春から夏にかけて季節が変わる時に気を付けたい熱中症。
罹りやすい季節としては、やっぱり『夏』のイメージが強い熱中症も、実は5月頃から対策が必要です。
人にとってはまだまだ過ごしやすい季節の熱中症に罹りやすい犬種って?熱中症の症状や応急処置、病院に掛かった場合の費用などをまとめました。
<目次>
犬の熱中症は飼い主さん在宅時の方が多かった!
愛犬が熱中症に罹ってしまった経験がある飼い主さんのアンケート結果では、発生場所の約半数で「散歩中・ドッグラン」及び「リビング」での発生が多かったことが、大手ペット保険会社のアニコム損害保険株式会社様の調査及び報告で明らかになっています。
▲【熱中症の発生場所】 【リビングで発生した時の状況】|アニコム損害保険株式会社
出典元:https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2013/news_0130419.html
このアンケート結果の【散歩中・ドッグラン】については、「真夏日だった」とか「炎天下の中走り回った」など、暑さ、状況ともに熱中症になりやすい環境下だったことが窺えますが、【リビング】で熱中症になったと回答した飼い主さんについては、「ペットだけで留守番中」の36.4%よりも、「家族も家に居た」の63.6%という結果は、意外だったのではないでしょうか?
犬種によって多少異なりますが、犬の一般的な適正室内温度は、大体20℃~25℃と言われており、夏場の場合には特に25℃以下が犬にとってはとても過ごしやすい室内温度と言われています。
しかし、朝晩の気温差や日中の気温の差などがまだまだ生じやすい春から夏にかけての時期は、飼い主さん自身が快適だと思っていても、愛犬にとってはそうじゃない可能性が考えられます。
室温や湿度など、例え在宅中であったとしても、この頃からの室内環境には十分に意識するように心掛けてあげましょう。
犬の熱中症は5月から急増で8月がピーク
上記でもお伝えした通り、人の5月という季節は、まだまだどちらかというと過ごしやすい季節に当て嵌まるかと思いますが、犬の場合には、4月~5月頃で熱中症対策の本番を迎えます!
中でも5月は、丁度春から梅雨、夏の時期にかけて気温の上昇や気圧の変化などが目まぐるしく変わり、4月以上に熱中症に罹るワンちゃんが多くなってしまう季節で、熱中症によって起こる保険請求も、5月から月を追う毎に一気に急増しており、こちらもアニコム損害保険株式会社様の調査・報告で分かっています。
この背景には、多くの飼い主さんがご存知の通り、犬の体の基本構造が原因していると言えるでしょう。
犬の体というのは、基本的に体温を下げる作用を持つエクリン線が限られた場所(鼻の頭や肉球など)にしか存在していません。
そのため、体の広範囲にエクリン線を持つ人とは違って、5月であっても犬にとっては暑さを感じている場合があります。
熱中症の発生場所の【その他旅行先など】では、8%程度でしか熱中症が発生していない状況ではありますが、気温差が激しいと数時間のうちに熱中症に罹ってしまったという症例が実際に報告されています。
5月という季節は、大型連休のゴールデンウィークということもあって愛犬と一緒に遠出を考えている飼い主さんも多いかもしれませんが、「まだ5月だから熱中症は大丈夫」と油断せずに、しっかりと愛犬の体調を気にしてあげるのを忘れないようにしてあげましょう。
熱中症に罹りやすい犬種って?
