「腫瘍」と聞くと、どんなイメージを持っているでしょうか。
なにか特別な病気のイメージがあるかもしれませんが、5歳の犬の死亡原因では第3位、10歳の犬の死亡原因では第1位にランクインしている意外と身近にある病気です。
そこで今回は「腫瘍はどんな病気なのか」や「腫瘍にかかりやすい犬種」などをご紹介します。
腫瘍にかかったときの診療費なども含めてご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
愛犬の年齢が7歳を超えたら「腫瘍」に注意
ペット保険のアニコム損害保険株式会社が保険金請求データをもとに犬の腫瘍疾患の発症率を調査したところ、腫瘍が発生しやすい年齢は下記のようになりました。
▼犬の年齢別腫瘍疾患発症率
(2008年度にアニコム損保に契約した犬 217,150 頭を対象に集計)
グラフを見てみると年齢とともに発症率が高くなっていることがわかります。
0歳から4歳ごろまではほとんど横ばいですが、5歳を超えたあたりから徐々に増加傾向が見られ、7歳ごろには10%ほどの発症率になっています。
10歳には17%近くまで発症率が上がっており、6頭に1頭が腫瘍を発症していると考えると、年齢とともに注意しておかなければならない病気だということがわかります。
では、そもそも腫瘍とはどんな病気なのでしょうか。
次章で詳しくみていきましょう。
「腫瘍」ってどんな病気ですか?
腫瘍の定義はいろいろとあるのですが、おおまかに言うと「体内の細胞が自分で過剰に増殖する状態」のことをいいます。
腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があり、良性の場合は転移することが少なく、悪性の場合は転移することが多いです。
では、犬はどんな腫瘍にかかることが多いのでしょうか。
一覧にまとめました。
▼犬がかかりやすい腫瘍
・「肥満細胞腫」→犬の皮膚に多くみられる悪性の腫瘍。
・「乳腺腫瘍」→未避妊の高齢のメスがかかりやすい乳腺組織の腫瘍
・「リンパ種」→血液由来の細胞リンパ球が癌化したもの。
・「血管肉腫」→血管を作る細胞のガン
腫瘍の厄介なところは「皮膚のしこり」や「リンパの腫れ」といった飼い主さんが発見しやすい現れ方だけでなく「なんとなく元気がない」「疲れやすい」といった一見腫瘍と結びつかないような症状も現れるところです。
また他の臓器へ転移しやすかったり、急に進行したりするケースも少なくありません。
愛犬の年齢が7歳前後になったら、腫瘍という病気にかかりやすい年齢になったことを忘れず、体や行動に変化がないか注意深く観察するようにしましょう。
「腫瘍」にかかりやすい犬種は?
では腫瘍に特に注意しておいたほうがよい、かかりやすい犬種はいるのでしょうか。
アニコム損害保険株式会社がおこなった同調査によると腫瘍の発症率が高かった犬種は下記のようになりました。
▼犬種別腫瘍疾患発症率
(2008年度にアニコム損保に契約した犬 217,150 頭を対象に集計)
腫瘍発症率が高い犬種トップ5
1位:「ゴールデン・レトリーバー」
2位:「パグ」
3位:「ラブラドール・レトリーバー」
4位:「ミニチュア・シュナウザー」
5位:「ウェルシュ・コーギー・ペンブローク」
腫瘍の発症率が一番高かった犬種は「ゴールデン・レトリーバー」で次に「パグ」「ラブラドール・レトリーバー」の順になりました。
どうして「ゴールデン・レトリーバー」は腫瘍の発症率が高くなるのでしょうか。
原因はまだ解明されていないのですが、特定の犬種の発症率が高いことから遺伝が発症の要因になっているのではないかという説もあります。
ランキングにランクインした犬種を飼っている飼い主さんは、定期的に動物病院で健康診断を受けさせるなど早期発見できるようにしておきましょう。
「腫瘍」の診療費はいくら?
では、いざ腫瘍を発症してしまったら診療費はどのくらいかかるのでしょうか。
同調査で腫瘍の診療費を年齢別に調べたところ、結果は下記のようになりました。
▼腫瘍の年間診療費
(2008年度にアニコム損保に契約した犬 217,150 頭を対象に集計)
腫瘍の発症率は年齢とともに増加傾向にありましたが、表を見てみると診療費も年齢とともに増加傾向にあることがわかります。
発症率が高くなってくる7歳前後では6~7万円台、発症率が17%を近くあった10歳では8万円を超える診療費がかかってくることが推察されます。
腫瘍にはいろんなバリエーションがあるため、治療とひとくちにいっても早期の手術で根治できるものから、お薬を使って腫瘍ができる前の体調を目指して延命させていくものまでさまざまあります。
ただどんな腫瘍であっても早期発見をして、早めに治療計画を立てることがその後の犬の生活を大きく左右します。
獣医師さんと「愛犬に今後どんな人生を送らせたいか」をしっかり話し合うことが大切です。
「腫瘍」は死亡リスクも高い病気
ペット保険のアニコム損害保険株式会社が発表した「疾病情報の統計データ」によると5歳と10歳の犬の死亡原因は下記のようになりました。
▼5歳の犬の死亡原因(死亡 3 0 日以内の請求割合)
▼5歳の犬の死亡原因トップ3
1位:「消化器疾患」19.5%
2位:「全身性の疾患」18.0%
3位:「腫瘍」17.3%
▼10歳の犬の死亡原因(死亡 30日以内の請求割合)
▼10歳の犬の死亡原因トップ3
1位:「腫瘍」22.6%
2位:「循環器疾患」19.5%
3位:「消化器疾患」16.8%
腫瘍は5歳の犬の死亡原因の第3位、10歳の犬の死亡原因の第1位にランクインしています。
また5歳と10歳のグラフを比較すると、腫瘍で亡くなる犬は1.3倍ほど10歳になると増えていることがわかります。
つまり腫瘍は発症率も高いですが、死亡リスクも高い病気だと言えます。
冒頭でも少しお話しましたが腫瘍は急に進行したり、他の臓器への転移もある病気です。
年をとるのも病気になるのも避けられないことなので、少しでも早期発見できるように7歳前後になったら、腫瘍が増える年齢だということを意識するようにしましょう。
腫瘍は特別なイメージがあるかもしれませんが、意外と愛犬の身近に潜む病気です。
状態によっては完治せず、通院期間も長くなります。
愛犬だけでなく飼い主さんの生活も大きく変化する病気なので、今回ご紹介した内容を覚えて、愛犬の健康管理にぜひお役立てください。
<参考書籍>
イラストでみる犬の病気
編集 小野 憲一郎 今井 壯一 多川 政弘 安川 明男 後藤 直彰
<参考URL>
犬のリンパ腫 松原動物病院
>https://mah.jp/medc/doglymphoma
イヌの遺伝病を新発見 発がんメカニズム解明の可能性も 朝日新聞デジタル
>https://www.asahi.com/articles/ASN746T4DN63OHGB00J.html
アニコム家庭どうぶつ白書2021
>https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_202112.pdf
犬の腫瘍疾患 10 歳で6頭に1頭が発症
>https://www.anicom-page.com/hakusho/statistics/pdf/20110927.pdf
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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