『犬は虫歯にならない。』
犬を飼養している飼い主さんなら、一度は聞いたことのあるフレーズではないでしょうか?
しかしこれは、あくまでも虫歯に限っての事。
犬は虫歯になりにくい代わりに、歯周病にはなりやすいという特徴があるのです。
そこで今回は、犬にとって歯周病の危険性や歯磨きの慣らし方、口腔ケアする時に注意しておきたいことなどをご紹介します。
<目次>
犬の歯を健康に保つと寿命は15%増!
人の場合、歯周病になってしまうと糖尿病や認知症、狭心症、動脈硬化にまで影響を及ぼすだけではなく、寿命にも影響すると言われています。
それは犬も同じで、犬の場合には歯周病になると、糖尿病悪化要因になったり、歯周病菌の影響で、腎臓、肝臓、心臓などにも影響を及ぼしたりしてしまうと言われています。
犬の歯磨きは人の歯磨きと違って自分の意思で行えることではないので、中には犬の歯磨き自体に「挫折してしまう」という飼い主さんも多いかもしれませんが、犬の口腔内を歯磨きなどで定期的に清潔にすることで、現在犬の平均寿命が14歳前後と言われているのを、さらに15%程延ばせる可能性があります。
そのため、犬自身が歯磨きを苦手としていても、出来る限り犬のためにも歯の健康維持に努めることは心掛けてあげるのが大切です。
犬の歯周病の危険性とは?
犬の歯周病で最も恐ろしいのは、飼い主さんが犬の歯の異変を自覚した時には、人の歯周病とは比較にならないほど重篤な状態の場合が多いという点です。
犬の歯周病の発生率はとても高く、3歳以上の成犬の約80%以上がもうすでに歯周病予備軍として罹患していると言われています。
その理由として、人の中性~弱酸性の口腔環境と違って、基本的に弱アルカリ性で成り立っている犬の口腔環境は、虫歯菌の発生は抑制することが出来るものの、反対にアルカリ性で活動的になる歯周病菌にとっては、犬の口腔環境はとても居心地が良い場所という点にあります。
加えて犬の歯石化はとてもスピーディーで、犬が食後、歯磨きをしないまま歯に付着した歯垢を放置してしまうと約3日(人の場合25日間で歯石化)で歯垢は石灰化、歯石となって固まってしまうため、そういった状態に気付かずそのまま口腔内を放置していると、知らない内に歯周病になっていた!なんてことも…。
歯周病の悪化は上記でご紹介した糖尿病の悪化原因や他の臓器への影響だけではなく、根尖膿瘍(こんせんのうよう)と言われる上顎の第4前臼歯(一番大きな奥歯)辺りが膿んで腫れてしまう症状や歯槽膿漏などにもなってしまう恐れがあります。
小型犬では全般的に見て歯周病を発症しやすいとも言われているため、少なくとも2日に1回はデンタルケアをしてあげるのがおススメです。
歯磨き嫌いの愛犬に歯磨きを慣れてもらうには?
