動物から人へ移る感染症があることを知っていますか?人獣共通感染症(ズーノーシス)と言います。
感染すると無症状のものから、重症化するものまでさまざまです。
愛犬との生活をより安全で健康的なものにするために、犬から人に移る人獣共通感染症(ズーノーシス)について詳しく理解しておきましょう。
<目次>
人獣共通感染症(ズーノーシス)とは?
人獣共通感染症(ズーノーシス)とは、動物の体内に潜む細菌や寄生虫が、人に移り病気を発症する感染症です。日本の厚生労働省では人と健康問題の視点から「動物由来感染症」という言葉を使っています。
その病原体はさまざまなものがあり、WHO(世界保健機関)で確認されている人獣共通感染症の数は約200種あります。
日本で人獣共通感染症が問題となってきた背景には、ペットブームによる家庭での犬猫の飼育の増加や、屋内飼育の増加、高齢者などの免疫力の低い人たちの人口増加などがあります。
さらに野生動物などのエキゾチックアニマルの飼育が行われていることもあげられます。(※エキゾチックアニマルとは犬猫以外の動物で主にハムスター、ウサギ、ハリネズミや鳥類、爬虫類、魚類などのこと。)
このように、ペットと動物の距離関係がとても密になってきていることから、日常生活において人獣共通感染症を飼い主がよく理解し、注意を払う必要があります。
人獣共通感染症(ズーノーシス)にはどんな病気があるの?
人獣共通感染症には病原体により重症化する病気から、症状が出ず、気が付かずに終わる病気までさまざまなものがあります。
世界で発生している人獣共通感染症の主な種類は以下の表の通りです。
出典元:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000906241.pdf
動物群別にみた人獣共通感染症の人に対する危険性は以下の通りです。
出典元:環境省 人と動物の共通感染症に関するガイドライン https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/infection/guideline.pd
多くの方が飼っている犬や猫からも人獣共通感染症が確認されていることがわかります。
世界では新たな感染症が次から次へと発見されており、その多くが人獣共通感染症です。
日本では例外的に、確認されている人獣共通感染症は数十種類と少なく、すべてが存在するわけではありません。しかし、世界にはとても多くの人獣共通感染症が多く存在していることから、海外に渡航の際は、むやみに動物に近づき触れてはいけません。
犬から人に感染する人獣共通感染症(ズーノーシス)とは?
犬から人に移る主な人獣共通感染症は以下のようなものがあります。
【犬から人へ移る主な人獣共通感染症】
・パスツレラ症
・皮膚糸状菌症
・犬糸状虫症
・エキノコックス症
・カプノサイトファーガ感染症
・コリネバクテリウム・ウルセランス感染症
・ブルセラ症
・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
・狂犬病
出典元:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000906241.pdf
ひとつひとつ見ていきましょう。
パスツレラ症
犬や猫の気道や口の中に見られる細菌で、咬まれることで感染する。飛沫を介した経気道感染もあります。
咬傷部分の痛み、腫れ、その後の皮下の炎症がひどく広い範囲に蜂窩織炎になる場合があります。
まれに敗血症を引き起こすことがあります。早いと1時間以内に発症し、風邪や肺炎のような症状を引き起こします。
皮膚糸状菌症
犬や猫の皮膚や爪などに真菌(カビ)が感染することによって皮膚炎を起こす真菌症のことです。人にも感染します。
症状は皮膚が赤くなり脱毛や痒みが生じます。その後ニキビのような白いブツブツができ、皮膚が丸く剥がれていきます。
犬糸状虫症(フィラリア症)
犬糸状虫症と言うと聞きなれないかもしれませんが、フィラリア症のことです。
蚊の媒介によって感染し、犬の体内に侵入した幼虫が心臓や血管内で数か月をかけて成虫になり、血液の循環障害を起こす病気です。
人間もごくまれに感染する場合がありますが、犬ほど重症化しません。
エキノコックス症
日本では北海道のキタキツネが主な感染源ですが、その糞の中にエキノコックスの虫卵が排出されるため、それを食べたり接触したりする野ネズミや放し飼いの犬も感染の原因となります。
エキノコックスの虫卵が口から腸内に入り寄生し、5年~10年をかけて発育・成長しますが、この間は無症状のことが多いです。
その後、寄生虫が大きくなってくると肝臓内の血管や胆管が塞がれ重い肝機能障害を起こし、放置すると90%死に至ります。
カプノサイトファーガ感染症
