涙やけ(流涙症)という病気をご存じでしょうか。
マルチーズやトイプードルのような小型犬によく見られる目の病気ですが、目の周りや顔まわりの毛が赤黒く変色してしまうため、見た目を気にされる飼い主さんも多い病気です。
もし愛犬が涙やけになってしまったら、どういう対応をすればよいのでしょうか。
今回は、「涙やけの原因」や「涙やけのケア」についてお話ししていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
犬の「涙やけ」ってどんな病気?
まず「涙やけ」がどうやって起きるのか仕組みを学んでいきましょう。
下の図は「涙が出る仕組み」を表したものです。
▼涙が出る仕組み
涙はオレンジ色の「主涙腺」という部分で作られ、目全体を潤していきます。
目全体を潤した涙は目頭の方に集められ、「涙管」を通って「鼻涙管」へと流れていきます。
しかし、何らかの原因で「涙管や鼻涙管が詰まる」「涙の量が多くなる」といったことが起きると涙の循環が上手くいかず、涙は目の外にこぼれてしまいます。
そのこぼれた涙に雑菌が付いたり、太陽光が当たると赤黒く変色してしまいます。
これが「涙やけ」です。
涙やけはただちに命に関わる病気というわけではありませんが、目の周りに雑菌が増えたことで「かゆみ」が起こり、引っ掻いて炎症が悪化してしまったり、アレルギーや緑内障といった病気が原因で涙やけを起こしている場合もあるので、注意が必要です。
犬の「涙やけ」を起こす原因は?
涙やけは何らかの原因で涙の循環が上手くいかず、目の外に涙があふれてしまう病気とお話ししましたね。
それでは、どういったことが原因で涙の循環がうまくいかなくなるのでしょうか。
原因を「6つ」ご紹介します。
▼涙やけを引き起こす原因
①先天的に鼻涙管が細い、変形している
➁涙点に傷や炎症、腫瘍ができている
➂逆さまつげなど目に刺激がある
④アレルギー
➄ぶどう膜炎や緑内障などの目の病気
⑥質の悪いドッグフードやオヤツ
①先天的に鼻涙管が細い、変形している
最初に作られた涙は「涙管」を通って「鼻涙管」へと流れていくとお話ししましたね。
この「鼻涙管」が生まれつき細かったり、変形してしまっていると涙が上手く流れないため、涙やけを引き起こしてしまいます。
また「涙管」に繋がる穴(涙点)が生まれつき開いていないこともあります。
そういった場合も、涙の循環が上手くいかず、涙やけを引き起こしてしまいます。
➁涙点に傷や炎症、腫瘍ができている
涙点に傷がある場合も、涙は外にこぼれやすくなります。
また、腫瘍や炎症などで涙点が塞がれてしまうと、涙やけを起こしやすくなります。
➂逆さまつげなど目に刺激がある
まつ毛が正常な方向に生えない「逆さまつ毛」やまぶたが内側に曲がりこんだ「眼瞼内反(がんけんないはん)」を患っていると、まぶたやまつ毛が眼球に接触して刺激になります。
刺激が多いと涙の量が増えるので、涙の排出が追いつかず涙やけを引き起こしてしまいます。
④アレルギー
ハウスダストや花粉、食べ物などに反応するアレルギーを持っていると、目に炎症がおきるので涙の量が増えます。
涙の排出が追いつかないと、涙が目の外に流れて涙やけを引き起こしてしまいます。
➄ぶどう膜炎や緑内障などの目の病気
眼球の内部を覆っている膜を総称してぶどう膜といい、この部分に起きる炎症を「ぶどう膜炎」といいます。
緑内障は目の中に水が溜まることで眼圧が上がり、痛みや視覚障害を引き起こす病気です。
痛みや炎症が起きると涙の量が増えるため、涙やけを引き起こすことがあります。
涙やけの裏にはこういった別の病気が隠れていることがあるので、注意が必要です。
⑥質の悪いドッグフードやオヤツ
ドッグフードやオヤツによっては添加物が多く使われていることがあります。
特にオイルコーティングされているものは酸化させないために、酸化防止剤などを多く使っている場合があります。
添加物が全て悪いわけではありませんが、フードやオヤツを変えたことで涙やけが改善するケースは少なくありません。
犬の「涙やけ」を治す方法は?
ひとくちに涙やけといっても、色々な原因で涙やけが起こっているということがお分かりいただけたと思います。
では、涙やけを治していくには、どんな方法があるのでしょうか。
▼涙やけを治す方法は?
・外科手術
・目の刺激を減らす
・鼻涙管の洗浄
・アレルギーの特定
・食事の見直し
涙やけの原因でお話ししたように涙管に繋がる穴(涙点)が開いていなかったり、鼻涙管が詰まっていることで涙やけが起きている場合は、外科手術で穴を開けたり鼻涙管を洗浄して詰まりをとる必要があります。
どちらも麻酔を伴う手術になり、専門知識や専用の器具か必要になるため、一般の動物病院ではなく眼科の専門病院などで手術を行うこともあります。
また、逆まつげなど目に刺激を与えているものが特定できた場合は、除去を行います。
アレルギーを特定したりドッグフードを見直すことで、涙やけが改善することもあります。
涙やけの原因は複数あり原因によって治療方法も異なるため、目の周りの汚れだけ消そうとするのではなく、原因を特定して治療していくことが大切です。
犬の「涙やけ」を予防するためには?
残念ながら「○○をすれば涙やけは予防できる」といった予防方法はありません。
ですが、愛犬が涙やけになった時に飼い主さんが行えることが「2つ」あります。
・涙やけを起こしている原因の特定
・こまめに涙を拭く
「涙やけ」を治す方法でもお話しした通り、涙やけを起こしている原因はひとつではありません。
例えば、先天的に鼻涙管が細くアレルギーを持っているのが原因で涙やけが起こっているのに、ドッグフードだけで改善しようとしても、なかなか上手くいかないでしょう。
複数の原因が重なって涙やけが出やすい状態になっていることもあるので、獣医師さんに相談しながら涙やけの原因を探っていきましょう。
また、外にあふれた涙をこまめに拭くことで、雑菌の繁殖を防ぐことができます。
汚れをそのままにしておくと、雑菌の温床となり皮膚炎を引き起こす事もありますし、涙で固まった目の周りの毛が目に刺激を与えることもあります。
目の周りを清潔にするためにも、蒸しタオルや濡らしたコットンでこまめに汚れを拭いてあげましょう(ゴシゴシ擦ると刺激になるので優しく拭き取りましょう)。
涙やけは非常に身近で目につきやすい病気なので、なんとか涙やけを消したいと悩んでいる方も多いと思います。
今回お話ししたように涙やけが起きている原因は様々なので、改善するには根本的な原因を探っていくことが大切です。
ときには大きな目の病気が隠れていることもあるので、気になることがあれば動物病院に相談するようにしましょう。
<参考書籍>
小動物獣医看護学 小動物看護の基本と実践ガイド 上巻・下巻
獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠 臨床栄養学
<画像元>
写真AC
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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