歯周病の危険性は分かっても、それでも歯磨きが苦手で嫌いなワンちゃんは多く居るものです。
そう言った場合、愛犬に歯磨きを慣らすにはどのようにすれば良いのか、続いては犬に歯磨きを慣れてもらうための方法を見ていきましょう。
指で犬の口元を触る
犬が口元を触られることに警戒するのであれば、そこから解いていく必要性があるので、まずは問題なく犬の口に触れることから始めましょう。
犬は基本的に口周りを触られることを嫌います。
そのため、いきなり歯ブラシで磨こうとすると益々歯ブラシ嫌いにさせてしまう恐れがあるので、デンタルジェルを指に付けて舐めさせながら、徐々に歯や歯茎の表面に慣れさせていきましょう。
歯磨きシート
犬が指で口元を触れられても平気になったら、市販されている歯磨きシートなどを使って歯や歯茎を触る練習をしましょう。
デンタルジェルだけでも殺菌成分などが含まれているため、菌の繁殖を抑える効果は期待できます。
しかし、歯石が既に出来てしまっているワンちゃんについては、デンタルジェルで触っているだけでは不十分なので、歯磨きシートで触ることに慣れたら、少しずつ磨く行動も加えていきましょう。
歯ブラシで磨く
犬が歯磨きシートで歯を磨かれることにも慣れたら、いよいよ歯ブラシを使って磨ける練習をします。歯と歯茎の境目の「歯周ポケット」に歯ブラシを斜めに当てて小刻みに磨いてあげてください。
力を入れる必要はなく、優しく「歯周ポケット」に空気を入れるようなイメージを持ちつつ磨いてあげると、菌の繁殖を防ぐことが出来ます。
歯ブラシ後にはデンタルガム
この方法は、筆者の3代目柴犬も実践している方法ですが、歯ブラシを無事に終えることが出来たら、ご褒美の一環として、一緒にデンタルガムを与えると、愛犬もそのご褒美目当てて歯ブラシに慣れてくれる可能性があります。
デンタルガムは歯ブラシでは落としきれなかった食ベカスなどを取り除いてくれるだけではなく、飼い主さん自身が手で与えることで、コミュニケーションとしての役割も果たしてくれるのでオススメです。
犬の口内は健康チェックに役立てられる!
日々の犬の口腔内チェックをすることは、愛犬の体の不調や病気の早期発見に繋がる可能性が十分にあります。
そのため、口を触られることや歯磨きに慣らすためにも常日頃から口腔内のチェックを習慣化することで、健康チェックに役立ててください。
【口内チェック項目】
・口臭がないか?
・歯茎の色はどうか?
・歯茎に湿り気はあるか?
・よだれの量はどうか?
上記のチェック項目は、口内トラブルだけに限ったことだけではなく、例えば歯茎の色が白っぽい場合には脱水症状の可能性が考えられますし、よだれがあまりにも多い場合には口腔内のトラブルだけではなく、脳神経異状による病気やジステンパーなどの感染症の可能性も考えられます。
口内環境の不調は、内臓系の不調に関係していることも少なくないため、もしも口腔トラブル以外に異変が見つかった場合には、一度動物病院で診てもらってください。
口腔ケアをする際の注意点
犬の歯磨きに慣らすには、迎えた後すぐにでも慣らすのが理想的ですが、迎えた愛犬がある程度年齢がいった保護犬とかだと、すでに歯石になっていて、ただ歯磨きをした程度では改善できない場合がありますよね。
そう言った時には、まず歯石をある程度取り除くところから開始しなければなりません。
しかしその歯石除去を行う際には、「スケーラー」という先端が釣り針状に尖った器具を使う必要があります。
この器具は通販などでも簡単に手に入れられるものですが、実際に飼い主さんご自身で使おうとするとなかなか難しいものでもあります。
また、歯石除去は全身麻酔を施した上で行われるのが一般的なので、麻酔を嫌がって歯石除去を躊躇ってしまう飼い主さんも多いかもしれません。
けれど、歯石は取らなければ歯周病のリスクを高めてしまうだけ、というのも事実なので、愛犬の年齢や体力などを考慮した上で、獣医さんと相談しながら、歯石除去をやってもらいましょう。
まとめ
犬に歯磨きを行うことは、なかなかジッとしていることが苦手な動物たちには難しいことだと思います。
しかし、筆者の親戚が飼養していたミックス犬は、日々の口腔ケアを怠ったために、大きな手術をして口腔内を改善したことがありました。
現在は、ペットであってもデンタルケアの観点が重要視されていて、デンタルトイやデンタルガム、水に入れて飲むだけで口臭ケアが出来るといった商品も数多く存在します。
これらはあくまでも補助的なアイテムとされておりますが、日々の習慣で歯磨きと一緒に上手に使ってあげることで、歯周病予防に役立ててあげてくださいね。
<参考書籍>
いぬ大全304
最新版 愛犬の病気百科 気になる初期症状から最新医療までがわかる
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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