「犬の関節炎」と聞くと、どんなイメージを持っているでしょうか。
実は、「隠れ関節炎に悩んでいる犬は4割以上いる」というデータがあります。
「うちの子はまだまだ元気だから」「しっかり歩いているから」と思っていると、実は愛犬は関節炎に悩んでいたということもあるのです。
愛犬のサインを見落とさないためにも、今回は「関節炎のサイン」や「関節炎予防のポイント」をお話ししていきますので、ぜひ健康管理の参考にしてみてくださいね。
5割の飼い主さんが「愛犬の関節炎に気づかなかった」と回答
動物用医薬品の研究などを行っているゾエティスジャパン㈱の報告によると、関節の病気以外で大学病院を訪れた10歳以上の犬(524頭)のうち、44.3%の犬が「実は関節炎を患っていた」ということがわかりました。
▼病院を訪れた犬(10歳以上、524頭)が関節炎だった割合
半数近くの犬が関節炎を患っていたと考えると、関節炎に悩んでいる犬の数は非常に多いという事がわかります。
そして、その飼い主さんに聞き取りをしたところ、愛犬の関節炎に気がついていなかった方はなんと50%にものぼりました。
「そんなに多いの!?」と思ったかもしれませんが、本能的に痛みを隠す子もいますし、「歳だから行動が変わったのかな?」と判断がつかない場合もあります。
とはいえ、「愛犬が痛みに耐えて生活していた」「気が付くのが遅れてしまった」というのは、飼い主さんにとって一番心が苦しくなる状況ですね。
愛犬の痛みにいち早く気づいてあげるために、見落としたくない「関節炎のサイン」を次章で一緒に覚えていきましょう。
見落としたくない「関節炎のサイン」は?
では、関節炎のサインはいったいどんなものがあるのでしょうか。
関節炎のサインは「犬の行動」から気がつくことができます。
「動物のいたみ研究会」で紹介されている痛みの評価基準を10個ご紹介するので、愛犬に当てはまるものをチェックしてみましょう。
▼こんな「サイン」が出たら「痛み」があるかもしれません!
散歩に行きたがらない(行っても走ったりせず、ゆっくり歩く)
階段や段差の上り下りを嫌がる、躊躇する
家の中や外であまり動かなくなった
ソファーやベットなど高さがある所を上り下りしなくなった
立ちあがるときの動作が辛そう、億劫そうに見える
元気がないように見える
おもちゃや他の犬と遊びたがらなくなった
しっぽを下げていることが多くなった
歩くときに足を引きずったり、ケンケン歩きをする
寝ている時間が長くなった、または短くなった
参照元:https://dourinken.com/wp-content/uploads/2019/05/itami_check2014.pdf
関節炎になると、関節のこわばりや違和感、痛みといった症状がでてきます。
そのため、「階段や段差の上り下りを嫌がる」「歩き方に違和感がある」「動くのを億劫そうにする」といった行動が現れるようになります。
その他にも、「関節に触ると嫌がる」「怒りっぽい性格になった(痛みで気性が変化している)」「関節付近を噛んだり舐めたりする」といった行動がみられることもあります。
今まで取っていた行動を取らなくなると、つい「どうしたの?」と行動を促してしまったり、「年を取ったからかも」と思いがちですが、その行動の裏には「痛み」が隠れているかもしれないという事を忘れないにしましょう。
関節炎ってどんな病気なの?
今までの内容で、「隠れ関節炎の犬が多いこと」「痛みのサインに早めに気づく大切さ」がお分かり頂けたと思います。
では次に、関節炎がどんな病気なのか、何が原因で起こるのか、について学んでいきましょう。
下の図は「犬の関節」を表した模式図です。
左の図が「正常な状態」で右が「関節炎の状態」です。
図を見ると、「関節軟骨」というピンク色の部分がありますね。
この「関節軟骨」が骨の端を覆うことで、骨同士がぶつかっても傷つくことなく、滑らかに手足を曲げ伸ばしすることができます。
しかし、この「関節軟骨」は「加齢」や「肥満」、「膝蓋骨脱臼(パテラ)」や「前十字靭帯断裂」という膝の病気などによって、すり減ってしまいます。
「関節軟骨」がすり減ると、骨同士がゴリゴリぶつかりやすくなるので、棘状の骨が形成されて刺激になったり、炎症や痛みが出てきます(右の図の状態になります)。
これが「関節炎」です。
状態がひどいと外科手術が必要になることもあるので、できるだけ早く発見することが大事です。
関節炎の原因にもなる「膝蓋骨脱臼(パテラ)」と「前十字靭帯断裂」について知りたい方は、下の記事で詳しく解説しているので、よろしければ合わせてお読みください。
▼こちらの記事もオススメです!
関節炎予防のために飼い主さんができること
では、関節炎を予防するために私たち飼い主ができることは何でしょうか。
ポイントは「5つ」あります。
▼関節炎予防のために飼い主さんができること
①体重管理
➁早めに「痛み」に気づいてあげる
➂階段や段差はできるだけ避ける
④カーペットやマットを敷く
➄フードやサプリメントを取り入れる
①体重管理
先ほど関節軟骨がすり減る原因のひとつに「肥満」があるとお話ししましたね。
体重が増えると軟骨がすり減りやすくなるだけではなく、膝全体に過剰な負荷をかけてしまいます。
関節炎のリスクを高くするので、愛犬の体重管理は注意するようにしましょう。
➁早めに「痛み」に気づいてあげる
愛犬の仕草が変わると最初は「あれ?」と違和感を感じても、毎日繰り返されると日常になり、疑問を感じにくくなります。
痛みを抱えながらの生活は犬にとって負担ですし、関節炎が悪化すると歩けなくなることもあります。
早めに愛犬の痛みに気づいてあげるようにしましょう。
➂階段や段差はできるだけ避ける
お家や町中にある階段の多くは、人に合わせて作られているため、幅や段差が犬の体にあっていません。
犬が上り下りをしようとすると、膝や腰に負担をかける無理な姿勢をとることになるので、段差や階段はできる限り上り下りさせないようにしましょう。
④カーペットやマットを敷く
室内で飼っている場合、フローリングの滑りも関節に負荷をかける原因になります。
高齢になってからではなく、若いうちから犬が過ごす場所や移動する場所にはカーペットやマットを敷いて、膝に負担が少ない住環境を作ってあげましょう。
➄フードやサプリメントを取り入れる
炎症を抑える成分が入ったサプリメントや機能性ドッグフードを取り入れるのもオススメです。
愛犬の体質に合わない場合もあるので、一度獣医師さんに相談して購入すると安心ですね。
いかがでしたか?
関節炎は犬にとって非常に身近な病気ですが、痛みのサインを見落として関節炎が悪化してしまうこともあります。
そういったことを避けるためにも、今回ご紹介した見落としたくない「痛みのサイン」を覚えて愛犬の健康管理に役立ててくださいね。
<参考URL>
犬のいたみ.com
>https://www.xn--n8juczbzds175b.com/kansetsusho/index.aspx
動物のいたみ研究会
>https://dourinken.com/forum/itamiken/
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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