犬や猫の口の中に普通にいる細菌が、咬まれたり、引っ掻かれたりすることで感染します。
傷口をなめられて感染することもあります。
主な症状は、発熱、倦怠感、頭痛、吐き気、腹痛など。重症化すると進行が早く、敗血症や髄膜炎を引き起こし、多臓器不全、敗血症ショック、播種性血管内凝固症候群などに進行し死に至る場合があります。
コリネバクテリウム・ ウルセランス感染症
この菌を保有している犬や猫との接触や飛沫により感染します。
症状は風邪の諸症状のようなものから始まり、その後、のどの痛み、咳が出てジフテリアに似た症状が現れます。
重症化すると死に至る怖い感染症です。
ブルセラ症
感染している犬は細菌により生殖器官に炎症を起こし、メスは流産、オスは睾丸炎を引き起こします。
これらとの接触や飛沫の吸入による感染があります。
一般的な症状は軽く風邪のようなもので気が付かない場合も多いです。濃厚感染すると重症化し、最悪の場合は心内膜炎を起こして死に至ります。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
主に感染しているマダニに咬まれることにより発症します。
発症した犬や猫の体液からの感染も確認されています。
主な初期症状は、発熱、倦怠感、消化器症状、神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血などがあります。日本国内の年間の患者数は約100人と推測されています。
狂犬病
狂犬病ウィルスを持っている犬に咬まれることで感染します。他の動物に咬まれることでも発症する場合があります。
発症すると100%死に至る恐ろしい感染症です。
初期症状は、発熱、頭痛、不快感などが現れ、咬傷部分の痛みが出ます。
狂犬病ウィルスは傷口から脳の中枢神経を侵し、麻痺や興奮、幻覚、動揺、怖水症などの症状が現れると数日後に死に至ります。
現在は日本国内での発症はほとんど無いですが、海外へ渡航する場合や、野生動物と関わる場合は事前のワクチン接種の予防が必要です。海外でむやみに動物に近寄ってはいけません。
人獣共通感染症(ズーノーシス)の予防法とは?
人獣共通感染症(ズーノーシス)を予防するには、日常的に以下のようなことに気をつけることが大切です。
【人獣共通感染症の予防方法】
・過剰な動物との触れ合いに注意する。
・野生動物を家庭で飼育することを避ける。
・野生動物に触らないようにする。
・愛犬も飼い主も蚊に刺されないようにする
・動物に触ったら必ず手洗いをする。
・愛犬に生肉を与えない。
・愛犬と同じ食器を使わない。
・愛犬の身の回りを清潔にする。
・愛犬の糞尿は速やかに始末する。
・室内での鳥の飼育は良く換気を行う。
・砂場や公園で遊んだら必ず手洗いをする。
・愛犬の毎年の予防接種は必ず受ける。
このほかに、家族の中に、免疫力の低い高齢者や乳幼児がいて、体調が悪くなった場合は病院に早めに受診することを心がけましょう。
人獣共通感染症に感染しても初期症状は軽い場合が多く、見過ごしているうちに重症化してしまうことがあるからです。
また、愛犬の健康状態にも常に気を配り、病気の早期発見をすることで、感染症が飼い主さんに移るリスクを遠ざけます。
まとめ
いかがでしたか?愛犬との生活には思いもよらない感染症のリスクもあることがお分かりいただけたでしょうか?
動物から人への病原体の感染リスクは距離が近ければ近いほど高くなるので、愛犬と節度をもって接触することが大切です。
飼い主さんが疲れやすくなっている時は免疫が下がり、病気が移りやすくなっているので注意が必要です。
また、これから犬やその他ペットを飼いたい方で家族に高齢者や乳幼児の低免疫力者がいる場合、人獣共通感染症のリスクも考えた上でメリット、デメリットの両方を考え決めることをおすすめします。
<参考URL>
日本臨床微生物学会 2014 人獣共通感染症(ズーノーシス) ―犬猫における細菌性ズーノーシス
>https://www.jscm.org/journal/full/02402/024020093.pdf
<参考URL>
厚生労働省 動物由来感染症
>https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou18/index.html
厚生労働省 ズーノーシス動物由来感染症ハンドブック2022
>https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000906241.pdf
フラワーアレンジメント講師
2人の息子の母
実家でパグの出産、育児を経験し、
現在はトイプードルの男の子と暮らしています。
みなさまの愛犬にお役に立てる情報を発信していきたいです。
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