冬になると関節に痛みを感じるという方も多いのではないでしょうか。
人と同じく犬も冬は骨や関節のトラブルが出やすい季節だと言われています。
そこで今回は「冬に骨や関節の病気が増える理由」や「注意すべきポイント」をご紹介しますので、寒い季節の健康管理にぜひお役立てください。
冬は骨や関節の病気が増える?!
ペット保険のアニコム損害保険株式会社が「どうぶつ健康保障共済制度」の給付金請求データをもとに、ペットが冬季にかかりやすい病気を調査しました。
各疾患の季節別請求数を集計したところ、結果は下記のようになりました。
▼犬の筋骨格系の疾患(季節別請求件数)
▼犬の筋骨格系の疾患が多い月は?
1位:「12月~2月」18,444件
2位:「3月~5月」18,345件
3位:「9月~11月」17,760件
4位:「6月~8月」16,581件
筋骨格系の疾患が一番多い月は「12~2月」で次に「3~5月」の順になりました。
グラフを見てみると筋骨格系の病気は夏場には減りますが、気温が下がるにつれて請求件数が増えていき、12~2月にかけてピークを迎えていることがわかります。
では、どうして冬に筋骨格系の病気にかかりやすいのでしょうか。
次章で詳しくみていきましょう。
冬に骨や関節の病気が増える理由は?
冬に骨や関節の病気が増える理由はなんでしょうか。
考えられる原因をまとめてみました。
▼冬に骨や関節の病気が増えるのはなぜ?
・寒さで血行が悪くなりやすい
・寒さで痛みが出やすい
・寒さから動くのを嫌がって筋肉がこわばりやすい
・運動量の低下で体重が増え、膝に負担がかかる
寒さを感じると血管が収縮するため、血行不良を起こしがちです。
血行不良を起こすと筋肉が硬くなり、動かすときに負荷がかかりやすくなるので、関節トラブルを引き起こしやすくなります。
また、血行不良は痛みも引き起こします。
寒さで動くのを億劫がって長時間同じ体勢で過ごすので体がこわばりやすかったり、体重が増えるのも関節にトラブルが出やすい要因のひとつです。
つまり、冬は関節トラブルが起きやすい条件がそろっているので、骨や関節の病気が増加傾向にあると考えられます。
冬に気をつけたい骨や関節の病気
では、犬に起きやすい骨や関節の病気はなにがあるでしょうか。
冬に気をつけたい病気を3つご紹介します。
▼気をつけたい骨や関節の病気3つ
①膝蓋骨脱臼(パテラ)
②椎間板ヘルニア
③関節炎
①膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝蓋骨脱臼(パテラ)は後ろ足の膝の骨が正常な位置から外れてしまう病気です。
膝の骨が外れてしまうと足の曲げ伸ばしが上手くできないため、「スキップ」「ケンケン歩き」「腰を落として歩く」といった症状が現れます。
特定の犬種(トイプードル)の発症率が高いことから遺伝的要因が関係していると言われていますが、滑りやすい環境(フローリングなど)で生活していたり、肥満などで慢性的に膝に負荷がかかっていたりする場合も発症する可能性があります。
冬場は特に注意しましょう。
②椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは骨と骨との間のクッション役である「椎間板」が飛び出して脊髄を圧迫して神経に異常をきたす病気です。
腰の部分で起きることが多いですが、首の部分でも起きることがあります。
椎間板ヘルニアも発症に遺伝的要因が関係していると言われていますが、加齢や滑りやすい環境での生活、肥満などでも発症する可能性があります。
ダックスフンド、コーギーといった銅が長く足が短い犬種はその体の特徴から椎間板ヘルニアを発症しやすいと言われているので、冬場は特に注意しましょう。
③関節炎
犬の骨と骨の間には骨同士の接合面を保護して動きをなめらかにする「関節軟骨」という部分がありますが「加齢」「肥満」「膝蓋骨脱臼(パテラ)の発症」などによってすり減っていきます。