熱中症に罹りやすく、注意が必要な犬種には、大型犬種や短頭犬種、胴長短足の犬種、寒冷地域出身の犬種が挙げられます。
大型犬種や寒冷地域出身の犬種の場合では、ベルクマンの法則(大きさの法則)が関係しているとされていて、基本的に大型の動物は小型の動物よりも放熱を抑える傾向にあって、体温が下がりづらいという特徴を持っています。
また、寒冷地域出身の犬種はそれに加え、元々暑さに弱く、毛が密生していることも、熱中症に罹りやすい一つの要因です。
一方で短頭犬種や胴長短足の犬種の場合は、地面との距離の近さによって放射熱を浴びやすく、その放射熱は暑いアスファルトの上で最高温度60℃にまで昇るとされています。
また、短頭犬種の多くは元々顔の作りの影響で気道が狭く、パンティング(ハァハァと舌を出すこと)をしても、熱が放出しづらいことが、熱中症に罹りやすい原因とされています。
上記で示したアニコム損害保険株式会社様が行った熱中症の犬種別発生割合の統計データにおいても、スイスを原産とするバーニーズ・マウンテン・ドッグやブサカワ犬としてとても人気の高いフレンチ・ブルドッグ、家庭犬としても使役犬としても有能なゴールデン・レトリバーなど、やはり比較的寒冷地域出身、短頭犬種、大型犬が発生割合としては多いことが分かっています。
このほかにも、肥満気味の子や子犬、8歳を超えた高齢犬、心臓や気管などに持病を持つワンちゃんなども、熱中症になりやすい傾向が強いため、そういった場合には5月頃から十分に注意する必要があります。
愛犬が熱中症に罹ってしまった時の症状と応急処置
愛犬が熱中症に罹ってしまった時の症状としては、熱中症の重症度により見られる症状に多少違いが生じます。
【熱中症に罹ってしまった時の主な症状】
<軽度>…食欲がない、動きが緩慢、ハァハァと口呼吸する
<中度>…体温が40度以上、嘔吐や下痢、脱水症状
<重度>…起立不能、意識混濁、痙攣
これら症状は犬種によって、また、場所や状況によって見られる順番は違ってくる場合があります。
また、犬の食欲低下やパンティングといった行動は普段からよく見られる姿であるため、『夏』=熱中症というイメージが強い私たち人間にしてみると、春から夏にかけての犬の熱中症は重症化しないと気づけない可能性が十分に考えられます。
熱中症は重度症状を呈してしまうと50%の高確率で死亡してしまう場合があるため、少しでも上記の症状に当て嵌まるような姿が愛犬に見られた場合には、まずは応急処置として、徹底的に体温を下げることを意識してあげましょう。
具体的に、愛犬の体温を下げる際には保冷剤や保冷枕、氷のうといった体を冷やせるものを用意します。
そして、保冷剤などを愛犬の後頭部や首、脇、内股などの太い血管が通っている場所に当てて、体温が39℃以下に下がるまで続けます。
もしも脱水症状が見られる場合には、合わせて水で2倍に薄めたスポーツドリンクを体重1kgあたり10㏄以上飲ませるか、水1ℓに対し、砂糖大さじ2(約20g)、塩小さじ1/4(約1.5g)の経口補水液を作って愛犬に飲ませてあげましょう。
この際注意しておきたいのは、経口補水液は少しずつ与えること、その都度作り、冷蔵庫で保管できる場合であっても1日で使い切ることに注意しましょう。
熱中症で病院にかかった時の平均費用
犬が熱中症に罹ってしまった時の治療方法としては、上記でご説明した応急処置と、症状次第で必要になってくる動物病院での処置があります。
熱中症の場合、応急処置を施したからといって安心するにはまだ早く、場合によってはその後脳や内臓に障害が起こる可能性があるため、愛犬を冷やし続けながら必ず動物病院で診察してもらうことが大切です。
特に嘔吐症状を呈している熱中症や口を開けて呼吸が治まらない熱中症の場合には、経口補水液をご自身で与えるよりも点滴やステロイド剤が必要になる場合もあります。
そのため、こうした熱中症治療に掛かってくる治療費は、年間平均診療費だけでも2万円程に昇っており、熱中症重症化によって入院も必要になった時には、平均でも6万円以上かかってしまうことが分かっています。
大切な愛犬のためならば万が一熱中症になってしまっても、そこに掛かってくる治療費の捻出は惜しまないというのが多くの飼い主さんの気持ちだとは思いますが、やはり日ごろからの熱中症対策を意識してあげるのを大前提に、愛犬を熱中症から守ってあげてください。
まとめ
犬の熱中症対策は、基本的に春からが本番です。
人にとってはあまり感じない暑さも、犬からしてみたら結構感じてしまっている場合も少なくないため、遅くても6月の梅雨本番になる前までには、少しずつでも愛犬のための熱中症対策に気を付けてあげてください。
<参考書籍>
決定版 犬と一緒に生き残る防災BOOK
<参考サイト>
おうち時間も、熱中症に厳重注意を 獣医師・気象予報士が犬のために開発した「犬の熱中症週間予報」配信開始!
>https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2021/news_0210422.html
ゴールデンウィークからペットの熱中症が急増、暑さ対策に注意を!
>https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2013/news_0130419.html
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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