夏に近づくにつれ愛犬の病気で一番気になるものと言えば、フィラリア症ではないでしょうか。ただ、実際のところフィラリア症が一体どんな病気で、どんな症状があるのかご存知ですか?
今回は、あの渋谷駅の銅像でも有名な「忠犬ハチ公」も罹っていたと言われるフィラリアの媒介経路や症状、治療や対策についてご紹介します。
<目次>
日本では17種類の蚊が媒介するフィラリア
フィラリア症とは、主に蚊がフィラリアの子虫を媒介することによって感染する感染症の一種です。
イヌ科の動物を終宿主(寄生虫が最後に寄生する宿主)とする白く長いそうめん状をした線虫で、雄で体長10㎝~20㎝程。雌で体長25㎝~30㎝までになると言われています。
犬に最も感染しやすく、次いでオオカミや猫、そして稀に人なども感染する人畜共通感染症です。
日本においては約17種類の蚊がフィラリアを媒介していると言われており、有名どころでは、ヒトスジシマカやトウゴウヤブカ、アカイエカといった要するに「その辺に居る蚊」がフィラリアを媒介しています。
では続いては、これだけの種類の蚊はどのようにしてフィラリアを媒介し、どのようにして犬に感染させるのかを見ていきましょう。
蚊がフィラリアを媒介する経路とは?
蚊の吸血によって犬の体内に運ばれるフィラリアですが、そもそも蚊はどうやってフィラリアを媒介しているのかというと、すでにフィラリアに感染し、犬の体内で産出されたミクロフィラリア(子虫)を吸血して媒介します。
どういう事かと申しますと、ミクロフィラリアはフィラリアの幼虫で、主に中間宿主(成長過程に必要な宿主)である蚊の活動時期に合わせて1日のうち、午後4時から午前4時の時間帯に集中して皮膚に近い抹消血中に出現、犬の血液中を漂います。
そのうえで蚊に吸血される機会を伺い、もしも吸血されなかった場合には、ミクロフィラリアは犬の体内中では成長せず、2年ほどで死滅します。
しかし、吸血してきた蚊の体内に運良く媒介出来た際には、その後約2週間を要して感染可能なまでの幼虫へと成長します。
犬がフィラリア症に罹ってしまった時の症状
さて、感染可能なまでに成長したミクロフィラリアを持つ蚊に、もしも愛犬が刺されて感染してしまった場合、約3カ月間かけてミクロフィラリアは血液の流れに乗りながらフィラリア(成虫)に成長し、肺動脈に辿り着きます。そして、辿り着いた後は6~7カ月後に交尾、産卵します。
一般的にフィラリア症に感染してしまうと、5~6年は生存し続けるので、その間は下記のような症状が初期段階では見られる可能性があります。
✓咳き込む
✓食欲不振
✓元気消失
など
ただし、こういった初期症状には個体差があり、ほぼ症状が見られないまま更なる感染が起こってしまうと、下記のような状態になってしまい、最悪心不全を起こして死に至るので、注意が必要です。
✓貧血
✓運動直後の失神
✓呼吸困難
✓腹水
症状の度合いによって変わるフィラリア症の治療
フィラリアに感染し、肺動脈や心臓に成虫が寄生してしまった場合、成虫の駆除薬によって、フィラリア症の治療を行います。
▼使用する駆除薬(ヒ素を含む薬)
メラニソル
メラルソミン
チアセタルスアミド
しかし、ここで一つ気を付けて頂きたいのは、このような駆除薬はあくまでも重篤になる前であって、もしも成虫が多数寄生していた場合には、急激な薬物治療は、フィラリアの死体によって血管を塞いでしまう可能性があり、推奨はされていません。
腸に感染するほかの寄生虫と違って、肺動脈や心臓に寄生するフィラリアは、初期段階では駆除薬、重篤段階の場合では外科手術による摘出の可能性もあることから、症状の度合いによっては治療法が変わります。
また、一度フィラリア症に罹り、肺動脈や心臓が侵されてしまうと、臓器の回復は見込めなくなってしまうため、早期発見、早期治療に努めることが大切です。
フィラリア症に罹らないための予防法
フィラリア症を予防する一番の対策は、やはり5月から11月頃までの予防薬による予防でしょう。
これらの予防薬の投与は、離乳期を過ぎた生後2カか月頃から可能です。
昔と違って、現在の予防薬は錠剤タイプだけではなく、スポットタイプ、チュアブル(おやつ)タイプ、注射といった様々な方法があり、愛犬の好みに合わせて投薬させることが可能です。
また、フィラリア予防薬の多くはフィラリアだけではなく、ダニやノミ、回虫などといった腸内にも寄生する寄生虫にも有効な薬が多いので、シーズン中は必ず予防するように心掛けてあげましょう。
まとめ
フィラリア症は、現在に至っては室内飼育が当たり前となり、多くの飼い主さんがしっかりと予防されているため、家庭で飼養されている愛犬ではあまり見られなくなったものかもしれません。
しかし、保護犬や適切な予防がされてない犬の場合には、今でも十分気を付けておきたい病気の一つです。
フィラリア症は、蚊が出現し出す夏のシーズンからなんの予防もしない状態で夏を終えると40%が感染している可能性があると言われており、近年の温暖化の影響では冬場の季節でも蚊の発生は珍しくないため、忘れずに予防してあげてください。
<参考書籍>
犬の医学
犬の生態
最新版 愛犬の病気百科 気になる初期症状から最新医療までがわかる
<参考サイト>
人と動物の共通感染症に関するガイドライン|平成19年3月 環境省
>https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/infection/guideline.pdf
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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