「関節軟骨」がすり減ると骨同士がぶつかりやすくなるので、棘状の骨が形成されて刺激になったり、炎症や痛みが出てきたりします。
この状態が「関節炎」です。
痛みを抱えながらの生活は犬の負担になりますし、関節炎が悪化すると歩けなくなることもあるので、歩き方や仕草に違和感がないか注意しましょう。
関節トラブルを起こさないために注意するポイント
では寒い季節に関節トラブルを起こさないために、飼い主さんができることはなんでしょうか。
注意するポイントを5つご紹介します。
▼関節トラブルを起こさないための注意ポイント
①散歩や運動の前にウォームアップ
②肥満にさせない
③滑りにくい生活環境を作る
④段差をなくす
⑤歩き方に違和感がないかチェック
①散歩や運動の前にウォームアップ
散歩に行く前や運動をする前に関節に負担をかけないようにウォームアップをしましょう。
おすわり→お手→おかわり→伏せ→立ての順番で何度か繰り返し、体や手足を曲げ伸ばしてほぐしていきます。
手足を曲げ伸ばしした後は、部屋の中を軽く歩きまわって体を温めておきましょう。
とくに寝起きは体がこわばりやすいので、朝の散歩前や昼寝から覚めたときにすることをおすすめします。
②肥満にさせない
肥満体型になると増えた体重が足や腰にかかるので、関節炎や椎間板ヘルニアを発症しやすくなります。
また、関節の負担だけでなく糖尿病による失明や皮膚のたるみやシワが増えることで皮膚疾患にかかりやすいなど、別の病気をまねくリスクも高くなるので肥満にさせないように体重管理に気をつけましょう。
③滑りにくい生活環境を作る
フローリングのように滑る床を歩いていると足や腰に力が入りやすいです。
その状態で走ったり遊んだりすると、椎間板に大きく負担がかかってしまいます。
特に遊んでいるときは夢中になるので、犬自身で力の加減ができません。
床にマットを敷く、足裏の毛を短く切るなど、犬が滑りにくい生活環境を作ってあげましょう。
④段差をなくす
ソファーやベッドから飛び降りると、腰や足に大きな負担がかかります。
また、階段の多くは人に合わせて作られているため、幅や段差が犬の体にあっておらず、膝や腰に負担をかける無理な姿勢をとることになります。
階段の上り下りはなるべく避けるようにしましょう。
ソファーやベッドには犬用のスロープや犬用の階段をつけて段差をなくすようにしましょう。
⑤歩き方に違和感がないかチェック
関節に痛みが出たり膝蓋骨が外れたりすると下記のような仕草や歩き方がでるようになります。
・突然「キャン」と鳴いて足を気にする
・スキップ歩きをする
・ケンケン歩きをする
・突然、足を伸ばし始める
・腰を落として歩く
・ジャンプや段差をためらうようになった
散歩や歩き始めのときに「なんだか歩き方が変かも」と気づくことが多いです。
早期発見、早期治療をすることが何よりも大切なので、歩き方をしっかりチェックして「なにかおかしい」と感じたらすぐに動物病院に行くようにしましょう。
冬は骨や関節の病気を発症しやすい季節ですが、散歩前にウォームアップをする、滑りにくい生活環境を作るなどで予防することも可能です。
関節トラブルは自然に治ることがない病気なので、日常的に予防を心がけることが大切です。
<参考URL>
犬は骨や関節の疾患(特に関節炎)、猫は膀胱炎にご注意!
https://www.anicom-page.com/hakusho/medical/pdf/091209.pdf
<参考書籍>
小動物獣医看護学 小動物看護の基本と実践ガイド 上巻・下巻 西田 利穂 (翻訳), 石井 康夫 (翻訳), D.R.Lane B.Cooper
イラストでみる犬の病気 編集 小野 憲一郎 今井 壯一 多川 政弘 安川 明男 後藤 直彰
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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