、どうすればよいのでしょうか?

結論から申し上げれば、明確な予防対策というものは残念ながら存在しません。

しかし、愛犬のためにしてあげられる生活環境の見直しや工夫を施してあげることは可能です。

いくつか具体例があるので以下で確認してみましょう。

床にはクッション性のある床材を敷く

ナルコレプシーを発症した時には、カタプレキシー発作がいつ起こるか分からないため、床にはクッション性のある床材を部屋一面に敷き詰めましょう。

床材を敷き詰めることは、愛犬のケガ予防が出来るだけではなく、滑りやすいフローリングで足を痛めることも予防できるため、ナルコレプシーを発症していなくともオススメな予防対策法です。

角がある家具はクッション材を取り付ける

ナルコレプシーを発症して、カタプレキシー発作が起こってしまった時にはテーブルの脚や椅子の脚、本棚の角や柱の角など、愛犬が倒れてそのまま頭や体をぶつけない為に、市販で売られているクッション材でケガ予防に努めましょう。

シニア犬の場合には特に白内障などの病気も発症しやすくなるため、そうなった時にも役立てることが出来てオススメです。

遠出やプールなどには連れて行かない

愛犬とのお出かけを楽しみたい飼い主さんにとっては、とても残念なことかもしれませんが、愛犬がナルコレプシーを発症してしまった際には、出来る限り遠出は控えるようにしましょう。

また、プールについても愛犬が泳いでいる最中に万が一カタプレキシー発作を起こしてしまうととても危険なため、連れて行くのは控えましょう。

愛犬に異変があった時にはすぐに病院へ…

いかがでしたか?

ナルコレプシーは、人であっても人口のわずか0.02%~0.18%ととても発症が稀な病気のため、犬でこの病気が発症してしまうと、驚かれてしまう飼い主さんは多いと思います。

また、ナルコレプシーは再三お伝えしているように犬のてんかん発作にとても似ているため、診断するためには慎重な判断も求められることでしょう。

しかし、もし愛犬にナルコレプシーのような疑わしい症状が見られたなら、すぐにかかりつけの獣医さんに相談して、適切な診断、適切な治療を施してもらってくださいね。

<参考書籍>

犬の医学

<参考サイト>

イヌ・ナルコレプシーにおける各種抗カタプレキシー薬による治療効果
>https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/16/3/16_3_71/_pdf/-char/ja

Suspected acquired narcolepsy in 8 dogs|8頭の犬に後天性ナルコレプシーの疑い
>https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33960533/

Development of cataplexy in genetically narcoleptic Dobermans|遺伝的ナルコレプシー・ドーベルマンにおけるカタプレキシーの症状
>https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9710528/

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yukako

yukako

幼少期の頃より柴犬やシェットランド・シープドッグと生活を共にし、現在は3代目となる柴犬と暮らしております。
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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