春の季節は進学や就職、転勤に伴う引っ越しや生活環境の変化などが何かと多くなる時期ですが、そんな時に気を付けたいのが犬の『分離不安症』。
「うちの子は依存性もないし、お留守番の時も大人しいから大丈夫!」
と飼い主さんが思っても、甘く見るのは危険かもしれません。
現時点で問題がない子でも、あるきっかけが原因で起こってしまうかもしれない『分離不安症』の原因や対処法、なりやすい犬種についてまとめました。
犬のタイプ別で見る『分離不安症』
犬が『分離不安症』になってしまう原因を知る前に、まずはご自身の愛犬がどんなタイプに該当するのかを見ていきましょう。
犬の『分離不安症』で生じる問題行動の多くは留守番をさせた時に見られることが多いため、その点を考慮しながら当てはめてみてくださいね。
一人でいる時間を持て余す退屈タイプ
普段の生活において、飼い主さんは十分な遊び、十分な散歩をしているつもりでも、愛犬にとっては足りていないことでその有り余ったエネルギーを発散するべく問題を起こしてしまう「退屈」タイプ。
このタイプのワンちゃんは、普段から活動的で元気いっぱいなエネルギッシュな一面があり、飼い主さんが居る、居ない関係なく問題行動を起こすのが特徴です。
置いて行かれるのが許せない分離不満タイプ
飼い主さんがいざ出掛けよう!とした瞬間を見計らって問題行動を起こして飼い主さんの注目を浴びようとする「分離不満」タイプ。
このタイプのワンちゃんは、「なんで自分だけ置いていくの!」という飼い主さんへの不満が爆発してトラブルを起こしやすく、飼い主さんが出掛けようとすると問題行動を起こすのが特徴です。
飼い主さんと離れると不安を感じてしまう分離不安タイプ
常日頃から飼い主さんの事が大好きで、飼い主さんがちょっとでも自分から離れようとすると不安を感じてしまう、『分離不安症』という症状で特にフォーカスされる代表的な「分離不安」タイプ。
このタイプのワンちゃんは、普段は飼い主さんの後をついて回る子が多く、飼い主さんが一度出かけたら「もう二度と帰ってこないかも…」という不安から、不安を紛らわせ、安心感を得ようと問題行動を起こすのが特徴です。
犬が『分離不安症』になってしまう原因とは?
犬が『分離不安症』を発症してしまう原因は、いくつか考えられますが、その主な原因として挙げられるのが以下のようなことです。
【分離不安症発症の主な原因】
・新しい家への引っ越し
・留守番中地震などの恐怖体験
・ペットホテルに預けられる
・進学や就職などで人の増減がある
『分離不安症』になる原因としてザっと挙げただけでもこういったことが原因で、大切な愛犬が『分離不安症』を発症してしまう危険性が考えられます。
特に2020年からは未曽有のコロナウイルスによるパンデミックで、飼い主さんの業務形態がテレワークになり、自宅で仕事をする機会が多くなった人も、それから4年余りが過ぎ、徐々にコロナに対する脅威にも慣れてきたことで、今度は春の季節なのも相まって、出掛ける頻度が多くなることも…。
しかしその人の出入りが激しくなる環境の変化は、逆に犬に不安を与えてしまい、不安から来る『分離不安症』を招きやすくなる結果に繋がってしまう可能性があります。
本来群れで生活していた犬にとっては、飼い主さんのそういった行動は自ら群れを離れていってしまうのと同じ行為。
人にとってはそれが当たり前の行動でも、犬にしてみたら、それまで一緒にいた飼い主さんが居なくなってしまうのだから、不安や恐怖、戸惑いなどが生まれてもおかしくないですよね。
そのため、それまで留守番も平気だったというワンちゃんでも油断は大敵なんです。
では、万が一ご自身の愛犬がこういった生活環境の変化によって『分離不安症』を患ってしまったら、どうすれば良いのでしょうか?
続いては、『分離不安症』になってしまった時に心掛けたい対処法をご紹介します。
愛犬が『分離不安症』になってしまった時の対処
上記で述べましたが、犬には主に、「退屈」タイプ、「分離不満」タイプ、「分離不安」タイプの3タイプに分けることが出来ます。
基本的に「退屈」タイプの場合であれば、遊びを取り入れて十分にエネルギー発散をさせることやイタズラできないような環境を一部屋作って噛んでも良いおもちゃなどを与えることから始めてみましょう。
ただ、残りの「分離不満」タイプと「分離不安」タイプについては、まずは飼い主さん自身が愛犬との接し方を見直す必要があり、行動の激しさなど場合によっては行動療法や薬物療法を必要とするため、そういった場合には迷わず獣医師に相談するようにしてください。
「分離不満」タイプの犬の対処法は要求に応えない
吠えたり引っかいたりして飼い主さんの注意を引こうとする「分離不満」タイプのワンちゃんの場合、この心境としては「なんで置いていくの!」という文句に近い可能性があり、まさに「分離不安」ならぬ「分離不満」ということが言えます。
このタイプのワンちゃんは、自分の要求が通らずに飼い主さんが出掛けてしまうと不満が爆発して、早ければ出掛ける素振りを見せた瞬間に、そうでなくとも出掛けて数分経ったら行動を起こしてしまいます。
犬は時間が経ってから飼い主さんに叱られても、それが自分の起こした問題行動のことだという認識が出来ません。
そのため、もしもこういった態度が見られるワンちゃんであるなら、まずはどんなに要求をしてきても応えないことから意識。
その上で、十分に運動させたり、愛犬が落ち着くような環境を作ってあげたり、齧っても良いおもちゃを与えてあげたり、また、愛犬に嗅がせても良いアロマを焚いたりするのも効果的です。
「分離不安」タイプの犬の対処法は適度な距離感を保つ
飼い主さんの後を常について歩いたり、飼い主さんが何かに夢中になるとあからさまに嫉妬したような態度を見せたりする「分離不安」タイプのワンちゃんの場合には、愛犬との適度な距離感を作るように意識してみましょう。
適度な距離感、と言っても、それまで後をついて歩くほど愛犬が飼い主さんにベッタリだとなかなか難しいかもしれないので、最初はトイレに行く間だけ、洗濯物を干す間だけ、ごみ捨てに行く間だけ、という短時間だけでも愛犬の付いてくる時間を減らすことが大切です。
また、こういった対処トレーニングを行っている間は、出来れば長時間の留守番は避けるように注意しましょう。
「分離不安」タイプのワンちゃんは、飼い主さんが見せる優しさがかえって状況を悪化させているため、「分離不満」タイプ同様、十分な散歩や遊び、齧って良いおもちゃ、犬が安心できる環境を作ってあげることに加え、特定の人だけでお世話をしないことや出掛ける30分前くらいはクールダウンタイムとして構わない事、帰ってきた後の態度はサラッとクールに対応することも忘れずに。
『分離不安症』になりやすい犬種とは?
基本的には性別、犬種関係なくどんな犬にも『分離不安症』になってしまう可能性はあります。
しかし、その中でも愛玩犬として可愛がられることの多い小型犬のトイ・プードルやミニチュア・ダックスフンドなどは分離不安になりやすい傾向にあります。
また、意外かもしれませんが、アメリカでの報告では、雑種の犬も『分離不安症』になるリスクが高いと報告されており、その理由としては、動物保護施設から引き取った雑種犬の、過去に経験した飼い主さんとの別れが原因しているようです。
他には、犬種とは関係ないものの、母犬が心配性・不安症な性格で、その母犬から生まれた子犬は、正常な愛着関係を確立できず、母犬と離された際に異常な不安を抱えて、後々『分離不安症』に繋がってしまうといった事も示唆されています。
まとめ
犬の『分離不安症』は、若ければ若いほど症状が悪化しやすいという報告もあるようですが、高齢犬でも発症する場合があります。
そのため、「もう成犬になったから大丈夫」とか、「老犬だから大丈夫」という理由で安心せず、いつどんな時においても大切な愛犬が『分離不安症』にならないように、適度な距離感、そして適切な態度や対応で接してあげることを心掛けてあげたいものですね。
<参考書籍>
犬のしつけきちんとブック 留守番上手になる編
<参考サイト>
平成27年度 犬猫幼齢個体を親兄弟から引き離す理想的な時期に関する動物行動学的調査業務
>https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/yourei/rep05.pdf
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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